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債権回収に刑事告訴は有効な手段なのか?

債権回収は、債権者が、期限通りに支払われなかった債権を回収するために法的手段も含めて行動を起こすことをいいます。

一般的に、債権回収の実現を図るためには、任意や差押えなどの裁判手続がありますが、刑事告訴もその手段として有効なのでしょうか。

 

債務不履行自体は犯罪ではない

まず結論を申し上げると、そもそも債務者がその債務を履行しないことは犯罪ではありませんし、それを取り締まる規定もありませんので、刑事告訴を行うことはできません

債務不履行はあくまで民事上違法な行為にあたるだけであり、それが刑事上の犯罪行為に当たるわけではないのが原則です。

 

 

 

 

債権回収のため刑事告訴が有効であるのか?

前提として、「売掛金を請求しても支払わない。」、「示談金を分割払いで支払うことに合意したのに滞っている。」というような理由で刑事告訴をすることは、原則としてはできません。あくまで民事の話だからです。

こうした債務不履行に対しては、訴訟や強制執行などで回収を図っていくのが一般的です

ただし、例外的に、債務者が強制執行を免れるために財産を隠したり、債権者を騙して金銭の借り入れを受けたりした場合はどうでしょうか。このような場合は強制執行妨害罪詐欺罪などで刑事告訴をするという選択肢が出てきます。もっとも、実務上、詐欺での告訴は非常に難しいのが実態です。

 

 

 

 

捜査機関は刑事告訴を民事事件の交渉材料とすることに難色を示す?

民事と刑事は別物です。それ故、刑事告訴が受理されたからといって、民事に良くも悪くも影響を与えるわけではありません

警察などの捜査機関は民事不介入ですので(例として、単なる協議上の離婚に警察は介入しませんが、そこに暴力やDVが絡む場合には、暴力という暴行又は傷害事件に関しては刑事事件として警察が扱う)、当たり前ですが、民事事件(債権回収)の交渉材料として刑事告訴をすることに難色を示します。

それに、債権回収の手段としての刑事告訴を受理してしまうと、もし債権者(被害者)において、債権の回収が図られたら、債権者(被害者)は刑事告訴を取り下げることになるでしょう。告訴を取下げなくとも、財産犯において全額の被害弁済がなされているのであれば、不起訴になる可能性が濃厚です。

そうなると、警察は受理後にはすでに捜査を開始していますので、刑事告訴取下げによって捜査を打ち切り、それまで費やした時間と労力は無駄に終わるため、そもそも告訴の受理に難色を示すということになります。

 

 

債権回収は裁判手続などで回収する

債権回収と刑事告訴との関係について、債権を回収したいのであれば、任意または裁判手続で回収を図っていくことが前提です。

そこに、詐欺罪横領罪強制執行妨害罪などが絡めば、特殊なケースとして、刑事告訴(強制執行妨害罪の場合は刑事告発)を検討することになります。もっとも、刑事告訴をするにあたっては、犯罪事実を客観的に裏付ける証拠が必要となります。

 

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債権回収と刑事告訴を行う場合は費用対効果を検討する必要がある。

債権回収と刑事告訴は別の手続であるため、多くの法律事務所または弁護士は、それぞれの手続で弁護士費用がかかります(詳細は各法律事務所への相談時にお尋ねください。)。

これらの手続を弁護士に依頼した場合、費用感としては、一般的に、債権回収の着手金は安くても20万円から30万円(請求に伴って連動するのが通常なので、請求額が大きければ大きいほど着手金は高くなる傾向にあります)、刑事告訴の着手金は40万円から(すべて税別)とされますので、民事刑事両方行う場合には、少なくとも60万円は着手金としてかかります。

加えて、債権が回収できたり、刑事告訴が受理された場合は、報酬金も発生しますので、場合によっては100万円以上を弁護士費用として支払わなければならない可能性すらあります。

たとえ、債権額がそれ以上であっても、債務者の資力状況などによっては全額の回収ができずに、結果的に、弁護士費用との費用対効果で言うと、赤字になるケースは少なくありません。

 

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