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ホテルで人数を偽って宿泊したら詐欺罪になる?

はじめに

先日、歌舞伎町のホテルで自身が宿泊すると偽り、未成年者2人をそのホテルに宿泊させたとして、宿泊の手続をした者を詐欺の疑いで逮捕したという報道がありました。

 

今回は、ホテルの不正宿泊(利用)に関して、詐欺罪が成立する理由についてご紹介したいと思います。

 

ホテルへの宿泊者以外の者の宿泊や出入りが禁止されている理由

ホテルなどのエントランスなどに「宿泊者以外の立入はご遠慮ください。」という張り紙を見たことがあると思います。

宿泊者が宿泊者以外の人をホテルに宿泊させたり、出入りさせたりすることは宿泊者が犯罪に問われる可能性があります。ではなぜなのでしょうか。

 

ホテルには約款がある

ホテルを宿泊する際には、ホテル側が宿泊者に守ってほしいルールを定めた約款(利用規約)が存在します。その中には、「宿泊者以外の者を出入りさせてはならない」など記載されているのが通常です。

一般的に、宿泊の申込みをすると、宿泊者は約款(利用規約)に書かれている内容に合意したものとみなされるため、宿泊者以外の者を宿泊させたり出入りさせれば利用規約に反することになります。

 

未成年者は宿泊できないのか?

今回の報道のケースでは、未成年者がホテルに宿泊しようとしたところ、ホテル側から宿泊を断られたため、その場にいた見ず知らずの人に宿泊手続を代行してもらったという背景があるようです。

 

未成年者が宿泊する際には、法定代理人の同意が必要

一般的に、未成年者が宿泊する場合、保護者の同意または同行時に限り宿泊が可能です。しかし、中には未成年者だけで泊まるケースもあると思います。そのようなときは各ホテルが用意している同意書を提出すれば未成年者だけでも宿泊することは可能です。

なぜ法定代理人の同意書が必要かというと、未成年者がホテルに宿泊するためには、ホテルと宿泊契約を交わします。この宿泊契約など法律行為をする場合、法定代理人(親権者など)の同意が必要なのです(民法5条)。法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は取り消すことができるので(民法5条2項)、後々法定代理人から同意していないので取り消すと言われてしまうとホテル側は宿泊料金を返還しなければいけません。

以上のように、未成年者の宿泊はホテル側もリスクを負うことになるので、法定代理人の同意を必要としているのです。

ただし、同意書があっても、都道府県が定める青少年保護育成条例によって宿泊を断られる場合もあります。

 

人数や年齢を偽って宿泊をすると詐欺罪や建造物侵入罪になる

今回の報道のケースでもそうですが、他にも歌舞伎町のホテルの1部屋を1人分の宿泊で予約したが、実際は3人で宿泊し、1人分の宿泊料金しか支払わなかったとして詐欺容疑で逮捕したという報道があります。

年齢や人数を偽って宿泊することがなぜ詐欺にあたるのでしょうか。

詐欺罪は、お金を騙し取るというイメージがあるかもしれませんが、財産上不法の利益を得たとき又は他人にこれを得させたとき詐欺罪が成立します(刑法246条2項)。

この場合、10年以下の懲役に処せられます。

 

「財産上不法の利益」とは

文字通り不法に財産上の利益を得ることをいいます。財産上の利益とは、一般的に、労務・サービスを提供させる等の積極的利得も含まれますので、ホテルでのサービスは財産上の利益といえます。

そのため、ホテルの場合で言えば、不法に財産上の利益を得たというのは、宿泊料金などの支払いを免れる行為が不正宿泊の典型例ということになります。

ホテル側からすれば、1人分のサービスを提供するはずだったのに、嘘をつかれた結果、3人分のサービスを提供してしまい、かつ1人分の料金しか支払われていないということになります。

本来、3人で宿泊するのであれば、ホテル側には3人で宿泊することを正直に申告し、ホテル側としては1室であっても3名であれば3名分の宿泊料金を請求するのが通常です。

 

建造物侵入罪や私文書偽造罪が成立する可能性も

詐欺罪の他に、宿泊者以外の者がホテルに出入りする行為は、ホテル管理者の意思に反するものとされ、建造物侵入罪(刑法130条)が成立する可能性があります。

また法定代理人の同意書を偽造した場合は、私文書偽造罪(刑法159条)が成立する可能性があります。

 

まとめ

未成年者によるホテル宿泊は禁止されていることではありませんが、適切な手続とルールを守って宿泊することが求められます。

今回の報道のケースでは、詳細な事情は明らかではありませんが、もし未成年者だけでホテルに宿泊しようとするのであれば、親権者の同意が必要です。

最近では、未成年者が年齢や人数を偽ってホテルに宿泊し、そこで飲酒や喫煙、オーバードーズなどが行われていた報道もあります。

そのような場合は、ホテル側から今後一切の利用を禁止されるだけでなく、詐欺罪や建造物侵入罪で処罰される可能性がありますので注意が必要です。

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