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コラム

破産手続の流れ

以下では、東京地方裁判所中目黒庁舎(通称ビジネス・コート、破産手続のほか会社法関連の紛争や知的財産権法関連の紛争も扱われます。)で破産申立てをする場合を前提に、ご説明します。ちなみに、同じく目黒区内に東京地方裁判所民事執行センターがありますが、ここは文字通り、執行関係の事件を扱う部署になりますので、混同しないよう注意してください。

 

個人破産

 

自己破産の種類

自己破産の手続には、同時廃止事件管財事件少額管財事件の3種類があります。

 

同時廃止事件

同時廃止とは、破産手続の開始決定がされたのと同時に、破産手続が終了する手続です。管財事件と比べて、手続が非常に簡易であり、費用面も軽減できます。申立てから手続終了までおおよそ3か月程度で終わります。

ただし、同時廃止事件であるためには、①処分するほどの財産がない、②破産手続に関連する費用を支払えるだけの経済的余裕がない、③債務の原因がギャンブルや競馬などによるものでないこと、が必要で、最終的な判断は裁判所が行います。

通常、返済できないほど債務が多く、保有する財産もない相談者が多いので、多くの場合は同時廃止事件になります。しかし、その債務の原因がギャンブルなどであれば管財事件となる可能性は高いです。

 

管財事件

管財とは、処分する財産が多いとき、言い換えれば換価して債権者に配当できるだけの財産を相談者が保有しているときの手続です。管財事件になると、後ほど流れに沿って説明しますが、裁判所から破産管財人が選任されて、申立人の財産や債務などについて調査、管理、処分などの手続が行われます。そのため、申立てから手続が終了するまでにはおおよそ6か月から1年はかかります。ケースによっては1年以上かかる場合もあります。

管財事件の手続を採るケースとしては、多くはギャンブルなどによる債務の発生や企業の代表者などです。こちらも最終的には裁判所の判断になりますが、その基準として、東京地方裁判所の場合、後述の管財費用最低20万円が支払えるかという基準があります。つまり、申立時に現金33万円以上の保有していること20万円以上の価値がある財産(自動車や持ち家など)を保有していれば、管財事件となるケースが多いです。この他にも20万円以上の財産を保有しているか明らかでなく、破産管財人による調査が必要な場合や申立人が法人代表者である場合、現在又は過去に個人事業主として事業を営んでいた場合には、基本的に管財事件になると思います。

 

少額管財事件

少額管財事件とは、管財事件よりも費用が安くできる手続ですが、債権者が極めて多数の場合や複雑な事件概要などの場合は利用できません。他にも東京地方裁判所では運用されていますが、大都市圏以外の裁判所では運用していないところもあります。

 

同時廃止事件

ここからは同時廃止事件と管財事件の流れなどを別々に見ていきます。まずは同時廃止事件から。

同時廃止事件の大きな流れとしては、相談・受任→申立準備→申立て→裁判官面接→破産手続開始決定→免責審尋期日→免責許可決定、となります。

 

1 相談時から破産手続選択まで

(1) 相談時~聴取事項はさまざま

債務整理の相談者の多くは、債権者からの督促ハガキなどを持っています。相談時にはこうした受任通知を送る先、つまり債権者となるような情報が得られるものは持参してもらいます

また督促ハガキが届いていない債権者や現に返済している債権者がいたり、その他にも例えば「督促状は届いていないが、昔モビットから借りたままで一度も返済していない。」という相談者もいますので、相談者の記憶を頼りに大まかな債権者と債務額を聴取します。ちなみに、借入当初に登録した住所と現住所が異なる場合、基本的に金融機関や消費者金融は、名前と登録時の住所、生年月日で特定しますので、その辺りの情報も住民票または聴取で入手します。

さらに現在の収入についても聴取し、債務額とのバランスを考慮して、この時点である程度、手続の選択肢は絞られてくると思います。破産手続が濃厚で、債権者の中に、税金・年金などの租税公課や相談者が扶養義務者として負担する養育費婚姻費用分担義務に係る請求権などがあった場合、たとえ破産の手続を採り、最終的に免責許可となっても免責されず、支払いを免れることができないことを説明しておく必要があります。

また、これ以上返済させないため、あるいはカードを利用させないため、相談者(依頼者)が保有しているクレジットカードを預かります。クレジットカード会社へ受任通知を送付すると、利用停止措置がとられるため、公共料金の引き落としなどができなくなります。そのため、そのような依頼者には、支払方法を変えてもらったり、引落口座の残高をゼロにするなどの対応をしてもらう必要があります。

特に受任後は、金銭の貸し借りは行わないよう釘を刺します。

参考情報として、どこから借金をしたか、いくら借金が残っているかについては、信用情報センターに情報開示を求めることで調べることができます。信用情報センターにはCICJICC全国銀行協会の3つがあります。各信用情報センターには、借り入れ状況や返済状況などの情報が登録されていますので、借入先の債権者名や残額を知ることができます。情報開示の請求は代理人でも行うことができます。そのため、委任状は白紙も含め2,3枚書いてもらっておいた方がよいかもしれません。

 

(2) 受任通知の発送と債務総額の確定

相談者が持参した資料や依頼者からの事情を聴取する中で判明した債権者債権者に受任通知を送付します。受任通知が債権者に到達した時点で、債権者から依頼者(債務者)への督促はなくなります(郵便事情により入れ違いが起きる可能性はあります。)。

また依頼者には、今後債権者から連絡がきたら「弁護士に委任した」とか言ってもらうのもいいかもしれません。後日、依頼者から新たな債権者の情報を得たら、速やかに受任通知を送付します

全ての債権者宛に受任通知を送付したら、順次債権者から郵便またはFAXで債権額(または債務額)の回答がきて、最終的な債務総額が確定します

 

(3) 同時廃止のメリットとデメリット

債務額が確定したら、最終的な方針を決めますが、同時廃止となる場合のメリットとデメリットを依頼者に説明します。

メリット

まず一つは費用が安く済みます。同時廃止事件も管財事件も裁判所に納める予納金は発生しますが、同時廃止事件の場合、その金額は印紙代1500円郵便切手代4400円官報公告費用1万1859円(中目黒庁舎で現金納付する場合は1万2000円)になります。

次に、手続が終了するまでの期間が短いです。同時廃止事件の場合、申立てから免責許可決定まで3か月から6か月かかります。したがいまして、依頼されてからも含めると、1年以内に終わるケースがほとんどです。実際、依頼から3か月で免責許可決定を得たケースもあります。

最後に、管財事件にも共通することですが、公租公課や養育費などを除き、借金の支払義務がなくなります。支払義務がなくなるということは、債権者から訴訟を起こされたり、財産を差し押さえられる心配はなくなります。

 

デメリット

東京地裁の振り分け基準からして、管財事件が相当とされた場合は管財事件となります。

管財事件では、債権者に対する配当が行われます。その元手となるのが、破産者の資産です。

 

その他家族や職場への影響などについては、後述の「よくある質問」をご参照ください。

 

2 申立準備~申立代理人の役割

(1) 申立書の作成と疎明資料の収集

裁判所所定の書式に基づき、依頼者において該当するところに、必要事項を記入していきます。最も手っ取り早いのは、委任契約締結の相談時に、聴取しながら申立書や資産目録、報告書又は陳述書のドラフトを作成し、住民票や預貯金通帳の写し、家計簿の作成などの疎明資料の手配を依頼者にお願いします。動きが悪そうな依頼者であれば、期限を設けるのも効果的な場合があります。委任契約を締結してからの2か月間(東京地裁は2か月分の家計簿や給与明細などを提出する必要がありますし、住民票も発行から3か月以内であるため。)でどれだけ申立てができる段階までもっていけるかがポイントです。

 

(2) 申立費用と予納金(債務者申立ての場合)

東京地方裁判所での申立ての場合、令和5年3月末時点で、申立印紙代は1500円郵券代は4400円(210円×8枚、140円×1枚、84円×29枚、10円×12枚、2円×10枚、1円×4枚)となります。

同時廃止事件の場合、印紙代・郵券代といった申立費用とは別に裁判所に納付しなければならない費用(予納金)として官報公告費用があります。

 

官報公告費用

官報公告費用とは、国の機関紙である官報に破産手続開始しましたと公告するための費用です。

個人の自己破産申立(同時廃止)事件における官報公告費用は1万1859円です。

ただし、申立てを東京地裁中目黒庁舎(受付は1階)に持参提出する場合、申立直後に2階で納付することができます(納付は霞が関本庁舎でも可)。その場合の官報公告費用は1万2000円となります。官報公告費用の納付は、原則破産手続開始決定前に行います。そのため、官報公告費用については、申立前から用意しておく必要があります

郵送で申立てをした場合、開始決定正本を裁判所から郵送で受け取りますが、保管金提出書と振込依頼書も同封されますので、受け取り後速やかに納付します。

 

(3) 申立てに必要な書類(東京地方裁判所の場合)

裁判所所定の申立書とともに、以下のものを添付して提出します。

① 破産・免責申立書(裁判所所定)

② 住民票

→マイナンバー以外全て記載があるもので、発行から3か月以内です。

③ 委任状

→委任状記載の住所と住民票上の住所が一致しているか、一致していなければその理由を報告書や上申書などで補完します。

④ 債権者一覧表(裁判所所定)

→債権調査に対する債権者からの回答に基づき、債権者名、住所、借入時期、借入残額、返済状況などを記載します。特に債権者の氏名・住所は、申立後に裁判所から決定書を送付しますので、届かないことがないように注意します。もし届かなかった場合は、裁判所から「宛所に尋ねなしとして戻ってきましたので、再調査をお願いします。」と連絡を受けます。

⑤ 資産目録(裁判所所定)

→依頼者の財産に係る目録です。依頼者が申立時点でどれだけの資産を有するのかを裁判所に報告しますので、嘘偽りなく記載することが求められます。

⑥ 報告書又は陳述書(裁判所所定)

→過去10年間の職歴(目安)、破産に至った事情、免責不許可事由などについてもここで記入することになります。ただ、そこまで厳格なものではありませんので、多少曖昧でも問題はありませんが、必要であれば上申書や報告書などで適宜補充します。

⑦ 家計の状況一覧(裁判所所定)

→いわゆる家計簿です。原則申立前2か月分の家計簿を依頼者に作成してもらいますが、繰越金含めその月の収支の数字が一致している必要があります。

⑧ 疎明資料

ア すべての預貯金通帳コピー(過去2年分と表紙、裏表紙の各写し)

※通帳紛失の場合は通帳再発行まとめ記帳の場合はその期間の取引履歴(銀行窓口で依頼者が申請。多くの銀行は代理人による申請は不可。)

イ 生活保護、年金、児童手当など各受給証明書の写し

ウ 給与明細書の写し(直近2か月分)又は源泉徴収票の写し(直近2年分)又は確定申告書の控えの写し(直近2年分)

エ 課税証明書または非課税証明書の写し

※源泉徴収票がない場合、確定申告書の控えを紛失した場合、修正申告をした場合、給与所得者であっても副収入がある場合には必要です。

オ 退職金計算書原本

カ 貸付金や売掛金のあることが分かる資料

キ 積立金に関する資料

※給与明細書に財形貯蓄の記載がある場合もあり。

ク 生命保険等(傷害保険、火災保険、自動車保険など)に加入している場合、保険証券写しや解約返戻金の写し ※約款に記載がある場合もあり

ケ 有価証券・ゴルフ会員権証券の写し

コ 自動車・バイクを保有している場合、検査証又は登録事項証明書の写し、もしくは価格査定書の写し(価格がつかない場合は不要)

サ 不動産(土地、建物、マンション等)を保有している場合、不動産登記簿謄本原本(申立前3か月以内。※処分済も含む)又は不動産(固定資産)評価証明書原本又は住宅ローン残高証明書原本

シ 事業をしている場合、事業に関する陳述書

ス 確定申告書(又は税金申告書)の控えの写し(直近2期分)

 

→一般的に、資産目録や報告書又は陳述書にリンクした資料を提出しますので、事案によってはこれとは別に更に資料が必要なことがあります

 

⑨ 宛名ラベル

宛名ラベルは、申立書類を持参する際に、裁判所所定の封筒にその場で貼る作業があります。郵送の場合は、ラベル自体を同封すれば問題ありません。

必要なラベル数は、各債権者宛×1申立代理人宛×2です。封筒は中目黒本庁舎のほか、東京地裁の民事事件受付係に備え付けてありますので、申立前に入手して貼っておいても良いのですが、債権者数が100名以上の場合は封筒ではなく、ラベルのみを準備し、その後の処理は担当係と相談します。

 

3 申立て

申立てに必要な書類が揃い、各費用の準備が整ったら、いよいよ東京地方裁判所中目黒庁舎(ビジネス・コート)で破産申立てを行います。申立ては持参でも郵送でも可能です。受付で申立書類を提出すると、形式的な審査が行われます(その間待機します。)。形式的に不備があれば、例えば、マイナンバーの記載がある住民票を提出してしまったとか、委任状に不備があったとかの場合は、基本的に追完で問題ないと思います。そのため、裁判所からの指摘に備えて、持参の場合は、控えも持参しておいた方がよいです。裁判所からは依頼者のことを申立人と呼ばれます。

形式審査を終えると、事件番号が付され、官報公告費用の納付や裁判官(即日)面接の案内がされます。

 

官報公告費用の納付

申立書が受理され、事件番号が付されたら、担当係から官報公告費用の納付方法について電子納付現金納付銀行振込か聞かれ、納付方法に応じた保管金提出書を受け取ります。どの方法であっても共通して、保管金提出書には、官報公告費用の残金の返金先口座を記す箇所がありますので、金融機関名、口座番号、預金種別、口座名義人の情報を忘れないようにしましょう。ここで注意が必要なのは、口座名義人は保管金提出者名義の口座でなければならず、弁護士法人名では提出できません。

さて、納付方法を銀行振込にした場合、赤で印字された3枚複写式の振込依頼書を受け取り、必要事項を記入して、金融機関等で振り込みます(振込手数料が発生します。)。電子納付の場合は、事前に利用者登録をしなければなりません。登録すると登録コードが発行されますので、担当係から聞かれます。そうすると、保管金提出書の下欄に収納機関番号や納付番号などが発行されますので、Pay-easy(ペイジー)対応のATMやインターネットバンキングで納付します。電子納付の場合は保管金提出書を提出する必要はありません。現金納付(1万9000円)の場合については、申立てを東京地裁中目黒庁舎(受付は1階)に持参提出する場合、申立直後に2階で納付することができます(納付は霞が関本庁舎でも可)。

郵送で申立てをした場合、開始決定正本を裁判所から郵送で受け取りますが、保管金提出書と振込依頼書も同封されますので、受け取り後速やかに納付します。

 

4 裁判官との即日面接

東京地裁の場合、面接期間と面接時間が決められており、申立代理人から裁判所に電話します。面接期間は申立日(郵送申立ての場合は裁判所からの連絡日)とその翌日から3営業日以内面接時間は午前9時15分~午前11時30分と午後1時~午後2時、です。予約ではありませんので、申立代理人の都合に合わせて期間内に電話すれば問題ありません(原則:電話面接)。

なお、電話面接以外にも、申立代理人において、即時処理が必要な事情があると判断した場合は、持参提出の上、直ちに面接する希望の旨を受付時に申し出れば、面接となります。

即日面接では、主に申立代理人が事前に十分な調査を行っていることを前提に、裁判官から事情や問題点等について確認されます。これにより、同時廃止で申し立てた事件について、そのまま同時廃止で進行するか、管財事件とするか、振り分けられます。面接の結果、裁判官において同時廃止が相当との心証を形成できなかったときは直ちに管財事件となります。再面接や資料の追完はできません

つまり、管財事由がないとして同時廃止を希望し申立てを行ったとしても、裁判所が同時廃止か管財事件にするかを決めますので、管財人を付けて更なる調査が必要な案件と裁判所が判断した場合は管財事件となります。

 

5 同時廃止の決定と破産手続開始の決定、そして破産手続の終了

同時廃止の決定が出た場合(通常、即日面接をした日に同時廃止の決定が出ます。)、破産手続開始決定と同時に破産手続は終了します。しかし、破産手続が終了しても、免責の判断はまだです。即日面接において免責審尋期日が設けられ、決定書に記載されます。破産手続開始決定がされると、申立人の呼称が「破産者」となります。

 

同時廃止決定と破産手続開始決定の効果

同時廃止の決定がある場合も、一時的に資格などの制限を受けることになります。しかし、管財事件とは違って、破産管財人は選任されませんので、財産調査は行われません。免責決定を受ければ、資格などの制限はなくなり、本来の地位を回復する(復権)ことができます。

資格制限と復権については、「よくある質問」へ。

 

6 免責審尋期日

免責審尋期日とは、裁判所で免責審尋をする日のことをいいます。免責審尋というのは、平たく言えば、破産者の借金を免責するか否かを判断するために裁判官から破産者にヒアリングすることです。債務を免責する以上、その判断は慎重でなければならず、債権者にも意見を述べる機会が与えられます。実際の免責審尋期日では、よほどのことがない限り、裁判官から気になる点や破産者が免責の重要性を理解しているかなどを聞かれるだけで、(裁判官にもよりますが)問い詰められるようなことはないです。一般公開はありません。

破産者に、ということなので、免責審尋期日では破産者は必ず出席しなければなりません。

ほとんどの場合、氏名、申立時の住所に変更がないかの確認、申立てをしてから免責審尋期日までの期間で大きな変化はあったかの確認程度で終わります。場合によっては、裁判官から指導や忠告があることもありますが、時間的には10分もかからないでしょう。それでも、期日の設定は破産手続開始決定から大体2か月後なので、比較的予定は空けやすいと思います。

一部の裁判所では免責審尋期日を実施しないところもありますが、東京地裁は例外なく実施されます

 

7 免責許可決定

免責審尋期日の結果、裁判所が免責を許可する判断をした場合、期日から約1週間で免責許可決定がされます。そして、裁判所が官報に掲載するための準備手続に2週間、さらに官報に掲載されてから2週間(つまり免責許可決定から1か月)が経過したときに免責許可決定が確定し、法律上の支払義務が免除されます。

 

免責不許可事由と裁量免責

破産法には、免責不許可事由が定められています。例えば、あえて債権者に損をさせるような行為をした場合、特定の債権者に対して優遇するような返済等をした場合、借金の主たる原因が浪費やギャンブルなどによる場合、債権者を騙して借入をした場合、重要な書類を隠蔽したり偽造した場合などです。

もっとも、こうした免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判所が破産に至った経緯その他一切の事情を考慮して、免責許可が相当であると判断した場合には免責許可決定が出ることもあります。これを裁量免責と言います。

したがいまして、ギャンブルによる借金という一事をもって直ちに管財事件ではなく、事情など総合的に考慮して同時廃止事件で申し立ててみるのも検討する必要があります。もちろん、申し立てた結果、管財事件になり費用がより発生する可能性があることは依頼者に伝えます。

 

管財事件

次に管財事件の流れを見ていきます。管財事件の流れとしては、相談・受任→申立準備→申立て→裁判官との即日面接→管財人の選任→破産手続開始決定→債権者集会・免責審尋期日→破産手続終結決定→免責許可決定、となります。

 

1 相談から債務総額の確定まで

基本的に同時廃止事件の(1)相談時(2)受任通知の発送・債務総額の確定は同じになります。聴取の中で、借金の原因がギャンブルや競馬、パチンコといった免責不許可事由があることが判明した場合や33万円以上の現金、20万円以上の財産を所有している場合は管財事件と判断します。仮に同時廃止事件で申し立てたとしても、裁判官との即日面接で、裁判官がその心証を形成できないと判断した場合は、管財事件となるケースもあります。

 

管財事件のメリットとデメリット

メリット

正直、管財事件を採るメリットはないと思います。ギャンブルや競馬などによる借金、20万円以上の財産を有していれば管財事件になりやすいといえるので、管財事件を採るメリットというよりは、同時廃止事件を前提にしつつ、依頼者から聴取した内容、また資産、その他破産に至った事情など総合的に考慮した結果、管財事件で申し立てるという選択になると思います。

 

デメリット5つ

そして、管財事件となった際のデメリットですが、①印紙代、郵便切手代、官報公告費用の他管財人に引き継ぐための費用がかかります。②財産の管理・処分が破産管財人に委ねられること、③自分の財産や生活状況など破産管財人からの説明に応じる義務があること、④郵便物が破産管財人に届くようになること、⑤居住地の変更や海外旅行などは裁判所の許可が必要になること、が挙げられます。このうち①以外については、後ほどの管財人の役割に関連しますので、そちらでご説明します。

 

① 費用がかかる。

管財事件の場合、印紙代は1500円郵券代4400円は同時廃止と同額ですが、官報公告費用は個人管財が1万8543円(中目黒庁舎で現金納付する場合は1万9000円。法人管財が1万4786円(中目黒庁舎で現金納付する場合は1万5000円。))となります。これに加えて、後ほど流れでも説明しますが、破産管財人が選任され、破産管財人に引き継ぐための費用として、最低20万円がかかります。したがいまして、少なくとも同時廃止に比べると20万円余はかかることになります。しかも、最低ですので、事案によっては30万円、40万円と多く費用がかかる場合もあります。

 

2 申立準備~申立代理人の役割

(1) 申立書の作成と疎明資料の収集

裁判所所定の書式に基づき、依頼者において該当するところに、必要事項を記入していきます。最も手っ取り早いのは、委任契約締結の相談時に、聴取しながら申立書や資産目録、報告書又は陳述書のドラフトを作成し、住民票や預貯金通帳の写し、家計簿の作成などの疎明資料の手配を依頼者にお願いします。動きが悪そうな依頼者であれば、期限を設けるのも効果的な場合があります。委任契約を締結してからの2か月間(東京地裁は2か月分の家計簿や給与明細などを提出する必要がありますし、住民票も発行から3か月以内であるため。)でどれだけ申立てができる段階までもっていけるかがポイントです。

 

(2) 申立費用と予納金(債務者申立ての場合)

繰り返しますが、申立印紙代は1500円郵券代は4400円は同時廃止事件と同じですが、管財事件の場合、官報公告費用は1万8543円(中目黒庁舎で現金納付する場合は1万9000円)になります。これらに加えて、管財人に引き継ぐための費用が発生します。事案によって変動がありますが、最低20万円となります。

官報公告費用の納付については、同時廃止事件と同じく、現金納付電子納付銀行振込があります。

 

管財人引き継ぎ費用

最低20万円になります。一括予納の場合は、後日、管財人から振込先口座を開設した旨の連絡がきますので、速やかに振り込みます。分割納付の場合は、申立後に行われる裁判官との即日面接時に、裁判官と打ち合わせた時期、金額に従って順次振り込みます。

 

(3) 申立てに必要な書類(東京地方裁判所の場合)

管財事件の場合、記載内容は同時廃止事件と若干異なりますが、揃えるべき書類や資料は同じです。

 

3 申立て

実際の持参提出・郵送であっても同時廃止事件と同じ手続になります。また官報公告費用の納付も同時廃止事件と同じです。

 

4 裁判官との即日面接

裁判官との面接も面接期間や面接時間の他、原則電話面接であることも同時廃止事件と同じになります。

 

5 管財人の選任から破産手続開始決定まで

さて、ここからが、同時廃止事件との分岐点です。

(1) 管財人の選任と債権者集会期日の設定

管財事件の場合、裁判官との即日面接後、当日中(遅くとも翌日)には破産管財人が選任されます。申立代理人としては、裁判所から破産管財人の氏名や住所、法律事務所名の連絡を受けた後、速やかに裁判所に提出した申立書類(副本)と打合せ補充メモを直送します。事務所によっては直接の受け渡しもあり得ます。それと同時に、破産手続開始決定日(即日面接日の翌週の水曜日17時)までに依頼者を連れて、破産管財人と打合せを行います。破産手続開始決定までかなりタイトなスケジュールになりますので、その旨依頼者と共有しておきます。例えば、木曜日に即日面接をした場合、破産手続開始決定が翌週の水曜日になります。

また即日面接時に、債権者集会の期日が設定され(約3ヶ月後)、これについても依頼者の出席は必須です。債権者集会期日については後ほどご説明します。

 

(2) 管財人との面接

管財人との打合せでは、基本的に裁判官よりも詳細な事情、経緯、現状を聴取されますので、全て誠実に話し、管財人から手続進行のために、事実関係の補充調査や資料の追完などの指示があれば対応します。

 

(3) 破産手続開始決定とその効果

上述のとおり、裁判官と面接をした日の翌週の水曜日17時付けで破産手続の開始決定がされます。

 

破産手続開始の要件

まず破産法上、裁判所が破産手続開始決定をするためには、申立人が支払不能であることが必要です。支払不能とは、債務者(申立人)の支払能力が低いことから、全ての債務について、継続的に返済を続けていくことができない状態にあることをいいます。

次に、破産障害事由がないことが必要です。破産障害事由とは、先ほどお伝えした官報公告費用を納付しないとか、既に別の倒産手続が行われていることなどです。

この2つの要件をみたすと裁判所は破産手続開始決定をします。

 

破産手続開始決定の効果

管財事件の場合は破産者の一定の財産について、破産者の管理・処分権限が破産管財人に専属し、破産者の居住が制限されます。破産者の居住が制限されるというのは、居住場所を変えるよう制限されるという意味ではなく、破産者は、裁判所の許可を得ない限り、居住地を変更することができません。勿論旅行なども制限されます。

なぜこのような措置が採られるかというと、破産管財人は破産者の財産を換価して、債権者に配当する職務を行います。そのため、破産者の財産を正確に把握する必要があり、不明な点があれば随時破産者に説明を求める必要があるからです。そして、破産者にはこうした求めに応じる義務がありますので、自由に財産を処分したり、居住地を変更したりすることができないということです。その他、破産者宛の郵便物は、新たな債権者がいないか調べるために全て破産管財人に転送されます。これらについては管財人の役割でご説明します。

 

6 申立後の手続~申立代理人と管財人の各役割

(1) 申立代理人の役割

申立代理人としては、申立後、破産管財人からの指示に、時に依頼者と相談しながら、対応します。そのため、依頼者と密な連絡を行うことが求められます。

 

(2) 管財人の役割~申立代理人の視点も含めて

破産管財人は第三者的な立場で(破産者又は申立代理人に敵対的や友好的な管財人もいますが。)、手続の中心的な役割を担います。破産手続の目的は、債務者の財産等の清算であるため、破産管財人は、破産者が有していた財産の換価・処分・回収、破産債権の認否、債権者に対する配当、裁判所と破産債権者に対する報告を主な職務としています。

 

① 破産者との面談

管財人との打合せは、破産手続開始決定前の一度とは限りません。開始決定後も必要があれば管財人は破産者又は代理人から説明を求めたり、資料の追完を求めます。そして、破産者には管財人の業務に協力して必要な説明をする義務があります。これを怠ると、免責不許可となる可能性があります。

 

② 破産者の財産や負債、破産に至った事情の他免責不許可事由の有無について調査

管財人は、財産と負債の調査を行います。破産財団に属するものは適切に管理をし、債権者から届いた破産債権届出を精査して、公平な配当になるようにしなければなりません。

その他打合せを通じて、破産に至った事情や経緯、免責不許可事由の有無を調査して免責が相当か検討します。

ちなみに、裁判所は破産手続開始決定が出されると、申立時に添付したラベルと封筒をもって、債権者一覧表に記載された住所に、債権者に対して破産債権届出書を提出するよう求めます。債権者は、届出書を提出しなければ、破産債権者として認められず、その後の手続に参加することはできません。

 

破産財団

破産財団とは、破産者の財産又は相続財産もしくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理および処分をする権利が専属するものをいいます。例えば、99万円を超える現金や20万円を超える預金、不動産、高額な動産(絵画や貴金属など)は破産財団に組み入れられます。

ただし、原則として、債権者への配当原資になり得るものは全て破産財団を構成しますが、例外的に、破産財団に含まれず破産者が自由に管理処分することができる財産(自由財産)があり、自由財産は拡張する制度も認められています。自由財産としては、破産手続開始後に破産者が取得した財産、差押禁止動産・債権、一身専属性のある財産があります。

 

③ 破産財団に属する財産を管理・処分・換価する/自由財産の拡張

破産管財人のメイン業務と言えます。破産財団に属する破産者の財産は、原則として、破産管財人が売却し、換価します。

しかし、自由財産として認められれば、破産管財人の専属から外れるため、没収されることはありません。破産者の事情などによっては、自由財産の範囲が拡張されることがあります。最終的な判断は裁判所が行いますが、裁判所は破産管財人の意見を聴取し、重視する傾向にあります。正直なところ、破産者の事情が病気などやむを得ない事情でない限りはあまり期待しない方がよいところです。

 

④ 破産者に届く郵便物の確認

破産手続開始決定後、破産者宛の郵便物はすべて破産管財人に配達されます。これを嘱託回送といいます。破産管財人は届いた郵便物を開いて隠し財産がないか、新たな債権者はいないか、などを確認します。確認を終えた郵便物は、破産管財人から破産者に基本的に郵送されます。破産者がすぐに入手したい郵便物の場合は、管財人事務所まで赴く必要があります。

 

⑤ 否認権行使

否認権とは、破産者が破産手続前に不当に自らの財産を減少させる行為があった場合に、その行為をなかったことにして、その財産を取り戻すことができる権利をいいます。一般的に、任意での返還を求めますが、行使先の相手方が、破産者の財産の返還に応じない場合は、破産管財人は訴訟を提起することになります。そうなると、手続終了までの期間はたいぶ延長されます。

 

⑥ 免責許可について裁判所に意見書を提出すること

破産管財人の一連の業務の結果、破産管財人において免責相当または裁量免責相当との意見をすれば、裁判所は破産管財人の意見を重視しますので、ほぼ免責許可の決定となります。

ちなみに、破産管財人に不適切な行為があった場合には、破産者は裁判所に対して破産管財人解任の申立てをすることができます。

 

7 債権者集会と免責審尋

債権者集会では、破産管財人が債権者に対して、破産に至る経緯や破産者の財産状況、破産手続の進捗状況を報告し、債権者からの意見を聴取します。債権者集会に参加するのは、裁判官、破産管財人、破産者本人、破産者代理人は必須で、債権者は各自に任されます。銀行や消費者金融は債権者集会に参加することはほぼありませんので、事案によっては債権者が誰も出席しない債権者集会が開かれることはよくあります。

とはいえ、破産者は必ず出席しなければなりませんので、代理人から当日は空けておくよう伝えます。破産者が事前の許可なく債権者集会に出席しない場合、免責されない可能性があります。事前の許可については、病気などやむを得ない事情がある場合に限られます。通常、債権者集会期日は破産手続開始決定日から大体3ヶ月後に設定されます。

また債権者集会は免責審尋も兼ねています。なので、破産者が欠席すると免責されない可能性があるのです。

 

8 破産手続終結決定と廃止決定

債権者に配当する財産がある場合は破産手続終結決定となります。自己破産は、破産者の財産を債権者に公平に分配することで目的は達せられます。そのため債権者に分配した時点で、破産手続は終結となり終了します。

また債権者に配当する財産がない場合は破産手続廃止決定が出されます。自己破産の目的は上述の通りですが、破産者に処分する財産がないため、これ以上破産手続を続けても配当できないので、破産手続を継続させる必要がありません。なので、財産を清算することなく、破産手続を廃止して終了します。

 

9 免責許可決定

同時廃止事件と同じく、債権者集会(免責審尋)期日の結果、裁判所が免責を許可する判断をした場合、約1週間で免責許可決定がされ、その後約1か月で確定し、法律上の支払義務が免除されます。

 

よくある質問

ここからは実際に依頼者から破産手続に関して受けた、よくある質問をあげます。

 

(1)破産手続が終了するまでにどれくらいの期間がかかりますか?

→ケースバイケースなので、一概には言えませんが、同時廃止事件の場合は3か月から6か月、管財事件の場合は6か月から1年が目安です。

 

(2)官報に掲載されるとのことですが、自分が破産したと知られることはありますか?

→官報は国が発行している新聞のようなものですが、官報を見ることがかなりの趣味でもない限り、ほとんどの人は官報を見ません。そのため、ゼロとは言いませんが、官報掲載から自己破産したことが発覚する可能性はないと思います。

 

(3)自己破産をすると仕事への影響はありますか?

→破産をしても現在の仕事には原則影響ありません。破産をもって解雇となれば不当解雇になります。そういう意味での影響はありませんが、会社に知られるかどうかは別問題です。つまり、例えば勤務先から借り入れをしている場合は受任通知を送付する対象になりますし、正社員として退職金が発生する可能性のある場合は退職金規程と申立時点での退職金額の計算や勤務先発行の退職金見込額証明書を裁判所に提出しなければなりませんので、知られる可能性はあります。

また原則影響はありませんが、例外的に破産手続開始決定がされてから免責許可までの期間は、法律上「破産者」として扱われます。そして、破産者になると一部の資格や職業に制限がかかります。具体的な職業や資格は、弁護士などの士業系、人事官や公正取引委員会委員などの一部公務員、信用金庫などの団体役員、会社役員、その他生命保険募集人、貸金業登録者、警備業者責任者、警備員、風俗業管理者、廃棄物処理業者などです。要するに、他人の財産を預かったり、機密情報を扱ったりするような職業に対して制限がかかります。ただ、破産手続が終了、つまり免責許可決定が出れば、自然と復権(当然復権)します(一部復権の申立てをしなければいけないケースもあります。)。当然復権するケースは、免責許可決定を得たとき、破産手続開始後から10年経過したときなどです。申立てによって復権するケースとしては、ほぼありませんが、例えば破産手続中に相続財産で大金を取得して、債務を全て完済できた場合などです。

 

(4)破産をすると国家資格はどうなりますか?

→破産手続中であっても、国家資格を受験すること自体は問題ありません。しかし、めでたく合格しても、破産手続中であれば、資格登録ができない資格もあります。とはいえ、永遠に登録できないわけではなく、破産手続終了後、復権すれば資格登録できることが多いです。

 

(5)復権したか確認するにはどうしたらよいですか?

→当然復権の場合、特段破産者に知らされることはありません。自身で確かめる必要がありますが、最も手っ取り早いのは本籍地のある役所で身分証明書を取得することです。役所によって異なりますが、復権している場合には、身分証明書に「破産宣告または破産手続開始決定の通知を受けていない」と記載されます。詳しくは役所の窓口で問い合わせるとよいと思います。ちなみに、自己破産をしても、戸籍や住民票にその事実が記載されることはありません。

 

(6)家族に知られずに破産できますか?

→例えば、一人暮らしで家族からの借入れがなく、連帯保証人が家族でない場合には、まず家族に知られることはありません。しかし、裁判所に提出する資料の一つとして家計全体の状況があります。そこには配偶者の収入などを記載する欄がありますし、疎明資料の一つとして、給与明細書や預貯金通帳の写しを提出してもらうことがあります。

 

(7)過去に破産しており、今回2回目なのですが、大丈夫でしょうか?

→正直2回目の破産となると裁判所の判断は厳しくなります。ただ、1回目のときから長期間経過している場合や2回目の破産に至った事情などから破産できる可能性はゼロではありません。なお、破産法上、免責決定が確定した後、7年間は破産ができません。

 

(8)破産をすると連帯保証人に請求がいくのでしょうか?

→基本的に、受任通知を送付したら、金融機関から一括での支払いを求められ、できないときは連帯保証人に請求するという通知を受けます。連帯保証人への請求も一括払いでなされますが、交渉によって、分割払いなどできる場合があります。なお、連帯保証人に支払能力がなく、債務が高額であるような場合には、連帯保証人も自己破産を行うケースがあります。

 

(9)破産をするとすべての財産を自分で自由に使うことができないのですか?

→破産をしても、換価や配当されず、自分で自由に使う財産があります。これを自由財産と言います。例えば、99万円以下の金銭や衣類家電などの生活必需品などです。さらに、自由財産の拡張といって、経済的更生のため、保険の解約返戻金や自動車、退職金などその他財産についても自由財産として認められることがあります。

 

(10)それなら、自己破産前に、自分の財産を名義変更すれば問題ありませんか?

→ダメです。申立直前や弁護士への依頼直前に、名義変更をすることは財産を隠蔽したとみなされ、免責不許可となる可能性があります。

 

(11)将来のためにNISAや確定拠出年金をやっているのですが、破産するとどうなりますか?

→NISAについては生活や仕事に不可欠な財産ではないとみなされた場合、破産財団に組み込まれる可能性があります。自己破産をすると、クレジットカードで積み立てをしていた場合はクレジットカードが使えなくなりますので、積立投資はできなくなります。勿論、自己破産手続が終了した後で、再びNISAや株式投資をすることは問題ありません。また確定拠出年金は私的年金という位置付けになり、確定拠出年金法で差押えが禁止されています。そのため、自己破産をしても、破産財団に含まれません。ただし、生命保険会社などで加入した個人年金は資産とみなされますので破産財団に含まれます。

 

(12)自己破産をすると、住所を変えたり、海外旅行をすることができなくなるのでしょうか?

→管財事件の手続中は、居住地を変更したり、長期間の海外旅行をする際には、裁判所の許可が必要です。これは、破産管財人が破産者の財産を正確に把握する必要があるためです。手続が終了すれば、自由に住所を変えたり、海外旅行に行くことができます。

 

(13)現在賃貸なのですが、退去する必要はありますか?

→自己破産を理由に賃貸借契約を解除し、立ち退きを求めることは認められていませんので、自己破産をしたら退去する必要はありません。ただし、賃料不払いがあれば、免責対象とすることができますが、賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除され立ち退きを求められることとは別問題です。

 

(14)持ち家の場合はどうなりますか?

→基本的に自己破産(管財事件)は、現在保有している財産を放棄し、それを換価して債権者に配当する手続になりますので、持ち家の場合は売却されて配当に充てられることがあります。もし住宅ローンがありオーバーローンの状態で資産価値がない場合は、債権者である住宅ローン会社が設定している抵当権に基づき競売され処分されます。いずれにしろ、持ち家の場合は処分されると思っておいた方がよいです。ただ、自己破産申立後すぐに退去しなければいけないものではなく、競売するにも時間はかかりますので、引っ越しの準備は十分にあります。なお、自己破産は以上の手続になりますが、もし所有しながら債務整理をしたいとお考えの場合は、個人再生の手続や親族に買い取ってもらうなどの方法も選択肢の一つです。

 

(15)管財事件の破産手続開始決定後、自分宛の郵便物が届かないのですが、どうしてですか?

→破産手続開始の決定がなされると、破産管財人は隠し財産がないか、新たな債権者がいないかなどを調査するために、破産者宛の郵便物は全て破産管財人宛に転送されます。転送された郵便物は、破産管財人において確認後、破産者に郵送されます。支払期限がある納付書など場合によっては、直接破産管財人から受け取ることもあります。

 

(16)子どもの進学や就職、結婚に影響を与えることがありますか?

→全くありませんので、心配不要です。子どもに関連する事項は、学資保険やお子様名義の預貯金口座があります。学資保険については、名義は子どもですが、実際の保険料は親が負担するので、親(破産者)の財産になります。よって、学資保険についても解約返戻金を算出又は保険会社より発行してもらい、高額の場合は学資保険を解約して債権者に分配する可能性はあります。またお子様名義の預貯金通帳は、資金の移動があれば、疎明資料として提出する場合があります。

 

(17)お世話になった友人には返済したいのですが?

→債権者平等の原則に反するため、誰かひとりに返済をすることは偏頗(へんぱ)弁済になり、免責が認められない可能性があります。

 

(18)奨学金は債務整理できるのですか?

→一般的に、奨学金は破産できない、自己破産しても免責されないと誤解している方が多いです。しかし、奨学金の性質上、借金であるため、免責されます。ただし、奨学金の場合、親や親族が連帯保証人になっているケースは多いので、受任通知を送付すると、連帯保証人に請求がいくことになり、家族に迷惑をかけずに破産することはできません。例えば、破産手続終了後であれば、裁判所も申立代理人も関知しませんので、任意で連帯保証人である親族に支払っていくことは可能です。

 

(19)自己破産手続終了後に、得た収入や財産はどうなりますか?

→手続終了後であれば、裁判所も申立代理人ももはや関与することはありませんので、すべて自由に使えます。

 

(20)自己破産をした後に、ローンを組むことはできますか?

→通常、破産後5年~10年は、いわゆるブラックリストに登録されます。ブラックリストというのは、そういうリストがあるわけではなく、信用情報機関に事故情報として登録されることを意味します。登録された後は、銀行などからお金を借りたり、クレジットカードを作成したり、ローンを組むことが難しくなります。ちなみに、ローンが組めない人に向けて闇金業者などから勧誘が行われることがありますので、注意が必要です。

 

(21)法人の代表者ですが、法人は破産せずに、自分だけ破産することはできますか?

→残念ながら、法人代表者の場合、個人破産のみを申し立てることはできません。裁判所から法人も一緒に申し立てるよう言われます。個人破産のみを認めてしまうと、実態のない法人だけが残ることになるからです。

 

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