動物を虐待しているのではないか?~こんな時どうする?刑事告訴・告発
刑事告訴と刑事告発という手段が考えられる
刑事告訴とは、被害者や被害者の親権者などの告訴権者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して犯人に刑事責任を求めることをいいます。
一方で、刑事告発とは、告訴権者と犯人以外の第三者が、捜査機関に犯罪事実を申告して犯人に刑事責任を求めることをいいます。
このように刑事告訴と刑事告発の違いの一つに、誰が告訴または告発できるかという違いがあります。
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動物虐待に対する刑事告発
刑事告発の例として、動物虐待を挙げてみます。
動物虐待の場合、虐待の被害を受けているのは勿論動物です。しかし、法律上、動物は「物」の扱いであるため、被害者にはなり得ず、よって刑事告訴をすることができません。
そのため、動物虐待が行われていることを認知した第三者が刑事告発という形を採って、捜査機関に対し、虐待している人に刑事責任を求めることになります。
動物虐待における犯罪行為
動物を虐待することは常識的にも当然あり得ないことではありますが、動物愛護法上では、愛護動物に対して以下の行為につき罰則が科せられます。
・ 「みだりに殺し、又は傷つけた」(法44条1項)
→5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
・ 「みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行った」(法44条2項)
→要するに、殴る、蹴る、熱湯をかける、暴力を加える、酷使するといった有形力の行使のみならず、身体に外傷が生じるおそれのある行為、心理的に恐怖を与える行為も含まれるほか、健康管理をしないで放置したり、世話を放置するといったネグレクトを行うことです。この場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
・ 「遺棄した」(法44条3項)
→1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
動物虐待で刑事告発するときのポイント
動物虐待で刑事告発をする際には、虐待をしている者が、先ほど紹介した犯罪行為に当たる行為をしているという告発事実を指摘した上で、証拠が必要となります。
具体的にどのような証拠が必要か?
揃えるべき証拠としては、虐待行為が行われているときの状況がわかるものとして、犯人が映っていて実際に虐待をしているところが収められた動画が最たる例でしょう。
虐待をしている人を特定する必要あるか?
被疑者不詳は、刑事告発の受理・不受理に大きく関係はしません。虐待をしていると思われる場所は特定できると思いますので、最低限の情報として告発状に記載しても良いでしょう。
なお、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務として動物虐待等が行われた場合は、虐待行為を行った本人のみならず、法人も処罰対象となります(動物愛護法48条)ので、法人ぐるみで虐待が行われているのであれば、法人も刑事告発の対象となり得ます。
動物虐待の可能性を感じたら
動物虐待は人の虐待以上に見つけにくいです。動物はケガをしても病気を患っていても、それを自分で人間に伝えることはできません。
しかし、動物は、法律上「物」ではありますが、動物にも命があり意思があります。
人と同じように、虐待から動物を守ることができるのは周りに住む人間だけです。
もし動物虐待を見つけたら、躊躇うことなく警察や最寄りの自治体にある動物愛護センターへ相談しましょう。
なお、獣医師は、その業務を行うに当たって、虐待を受けたと思われる動物を発見したときは、遅滞なく、都道府県知事その他の関係機関に通報する義務があります。