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出演したAV(アダルトビデオ)の契約を取り消したい

AV新法とは

AV出演被害防止・救済法とも呼ばれますが、アダルトビデオへの出演契約等について、その締結や履行等に関する特則、無効、取消し及び解除等に関する特則が定められています。

一旦アダルトビデオへの出演契約にサインしてしまい、撮影してしまった後であっても、AV出演者に対して、いくつかの救済規定が設けられています。

 

今回は、AVに出演したものの、出演したことに後悔して契約をなかったことにしたい、またはAVの販売を止めたい場合に、それらができるのかについてご紹介します。

 

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AV新法により出演者ができることは3つ

 

出演契約の取消し

出演契約は、AV作品ごとに書面又は電磁的記録によって締結しなければならず(法4条1項及び2項)、契約書には、撮影予定日時と場所、性行為の具体的内容、AVを公表する具体的方法と期間、出演者に対する報酬額と支払時期などを記載又は記録しなければなりません(法4条3項各号)。

そして、制作側には、これらが記載された契約について事前に出演者に説明し、以下の事項が記載された書面又は電磁的記録を交付又は提供して説明すること(法5条1項)、出演者と出演契約を締結したときは、速やかに、出演者に対し、出演契約書等を交付すること(法6条)が義務付けられています(法5条1項及び6条)。

 

説明書面の記載事項

・撮影された映像により出演者が特定される可能性があること(AV新法5条1項3号)

・AV出演に関する相談先の名称及び連絡先(同項4号)

・AV撮影は契約書等の交付を受けた日又は説明書面等の交付を受けた日のいずれか遅い日から1か月を経過した後でなければ撮影できないこと(同法7条1項)

・出演者は契約書に定められた撮影であっても拒絶できること。その場合に制作側に損害が生じても出演者は賠償の責任を負わないこと(同法7条2項)

・出演者に対する撮影された映像の確認の機会(同法8条)

・映像の公表は、全ての撮影が終了した日から4か月を経過した後でなければ公表できないこと(同法9条)

・出演者に解除権または取消権、差止請求権があること(同法11条、12条、14条)など

 

こうした制作側が課されている説明義務または交付義務に違反したとき、又は制作側が出演者に契約及び説明事項に関し、出演者に誤認させるような説明をしたときは、出演者は、出演契約を取り消すことができます(法11条1項)。

 

実際に、出演契約を取り消す際には、配達証明付きの内容証明郵便でその意思表示をし、相手方(制作会社等)に送付することをお勧めします。

民法は到達主義を採用していますので、配達証明付きにすることで、相手方に到達した日にちが判明し、その日から取消しの効力が生じます。

 

出演契約の(任意)解除

出演者は、制作側が以下の行為をした場合、催告することなく直ちに出演契約を解除することができます(法12条1項)

 

1か月を経過せずに撮影した場合(法7条1項)

出演者の安全並びに出演者が撮影を拒絶できるよう配慮せずに撮影した場合(法7条3項)

出演者に撮影された映像の確認する機会が与えられないままAVが公表された場合(法8条)

撮影から4か月を経過せずに公表された場合(法9条)

 

また上記に当てはまらない行為を制作側がしたとしても、出演者は任意に出演契約の申し込みの撤回又は解除をすることができます(法13条1項本文)。

ただし、任意解除の場合は、AV公表がされた日から1年を経過したときは解除することができませんので、注意してください。

なお、経過措置として、施行された日から2年を経過する日までの間にされた出演契約に対する任意解除はAVの公表から2年を経過するまでは可能です。

 

これについても解除の意思表示をする際には、内容証明郵便で行うと良いでしょう。

従って、出演したことに後悔し契約をなかったことにしたい場合には、出演契約の取消し又は解除の意思表示を制作側にすることになります。

 

解除に伴って制作側から損害賠償請求されるのではないかと心配されるかもしれませんが、AV新法上、制作公表者は、解除(任意解除も含む)に伴う損害賠償を請求することができないとされています(法12条2項及び13条3項)。また当事者は原状回復義務を負うため(法14条)、例えば出演者が報酬を受け取っていた場合には返還する必要があります。

 

公表の停止又は予防の請求

AV新法では出演契約の締結が必須になりますが、契約することなく撮影や公表がされたとき、または契約を取消し若しくは解除したときは、制作側にAVの公表の停止又は予防を請求することができます(法15条1項)。

また上記請求の際に、公表の停止又は予防に必要な措置を講ずるよう制作側に請求することもできます(法15条2項)。

つまり、出演者は、制作側にAVの公表の停止のみならず、必要な措置として、例えば販売済みのAVの回収をするよう請求することができます。

 

出演者ができることではないが・・・。

出演者が取消し又は解除の意思表示、公表の停止等を請求しなくても、そもそも出演契約が無効となる場合があります。

出演を義務付ける条項(法10条1項)

出演者の損害賠償額の予定又は違約金を定める条項(法11条2項1号)

制作側の出演者に対する、出演者に生じた損害賠償責任の免除等に関する条項(同項2号及び3号)

出演者の権利を制限し又はその義務を加重する条項(同項4号)

 

出演契約書にこのような条項があった場合無効となります。ただ、その場合であっても無効である旨を内容証明郵便で通知しておいた方が無難でしょう。

 

最後に

AVの撮影をしてこれから販売予定のAVの公表中止や、販売済みのAVの回収も請求することができます。

当事務所では出演者側の取消等請求、制作会社側におけるリーガルチェックといった案件を扱っております。

実際、AV新法成立後にも、出演女性側からの相談として、悪徳業者が撮影までの期間や公表までの期間を守らずに公表されたであるとか、そもそも契約書を締結されずにAVに出演させられたという相談はいくつか来ております。そのような悪徳業者に対しては警察も現在かなり厳しい姿勢で臨んでおり、積極的に逮捕してくれることが多いです。

当事務所における過去の案件では、AV出演契約の解約合意をした解決事例もありますので、宜しければご覧ください。

AV出演を後悔して契約の解除やAVの販売中止などを求めたい場合、または制作会社側で契約書のリーガルチェックをしてほしいという方はお気軽に当事務所までご相談ください。

 

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