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自転車の交通違反取締について~改正道交法

道路交通法の改正

令和6年5月17日、改正道路交通法が参院本会議で可決されました。今回の改正の柱といえるのが、自転車の交通違反に反則金を科す、いわゆる青切符の導入です。改正道交法は、2026年(令和8年)までに施行される見通しですが、今回は、自転車に乗っていて、どのような交通違反をすると青切符となるのか、また反則金などについてもご紹介したいと思います。

 

自転車に関する主な改正項目

① 青切符を自転車に適用

青切符とは、正確には、交通反則通告制度といい、運転者がした一定の道路交通法違反行為について、反則した者が通告を受けて反則金を納付した場合は、公訴が提起されない(=刑事裁判にならない)制度をいいます。

改正前では、自動車と原付バイク(原動機付自転車)が対象とされており、自転車を含む軽車両は対象外となっていましたが、昨今の自転車事故が増加していることに伴い、自転車についても青切符の対象とされます。

ただし、青切符の対象は16歳以上のため、高校生も対象となることに注意が必要です。

 

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青切符の対象とされる違反行為とは?

具体的に、どのような行為が違反となるのかについてですが、結論から言いますと100種類以上あります。ここでは、日常的によく見る光景を中心に違反行為の一部をご紹介します。

・ 信号無視

・ 携帯電話など使用しながらの運転(ながら運転)

・ 傘差し運転

・ 歩道走行

・ 二人乗り

・ イヤホンの着用

・ 歩行者妨害

・ 一時停止違反

・ 逆走

・ 飲酒運転

・ 遮断踏切立入

・ 無灯火

・ 駐停車違反

・ 歩行者や他の自転車の安全を脅かす行為 など

 

これら違反行為をした場合の罰則(反則金)は、5,000円から12,000円の支払義務が生じます。

 

② 車道を走行する自転車の安全確保の義務化

昨今の自転車事故が増加しているのは、対歩行者だけではありません。対自動車でも事故は起きています。こうした自転車と自動車との事故は、主に自転車右側部分の接触が多いため、自転車と自動車双方が安全な速度で進行することを義務づけられます。

これに違反した場合も罰則が設けられる予定で、自転車に5万円以下の罰金、自動車に3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される見込みです。

 

③ 携帯電話使用と酒気帯び運転の罰則を新設

今回の改正により、酒酔い運転、酒気帯び運転、あおり運転などの妨害運転、スマホなどの使用で危険を生じさせた場合について、新たに罰則が設けられます。

酒酔い運転(5年以下の懲役または100万円以下の罰金)

酒気帯び運転(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)

あおり運転などの妨害運転(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)

スマホなどの使用で危険を生じさせた場合(1年以下の懲役または30万円以下の罰金)

 

これらの行為をすると赤切符が交付されます。赤切符は青切符とは異なり、納付するのは反則金ではなく罰金となり、刑事事件になりますので取調べを受けることになります。その後、検察庁へ送致され、起訴か不起訴かの判断がなされます(この時点で前歴はつきます。)。罰金刑に処されたり、あるいは公判請求されて正式な刑事裁判となり有罪判決を受ければ、前科となります。

 

反則金を納付しないと?

一般的な刑事手続の流れは、簡単に言いますと、窃盗や暴行などの疑いがある場合に、警察によって捜査が開始されます。その後、警察から検察庁に送致され(マスコミ用語的に言えば書類送検)、検察官によって起訴するか、不起訴にするかを判断します。起訴となった場合は、刑事裁判にかけられ、有罪(懲役や罰金)か無罪か裁判所で審理されます。

なお、送致されただけでは前科はつきませんが、前歴はつきます。前科は有罪判決が確定したときにつきます。

 

さて、交通反則通告制度(青切符)の場合、道交法に反する行為があった場合、まずは警察官によって反則告知(反則金納付を通告)されます。

通告を受けた日の翌日から起算して10日以内に、反則金を納付した場合は、違反者に対する刑事裁判(未成年者の場合は家庭裁判所による審判)は行われません。

しかし、反則金を納付しなかった場合、あくまでも反則金の納付は「任意」であるため、警察は刑事手続による処理をすることができます。つまり、先ほどご紹介した一般的な刑事手続の流れを踏むことになります。

 

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赤切符の交付もあり得る

今回の改正とはあまり関係はありませんが、警視庁は2022年10月より自転車の交通違反に対する取り締まりを既に強化しています。つまり、それまで警告で済ませていた違反行為であっても、赤切符を交付されることがあります。

重点的に取り締まりが強化される行為は、信号無視一時不停止右側通行徐行せずに歩道通行、の4つです。加えて、先ほどご紹介した酒酔い運転など赤切符の対象となります。

これらに違反し赤切符が交付された場合は、青切符のような反則金制度はありません。取調べを受けて、検察庁に送致(書類送検)されます。

 

自転車を運転し事故を起こしたら道交法違反だけでは済まないケースもある(まとめ)

今回は改正道路交通法について、新設される自転車に対する青切符の適用などをご紹介しましたが、もし自転車を運転し、歩行者にケガを負わせた場合は、刑事上では過失傷害罪(刑法209条)や過失致死罪(刑法210条)の責任を負うことがあります。

また民事では加害者として、被害者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

過去の判例では、高校生が夜間に携帯電話を操作しながらかつ無灯火で走行していたところ、前方を歩行中の女性と衝突し、その女性に重大な障害(手足のしびれや歩行困難)が負ったという事例では、5000万円の賠償金額が認められたケースもあります。

いずれにしろ、自転車を運転する際には、交通ルールを遵守しなければなりません。また、自転車に乗る方は、自動車保険等に付帯する個人賠償責任保険に加入しておくと、自転車での事故にも保険を利用できる可能性があります。
ハンドルを握れば、道交法違反のみならず、様々なリスクを負っていることになりますので、くれぐれもご注意ください。

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