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ホスラブの誹謗中傷について開示請求する方法(開示命令・提供命令)

インターネット掲示板サイト「ホストラブ」(通称ホスラブ)に書き込まれた投稿内容に対する開示命令提供命令、についてご紹介したいと思います。

 

ホスラブ管理者は、現状では提供命令に任意に応じる対応を採っています。したがって、AP段階でのログ保存期間が迫っている場合は、新制度である発信者情報開示命令と提供命令を行うことが有用と考えます。ただし、この手続の注意点は、提供命令への履行状況が突如変わる可能性もありうること、削除請求はこの手続きではできないこと、執行ができないことが挙げられます。勿論削除請求も行いたいのであれば、民事保全(仮処分)手続であれば可能です。

以下では、手続の流れに沿って実務上の注意点なども含め記します。

 

発信者情報開示命令兼提供命令申立準備

申立てには、基本的に以下の書類が必要です。

① 申立書(正本副本各1通)

② 委任状

③ 資格証明書

④ 当該区が発行する証明書(原本)

ホスラブの場合、管理者の資格証明書を取得する必要がありますが、申立書添付の当事者目録記載の相手方住所には記載方法に注意が必要です。資格証明書記載の本店所在地の住所を当事者目録に記載して裁判所に申し立てても、後日その住所では宛所に尋ね当たりませんとして返ってきます。なぜかというと、本店所在地記載の住所は、実際には当該区での住居表示の変更が行われているためです。これについては、23条照会などによって送達できる住所を割り出すことも可能ですが、最も手っ取り早いのは当該区が発行する証明書(取得手数料は無料)で足ります。

つまり、当事者目録の記載方法は、「(登記簿上の住所)~、(送達先)~」として、当該区が発行する証明書も申立時に添付します。

⑤ 証拠説明書(正本副本各1通)

⑥ 書証(正本副本各1通)

ケースによって何を証拠とするのかは異なりますが、少なくとも「権利侵害の説明」や「投稿記事目録」とリンクするような証拠(例えば投稿内容)は必要になると思われます。その際は、URLが全て見える形に工夫して証拠を作成します。

また裁判官によるのかもしれませんが、ホスラブの管理者が相手方であることを証明する資料も書証として要求される場合もあります。これについては過去の裁判例で足りる場合が多いです。

⑦ ①~⑥控え(申立代理人用)

⑧ 印紙代2000円

通常1件1000円ですが、発信者情報開示命令と提供命令事件は2件分として扱われます。

⑨ 相手方送付用レターパック

宛名には当事者目録に記載した相手方の住所と氏名を記載しておきます(ラベルでも可)。

 

発信者情報開示命令兼提供命令の申立て

1①~⑨が揃ったら、東京地方裁判所民事9部に申立てをします。

その際の持参書類は、①申立書(正本副本各1通)、②委任状、③資格証明書(原本)、④証明書(原本)、⑤証拠説明書(正本)、⑥書証(正本)、⑦控え、⑧印紙2000円、⑨相手方送付用レターパック、です。

⑦控えについては、持参提出であれば、申立書を提出後、書記官(又は受付)から形式的なところで訂正箇所の指摘を受ける場合がありますので、メモ代わりに持参しておいたほうが無難です。

なお、⑤証拠説明書(副本)、⑥書証(副本)は後日裁判所から「副本を相手方に直送してください」と指示されますので、申立時には持参する必要はありません。

 

申立当日か翌日までに事件番号等の連絡

申立当日又はその翌日までに裁判所から事件番号について連絡がきます。その際、必要があれば訂正箇所について指摘を受けることがありますので、随時訂正申立書で対応します。

 

発令のための各目録の送付

裁判所の審査を経て、発令となった際には、裁判所から発令用に必要な目録を提出するよう連絡がきます。目録は訂正したものがあれば訂正後のものを提出すれば問題ありません。

 

提供命令の発令と副本の直送

その後、裁判所から発令しましたとの連絡がきます。また裁判所から相手方であるホスラブ管理者に⑤証拠説明書(副本)、⑥書証(副本)の他訂正申立書があればそれも、直送するよう言われますので、直送します。直送先の住所は、当事者目録に記載した住所に送れば問題ありません。

 

発令から約1か月でIPアドレス等情報の提供

通常であれば、提供命令事件の相手方から申立代理人に他の開示関係役務提供者であるプロバイダの氏名等の情報が提供されるのですが、ホスラブの場合、提供命令発令から1か月ほどで、ホスラブ管理者(相手方)から直接申立人(申立代理人がいる場合は代理人)にIPアドレス、ポート番号、タイムスタンプなどの情報が提供される場合があります。とてもイレギュラーな流れです。この場合には、裁判所から後ほど、提供命令申立事件については取下げを求められることになります。

 

接続プロバイダへの開示命令申立て

ホスラブ管理者からIPアドレス等の提供を受けたら、Whoisで検索をかけて、接続プロバイダを割り出します。その後、接続プロバイダに対し開示命令を申し立てます。

 

ホスラブ管理者へ開示命令申立ての通知

接続プロバイダに対する開示命令を申立て、事件番号が付されたら、その旨とホスラブ管理者から接続プロバイダへ情報を提供するよう通知します。

 

ホスラブに対する発信者情報開示命令手続は弁護士に相談を(まとめ)

ホスラブに対する発信者情報開示命令申立ての一連の流れは以上となります。

ホスラブ管理者に対する発信者情報開示命令の場合、通常の内容たる情報の提供がされませんので、接続プロバイダに対する発信者情報開示命令を申し立てる際には、発信者情報目録の記載方法に注意が必要です

また接続プロバイダに対する発信者情報開示命令を申し立てた後に、MVNOが判明する可能性がありますので、ホスラブに書き込まれた内容について、発信者情報開示命令を申立て、最終的に投稿者を特定するためには、書き込まれた直後でないとログ保存期間の関係で特定が困難となる可能性があります

またホスラブに書き込まれた内容全てについて、発信者情報開示命令によって特定できるわけではなく、裁判官によっては権利侵害が認められないと判断されるケースもあります。

いずれにしろ、ホスラブでの誹謗中傷に対して発信者情報開示命令を行う場合には、迅速性と専門的な知識が必要となりますので、弁護士に相談することをお勧めします。

 

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