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LINEオープンチャットでの誹謗中傷に対して投稿者を特定するためには?

LINEオープンチャットとは

LINEヤフー株式会社がサービス提供するLINE機能の一つで、様々な話題、テーマについてLINEのIDを交換することなく、最大5000人まで同時にリアルタイムで会話することができ、プロフィールもチャットごとに設定でき、かなり匿名性の高いSNSサービスです。

知らない人たちが多数集まって会話するLINEグループのようなイメージです。

 

本人の同意がない限り、外部からの情報提供に応じない。

LINEは特にプライバシー性が高く、弁護士の権限で行える弁護士会照会(23条照会)にも基本的に応じないため、トーク内で誹謗中傷の被害に遭い、任意で運営元であるLINEヤフー株式会社に発信者情報開示請求を行ったとしても、本人(加害者)の同意がない限り、原則として請求に応じません。

ただし、例外的に、警察などの捜査機関による捜査であれば、必要な範囲で応じることはあります。

 

任意で発信者情報開示の請求をするのは不可能

そうすると、誹謗中傷した相手が任意での発信者情報開示に同意することは事実上ほとんどあり得ないので、裁判手続によらない発信者情報開示請求の他の手段としては、弁護士による弁護士会照会か、捜査機関に相談をして刑事事件として立件してもらう、のどちらかになるでしょう。

ただし、既に述べたとおり、注意が必要なのが、弁護士会照会であっても、LINEヤフー株式会社は原則通り本人の同意がない限り照会に応じることはありません

したがいまして、本人の同意を得ているか、捜査機関による捜査でない限り、任意で発信者情報開示請求を行うことは現在の運用上、不可能です。

 

そもそもLINEオープンチャットの誹謗中傷で発信者情報開示請求できるか?

開示請求権が認められるための要件がある

以前のコラムでもご紹介しましたが、発信者情報開示請求権が認められるためには、いくつかの要件が存在します。

特に裁判手続でよく争点となるのが、①特定電気通信による情報の流通がなされたこと、②情報の流通によって自己の権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)という要件になります。

 

特定電気通信による情報の流通がなされたこと

これは不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信をいいます。

LINEオープンチャットの場合、最大5000人まで同時にリアルタイムで会話することができることから、この要件に当てはまるといえます。

ただし、オープンチャットの公開設定によっては、この要件に当てはまらず発信者情報開示請求の対象外となることがあります。

 

 

権利侵害の明白性

問題となる投稿が侵害している権利によって異なりますが、例えば、名誉毀損を問題とする(名誉権が侵害されている)場合、情報の流通によって自己の権利が侵害されたことが明らかであること(権利侵害の明白性)の要件を満たすには、同定可能性(投稿内容がその人のことを指していること)、投稿内容がその人の社会的評価を低下させることが明らかであること、そして、違法性阻却事由をうかがわせる事情がないことの3つを満たさなければなりません。

 

 

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裁判手続による大まかな流れ

さて、LINEオープンチャットで誹謗中傷の被害を受け、投稿者を特定するためには、一般的に裁判手続によるほかないことはお分かりいただけたかと思います。

では、裁判手続がどのように進むのか、投稿者を特定するまでの流れについて簡単にご紹介します。

 

 

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LINEヤフー株式会社に対するIPアドレスの開示請求

まずは、投稿に使われたIPアドレス(ネット上における住所のようなもので、各デバイスに割り振られた識別番号のこと)とタイムスタンプ(投稿した時刻に関する記録)を取得します。

これらは、LINEヤフー株式会社が保有していますので、LINEヤフー株式会社に対して、これらの情報の開示を求めます。

 

 

契約者情報の開示請求

LINEヤフー株式会社からIPアドレスの開示を受けたら、Whois検索などにより、アクセスプロバイダを割り出し、アクセスプロバイダから契約者の情報の開示を請求します。契約者の情報が開示されたら、損害賠償請求を行うことになります。

 

 

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サイト管理者や通信事業者の抵抗

LINEヤフー株式会社もそうですが、全てのサイト管理者や通信事業者が発信者情報開示請求に応じる姿勢を見せているわけではありません。

発信者情報開示請求の手続上、その相手方となるサイト管理者や通信事業者には、開示請求手続に抵抗する機会が与えられています。

誹謗中傷の被害者からすれば、「サイト管理者などは何も関係ないじゃん。ただ投稿者の情報を開示してくれればいいのに」と思われるかもしれませんが、サイト管理者や通信事業者側も一企業である以上ユーザーの匿名性を守る必要があるのです。

例えば、仮処分命令の場合は、裁判所からの仮処分決定に対して保全異議保全抗告するケースがあります。また開示命令では異議の訴え即時抗告の制度があります。

 

 

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まとめ

LINEでの誹謗中傷に関しては、運営元がかなり厳格な対応を見せているので、任意での発信者情報開示請求は難しいといえるでしょう。

しかし、オープンチャットに関しては、権利侵害の明白性が認めれれば発信者情報開示請求の対象にはなり得ます。

その際には、LINEに限ったことではありませんが、ログ保存期間にも注意する必要があります。

これらのことは、裁判手続も含めて自力で行うのは専門性が高いため困難です。LINEオープンチャットで誹謗中傷を受けた際には、まずは証拠となる投稿をスクリーンショットで保存しておき、投稿から早い段階で弁護士にご相談されることをお勧めします。

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