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賃貸人が死亡したとき、借地権者は何をしたらいいの?

Q 私は、長年土地所有者から土地を借りて、その土地上に建物を建てて暮らしていました。先日、地主が亡くなったとの知らせを聞き、今後の私の暮らしはどうなるのか不安に感じています。

 地主の相続人が新たに地主となる場合でも基本的に何もする必要はありません。従いまして、引き続きその建物で暮らすことができます。

ただし、引き続きその土地上にある建物で暮らし続けるためにはいくつか確認すべきポイントがあります。

 

地主が死亡した際に借地権者が確認すべきこと①

登記の有無

一般的に、借地権というと、建物所有を目的として、土地を借りるための権利をいいます。そして、借地権には大きく分けて地上権賃借権があります。

地上権とは、簡単に言いますと、建物や工作物を所有するために他人の土地を使用する権利をいい、地主に登記義務があること、地上権を第三者に譲渡する場合に地主の承諾が必要ないこと、抵当権が設定できること、に主な特徴があります。

一方、賃借権(一般的に借地権と言うと土地賃借権のことを言います。)は、通常登記されず、賃借権を譲渡する際には地主の承諾が必要で、抵当権を設定できないところに特徴があります。

 

このように土地賃借権は、登記の義務はないため、実務上登記されないことがほとんどです。しかし、地主と借地人が協力すれば任意で登記することができます。

土地賃借権を登記するにあたって、借地人のメリットとしては、地主以外の第三者に借地権を対抗することができる点にあります。第三者に対抗するとは、例えば賃貸人(地主)が土地を売却して所有者が変わるような場合に、自分(借地人)が権利者であることを主張することができます。

ただし、土地の賃借権はその土地上に登記されている建物を賃借人(借地人)が所有している場合には、土地の賃借権がなくても第三者に対抗することができます。

そのため、まずは登記の有無を確認し、仮に万が一建物について未登記であれば権利主張のためにも登記することをお勧めします。

(なお、2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知ったとき又は遺産分割協議が整ったときから起算して3年以内の相続登記申請が義務付けられていますので、注意が必要です。)

また、長年というと借地権の存続期間が問題となり得ます。借地権の存続期間は30年で、合意で30年以上の期間に定めることもできます。更新の場合は、1回目の更新は期間20年、2回目以降は10年となります。

登記の確認とともに、契約書などから借地権の存続期間を確認しなければならないこともあります。仮に契約関係が不明、契約書がないのであれば、新たに作成し直すことも一考です。

 

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♦ 2024年4月から相続登記が義務化されます。

 

地主が死亡した際に借地権者が確認すべきこと②

地代の支払先

この土地を借り続けて、今後も建物に住み続けるというお考えならば、地代を今後どこに支払えば良いのかを確認しましょう。

地代を支払ってこその借地権ですので、支払先がわからないから何もしないでいると、賃貸借契約を解除される可能性があります。契約を解除されると、借地権者は建物を自費で撤去して立ち退かなければなりません。場合によっては裁判にまで発展する可能性もあります。

もし支払先が不明であれば、法務局の供託手続を利用することができます。

 

借地人がとりうる行動

確認すべきことは基本的には以上の通りですが、その他にも借地人が採り得る手続はいくつかありますので、簡単にご紹介します。

 

借地権の売却

借りている土地の借地権は売却することが可能です。ただし、土地を借りている立場である以上、地主の許可なく売却することはできません。必ず地主からの承諾が必要となります。

あまり売却に拘りすぎると、地主との関係が悪化し、地主の承諾に代わる裁判所の許可を求めるために裁判(借地非訟)にまで発展するケースがあります。そうなると、時間や費用が多く必要となりますので、本当に売却なのかよくよく検討してからが良いでしょう。

勿論売却先は第三者だけでなく、地主も含まれます。地主が借地権を買い取る場合には金銭面で問題となることがあります。通常、地主は借地権を買い取るメリットも義務もないので、金額面で折り合わなければ売却の話は進まないでしょう。

 

建物買取請求権の行使

借地上の建物解体費用がかかるというような場合は、建物買取請求権を行使するという方法もあります。これは、地主に対して建物を時価にて買い取るよう請求できる権利であり、借地契約が更新されない場合や、借地上の建物を第三者に譲渡した際に、地主が賃借権の譲渡に同意しない場合に行使するのが一般的です。

土地の賃貸借契約を解除されると建物買取請求権を行使することができません。それどころか解体費用を負担して土地を原状に復さなければなりません。

借地権の存続期間満了まで地代を支払い続けた後に建物買取請求権を行使することも考えられますが、建物の価値は年々減少しますので、建物買取請求権を行使した時点で、支払った地代以上の利益を得られる場合はほとんどないでしょう。

 

借地上の建物を第三者に賃貸して、賃料収入を得る

賃貸物件として出すことも考えられます。

ただし、賃貸に出せる状態にしておかなければならず、場合によってはリフォームをしなければ出せないというようなケースもあります。またリフォーム内容によっては地主の許可が必要になる場合もありますが、借地契約に増改築禁止特約が付されていない場合には、原則として借地人が自由にリフォームできます。

この方法による場合は、賃貸物件として価値が相当高いこと、支出した費用分を賃料収入から回収できる見込みが相当程度高い場合でなければ、現実的ではないでしょう。

 

まとめ

地主が死亡した場合の土地借地権について、借地人の立場から確認すべきポイントについてご紹介しました。

借地人としては、地主側の相続が発生しても基本的に何もすることはありませんが、登記の確認や地代の支払先などを確認することで、後のトラブルを回避できることがあります。

また地主であった被相続人と長年にわたる付き合いがあり、土地の賃貸借契約関係や登記のことなどなあなあになっているケースもありますので、相続人との方と協力しながら今一度見直すことをお勧めします。

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