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SNSでのなりすまし被害に対する法的対処

はじめに

インターネットを介したトラブルの一つに「なりすまし」をされたという相談が多く寄せられています。

なりすまし被害に遭ったときは、パニックになって、どうすればいいのか不安になるうえに、憤りさえ感じるでしょう。

しかし、急いては事を仕損じます。なりすまし被害に対しては、できることから対応していくのが基本です。

 

なりすまし被害は刑事事件

なりすまし行為自体が直ちに犯罪になるとはいえない

なりすましとは、SNSなどで本人と偽ってアカウントを作成したり投稿したりと、まるで本人であるかのように、他のユーザーとコミュニケーションをとる行為をいいます。

本人のアカウントを奪ってなりすましをしている場合には、不正アクセス禁止法違反行為の一つに挙げられます。多くのケースでは本人の氏名と写真を無断で使用してなりすまします。

しかし、本人のアカウントを乗っ取ったわけではないなりすまし行為自体を罪とする犯罪はありません

ただ、なりすまし行為を原因として違法行為に発展したり、なりすまされた被害者に損害が生じた場合は、法的対処が必要になる可能性があります。

 

不正アクセス禁止法違反

では、なりすまし行為によって成立し得る犯罪は様々ありますが、その内の一つである不正アクセス禁止法違反についてご紹介します。

不正アクセス行為とは、他者のコンピュータシステムへ無断でログインしたり、パスワードを不正に入手して不正に利用できる状況をつくる行為(アカウントの乗っ取り行為)を言います。

不正アクセス禁止法では、このような不正アクセス行為を禁止し、これに違反した場合は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされており、被害者に損害が生じていなくても、処罰の対象となります。

 

 

不正アクセス行為自体は発信者情報開示請求の対象外

当事務所でもなりすまし被害に遭い、その人物を特定したいので発信者情報開示請求のご相談がよく寄せられます。

しかし、なりすました人物を特定するためには発信者情報開示請求も一つですが、開示請求をするためには、権利侵害の明白性(情報の流通によって自己の権利が侵害されたことが明らかであること)や発信者情報の開示を受ける正当な理由があること、などが必要です。

不正アクセス行為自体は、権利侵害があるとは言い難く、なりすまししている者に対して開示請求する場合には、無断でなりすましアカウントから本人の社会的評価を下げるような投稿がなされている等が必要です。

また、不正アクセス(なりすまし)されたというだけでは(具体的な権利侵害がない)、発信者情報の開示を受ける正当な理由があるとも言い難いところがあります。

したがって、なりすまし被害を受けただけでは発信者情報開示請求をして、なりすました人物を特定することは難しいといえます。

このように、なりすまされた、アカウントを乗っ取られたのみ(権利侵害が明らかでない)では、発信者情報開示請求を行うことは弁護士としては難しく、加害者が特定できない状況では、弁護士が行う法的対処は限定的であるといえます。

逆に言えば、例えば自分の名前と顔写真を用いてなりすまされて、個人情報や誹謗中傷の投稿がされたというように自分に被害が及んでいるような場合は、権利侵害の明白性が認められる可能性がありますので、発信者情報開示請求を行うことになります。

 

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なりすまし被害はまずは警察に相談

では、こうしたなりすましによる不正アクセス被害に遭った際は、システム的・技術的対応が必要になりますので、まずは最寄りの警察に相談しましょう(弁護士はこうしたシステム的・技術的な対応はできません)。

現在では、不正アクセスといったサイバー事案に関する通報等のオンライン受付窓口も設けられています。

この他、サイト管理者へ通報したり、当該アカウントの削除要求、友人などに注意喚起を行うことも被害対応の初動です。

なりますしやアカウントの乗っ取り被害は、実際に損害が生じていなくても、不正アクセス行為で罪に問える可能性があります。

被害を把握すると多くの場合パニックになって、何から対応すべきかわからないことが多いと思います。しかし、ご紹介しました通り、自分でできることはありますので、まずはそこから着手していき(警察に相談や注意喚起など)、実際に損害が生じたような場合は弁護士に相談することをお勧めします。

 

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