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発信者情報開示に係る意見照会書に同意すべき?不同意?無視するとどうなるの?

当事務所では、発信者情報開示を請求する側のみならず、請求された側(突然プロバイダから発信者情報開示に係る意見照会書が届いた側)からも多くの相談が寄せられています。

意見照会をされる覚えがない方もいれば、照会書に書かれている内容から覚えがあるという方もいらっしゃいます。

プロバイダからの発信者情報開示請求に係る意見照会書に書かれてる内容は、一般的に「弊社は、情報の流通により権利が侵害されたと主張される方から、発信者情報の開示請求を受けました。つきましては、プロバイダ責任制限法6条1項に基づき、弊社が開示に応じることについて、お客様のご意見を照会いたします。」というような文言から始まり、回答書が添付されています。

その回答書には、基本的に、開示することに同意か不同意かの欄が設けられています(プロバイダによって様式は異なる場合があります。)。

では、このような意見照会書が届いたとき、同意した方がいいのか、不同意(開示拒否)にした方がいいのか、それとも無視してしまっていいのか、についてご紹介します。

なお、意見照会書が届くタイミングについては、過去のコラムでご紹介していますので、ご参照ください。

 

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同意するとどうなるか

意見照会書の内容を確認し、誤りがなく、ご自身で覚えがあって、(あまりないと思いますが)ご自身の個人情報を開示請求者に開示することに抵抗の無い場合には、情報の開示に同意する旨を回答します。

他方、ビットトレントにおける著作権法上の「公衆送信権」や「送信可能化権」などの侵害行為については、客観的証拠が非常に堅く、不同意にしても基本的には開示されてしまいますので、この場合で弁護士に依頼済みの場合には同意で提出することもあります。

同意した場合は、プロバイダから請求者に伝えられ、発信者情報開示請求者にご自身の氏名住所などが開示されます。

そうすると、今後の手続としてどのようなことが考えられるかというと、なんとなく想像つきますでしょうか。

請求者からご自身に損害賠償請求されることになります(ただし、まずは相手方の代理人弁護士からの内容証明郵便が届くケースがほとんどです。)

 

「同意する」のが最善の選択肢の場合は限定的

損害賠償請求か刑事告訴か、どちらの手続を選択するかは請求者の選択です。

そのため、損害賠償請求や刑事告訴がされた場合の対応を見据えて、弁護士に相談し、謝罪や示談を行うことを考える必要があるでしょう。

ただし、回答を提出する前に弁護士にご相談ください。

開示を争える内容であれば、回答書の代筆のみ弁護士に依頼し、こちらの主張がとおればそれ以降の手続に進まずに済むケースも少なからずございます。

 

不同意(開示拒否)にするとどうなるか

意見照会書の内容に身に覚えがない、または請求者が主張する権利侵害の明白性が認められないなど主張すべき理由がある場合には、不同意(開示拒否)としておいた方が良いでしょう。

権利侵害の明白性については、主に①名誉権、②プライバシー権、③著作権、④肖像権等の各侵害の主張が請求者からなされます。

不同意(開示拒否)した後は、プロバイダの方で、その回答を踏まえ、プロバイダとして任意に開示するかを判断します。

プロバイダの判断により回答者(意見照会書上では発信者と呼ばれることが多い。)が不同意(開示拒否)したとしても、投稿内容が明らかに権利侵害にあたるなど開示が妥当と判断された場合には、今後の手続として同意した場合と同様の手続が考えられます。

一方で、プロバイダにおいて不同意(開示拒否)と判断した場合は、請求者に伝えられ、請求者において、別の裁判手続(発信者情報開示命令など)が採られる可能性があります。

そして、不同意との回答に添えて提出した反論内容や証拠類は、開示請求裁判内でも証拠として用いられ、プロバイダ側がそれらの資料を元に反論して戦ってくれる仕組みですので、回答理由は非常に大事です。

その別の裁判手続で、プロバイダの開示に応じないとする主張が認められなかった場合は、請求者に開示されることになりますが、主張が認められた場合は請求者に開示されません。またこの別の裁判手続に回答者(または発信者)は関与することはありません。

 

できること

権利侵害の明白性が認められないことを法的に主張していくことはなかなか時間的にも精神的にも困難を極めます。一般的に、意見照会書が届いてから回答までに期限(2週間)を設けられますので、その間に主張を整理し、必要であれば証拠も添付しなければなりません(ただし、この期間は事前にプロバイダに対して書面で期間伸長を連絡すれば、多少期間を伸ばしてくれる事がほとんどです。)

また法的に無意味な主張をしたり、誤った解釈で主張したような場合には、たとえ不同意であってもプロバイダの判断によって情報が開示される場合もあります。

「記憶にありません。」のような一行二行の理由を書いて出す方もおられますが、このような回答でははっきりいって何の意味もありません。

きとんとした法的な主張立証をし、請求者に開示されないためにも、意見照会書に対する回答に経験豊富な弁護士に相談・依頼することが重要となるでしょう。

 

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無視していいのか?

同意、不同意、無視、この3つの中で最もやってはいけないことが「無視」です。

無視すればプロバイダに一任することになり、プロバイダの判断で開示することができるのはお伝えした通りです。それなら、結局、同意したと同じと思われるかもしれませんが、同意するしないにしても、積極的に対応をしていかなければ事態がより深刻化することになりかねません。

同意するなら、請求者と示談交渉をできる可能性が高まりますし、不同意なら明確に主張することで開示を拒否することができます。

無視するということは、これらの可能性を自ら切り捨てることなのです。

 

意見照会書に対する回答書でお困りなら弁護士にご相談を

ここまで発信者情報開示請求に係る意見照会書に対する回答について、同意または不同意にするとどうなるか、無視してもいいのか、をご紹介しました。

お伝えした通り、同意した場合であっても、交渉により請求者からの損害賠償請求や刑事告訴を止めることができる可能性がありますし、不同意であれば開示されないよう法的な主張立証を尽くしていくべきです。

このような手続は専門的な知識が必要となりますので、意見照会書に対する回答方法でお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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