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置き配された荷物を持ち去ったら何罪?被害に遭った時の対応についても解説

はじめに

新型コロナウイルスの影響による非接触の推奨や、物流の2024年問題(トラックドライバーの労働時間規制)の解消の一環として利用が普及しつつあるのが置き配です。

しかし、置き配された荷物が帰宅後に確認してみると無かったという事例が多くあります。配送会社に問い合わせても、きちんと玄関に置き配させていただきましたと言われてしまえば、それなら誰かに持ち去られたのではないか、と思うでしょう。

 

今回は、置き配荷物を持ち去ったときに問われる罪と被害に遭ったときの対応についてご紹介します。

 

置き配された荷物を利用者でない第三者が持ち去ったら?

結論から言いますと、置き配された荷物を利用者でない第三者が持ち去った場合、窃盗罪(刑法235条)が成立します。その場合、10年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

 

置き配の盗難がどうして窃盗罪になるのか?

では、置き配の盗難が窃盗罪にあたるかみていきます。

窃盗罪(刑法235条)は、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。」とあります。

 

過去のコラムでもご紹介しましたが、窃盗罪が成立するためには、①他人の占有する財物、②窃取、③故意、④不法領得の意思が必要となります。

 

他人の占有する財物を窃取した

他人の占有する財物を窃取した」とは、他人が所有し、かつ占有している財物を占有者の意思に反して自己または第三者のもとに占有を移転させることをいいます。

つまり、置き配盗難の場合、持ち去った置き配の荷物は、利用者がネット等で購入した商品ですので、利用者が所有する財物ということになります。また置き配に指定した場所は玄関前や郵便受けなど利用者の支配・管理が及ぶ場所であることが通常であるので、利用者の占有が及んでいるといえます(支配・管理が及ばない場合には窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立することになります。)。

さらに、持ち去った人物は、利用者が所有、占有している財物(荷物)を、利用者の意思に反して自分のもとに占有を移転させたことになりますので、利用者の占有する財物を窃取したといえるでしょう。

 

故意と不法領得の意思

窃盗罪が成立するためには、故意不法領得の意思も必要となりますが、置き配盗難の場合、少なくとも持ち去った人物は、「他人の物だと知っていた。」とか、「自分の物にして換金しようと思った。」などの動機に基づくことがほとんどですので、これらも認められる可能性が高いでしょう。

ちなみに、今はあまりないと思いますが、ごく稀に、マンションなどの集合住宅で、隣人が玄関前に置き配された荷物を、例えば雨に濡れないよう良かれと思って、帰るまで預かっていたというようなケースがあります。これについては故意や不法領得の意思は認められにくいでしょう。このようなケースについて不快に思われるのであれば(当然感謝はしましょう。)、宅配ボックスやコンビニなど外部の受取りサービスを利用することを検討しましょう。

同様に、誤配達の場合にも他人の物と気づかずに配達員から受領した場合には、犯罪の故意がないので、窃盗罪や占有離脱物横領罪は成立しません。

置き配盗難の被害に遭ったら?

ここからは、被害に遭われた方の面から具体的な対応についてご紹介します。

通常配送会社の方で置き配が完了したら、通常、利用者に通知がいきます。通知がされているにもかかわらず、置き配されていなければ配送会社に問い合わせをしてみましょう。

 

置き配の完了が確かであっても、置き配された荷物が無くなっていた場合は、再送(追加費用なし)・返金などの補償を受けることができる場合があります。ただし、補償の可否や内容・方法については、会社によって異なります。

 

補償とは別に、置き配された荷物はどこに?と思うでしょう。その場合は、何者かによって持ち去られた(盗難被害に遭った)可能性が高いといえますので、速やかに警察に被害届を出しましょう。置き配に限らず窃盗の捜査で有力な証拠となり得るのが、防犯カメラの映像です。防犯カメラを設置しているマンションなどの場合は、管理会社にかけあって映像を提供してもらえるか相談してみましょう。

 

被害届のほかにも刑事告訴の手続を採ることも可能です。窃盗罪は基本的に親告罪ではありませんので、必ずしも刑事告訴をしなければいけないわけではありませんが、告訴状作成には専門的な知識が必要となりますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

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持ち去った人物が特定できたら、民事で損害賠償を求めることも手続上可能ですが、実際に得られる賠償金は僅かでしょうし、弁護士に依頼された場合は、費用倒れになる可能性が高いので、まずは刑事手続で処罰を求めた方がよいでしょう。

 

最後に

今回は実際にニュースで報道された例を基に、置き配にまつわるトラブルについてご紹介しました。

マンションの共用部といわれる玄関前の廊下に置かれたものだからといって、つい出来心で窃盗してしまった場合は、最大10年の懲役または50万円以下の罰金に問われる可能性があります。

一方で、置き配盗難の被害に遭われた場合は、泣き寝入りをする必要はありません。警察に相談の上、被害届の提出や刑事告訴の手続を採ることができますし、そこまでいかなくても配送会社の補償で十分であれば、それはそれで問題ありません。

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