被告側弁護にて原告からの請求金額約5000万円余を全額排斥した事例
原告の請求金額を排斥する訴訟上の和解が成立
約5000万円
事案の概要
ご依頼者は、原告会社に外壁塗装工事を依頼したところ、工事内容等に不備があったため、Googleクチコミに当該事実と工事に対する意見を投稿したところ、原告から名誉毀損であるとして、その損害額5000万円以上の賠償請求を提訴された。
※プライバシー保護のため、内容の一部を加工しています。
対応と結果
ご依頼者が、Googleクチコミをした要因は、工事会社(原告)が行う工事内容の施工不良でした。
そこで、まずは投稿の内容がどの程度真実であるのかを確認するために、ご依頼者から工事会社と接点を持ち始めたきっかけから、時系列で、工事の内容とその間に担当者とどのようなやり取りをし、ご依頼者からの要望に工事会社はどれ程対応したのか、などについて聴取しました。
聴取した内容を下に、訴訟では原告(工事会社)が主張する内容が、事実ではなく、ご依頼者に対する根拠のない主張であったことなどを反論しました。
次に、問題のGoogleクチコミですが、ご依頼者による投稿は違法性阻却事由があるため名誉毀損に当たらず、又は名誉毀損に当たるとしても原告会社の業務内容に照らして受忍限度の範囲内であるとして、ご依頼者に不法行為責任(民法709条)が認められないことを反論しました。
ある程度期日を重ね裁判官の心証が形成されてきた段階で、原告が請求を全て放棄する内容であれば和解に応じるということでしたので、原告側の約5000万円の請求額を全て放棄させた上で訴訟上の和解成立となりました。
弁護士から一言
本件は、建築トラブルを端に、Googleクチコミにおける投稿内容が名誉毀損であるとして、損害賠償を請求された事案でした。
口コミサイトやSNSでの投稿により、公然と相手方の社会的評価を低下させる危険性を生じさせたとしても、違法性阻却事由(名誉毀損を否定する事情)があれば不法行為としての名誉毀損(民事)は成立しません。
違法性阻却事由は、①公共の利害に関する事実に係ること(公共性)、②専ら公益を図る目的に出たこと(公益性)、③-1意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があること(真実性)、③-2その事実が真実であると信ずるについて相当の理由があること(真実相当性)、④表現内容が人身攻撃に及ぶなど意見論評としての域を逸脱していないこと、の全てを満たす場合にのみ、限定的に認められます。
対象となる投稿が違法性阻却事由にあてはまるかどうかは、全事情を踏まえた個別判断になります。
本件では、特に口コミをした前提となる事実関係で相手の主張と事実にかなりの乖離があり、証拠に基づいて相当程度細かく反論しました。こうした投稿の背景を知ることで、違法性阻却事由の主張にも繋ぐことができます。
もっとも、相手方に対してマイナスの投稿をしてしまった場合には、相手方が悪質な者で訴訟を悪用して圧力を掛けて来る可能性もあり、本件のように損害賠償請求をされるリスクがあることは注意が必要です。
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