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特別受益の裏付けとして使える証拠とは?

特別受益とは

被相続人から遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた場合、その受けた特別な利益のことをいいます。

特に裁判上争いになることが多いのは、生計の資本として贈与を受けたかどうかです。

一般的に、農地贈与や子の住宅購入費など生活基盤になり得る財産上の給付は生計の資本として贈与を受けたと認められやすいですが、実際の判断は、その贈与が当該親族間の扶養としての範囲を超えるかどうかでなされます。

 

 

相手方が特別受益を認めない場合には証拠が必要

では、相続人間で、一人の相続人に特別受益があると主張する場合、その相続人が素直に特別受益と認めれば、その相続人は先に相続財産をもらったものと評価して、相続分を計算します。しかし、相手方が特別受益を否認した場合、その相続人(相手方)に認めさせ、または裁判所に判断・認定してもらうためには、証拠が必要となります。

 

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特別受益の証拠になり得るもの

現金預金が贈与されていた場合

現金預金の場合は、被相続人名義の銀行の通帳や取引履歴が証拠になります。取引履歴は、銀行にもよりますが、相続人であれば必要な書類を持参の上、過去10年分は取得することができます。取引履歴取得費用や取得可能期間は金融機関によって異なりますので、詳細は、被相続人が有していた銀行支店に問い合わせた方が良いでしょう。

現金で手渡している可能性もありますので、その場合は、高額な現金が引き出された直後に、相手方が不動産や車などを購入していないか確認しましょう。それらをリンクさせることができれば、特別受益として認められる可能性が高まります。

 

不動産が贈与されていた場合

不動産の特別受益があると主張する場合は、当該不動産の登記事項証明書や不動産売買契約書などが証拠となります。

登記事項証明書や売買契約書は、不動産の所在地や権利者の情報などが記載されていますが、不動産を購入する費用を援助したような場合に特別受益を主張するときは、被相続人名義の通帳や取引履歴から、購入時期と照らし合わせて、現金の動きを確認します。

 

自動車が贈与されていた場合

不動産の場合と考え方は同じです。まずは車検証を確認しましょう。車検証には所有者名の他に、車検証が交付された年月日が記載されていますので、自動車を購入する費用を援助したというような場合には、被相続人名義の銀行取引履歴と照らし合わせて確認することができます。

 

学費の贈与がされていた場合

学費に関しては、基本的に学校に問い合わせることで納入履歴などを取得することが可能です。これについても学費が支払われた時期は大方判明できますので、取引履歴と照らし合わせます。

ただし、学費の場合、相続人である子ではなく、孫の学費に対して贈与が行われていることが実務上多いです。民法上、共同相続人に対する贈与や遺贈のみが特別受益として扱われるとされており、共同相続人ではない孫に対する贈与等は、原則としては特別受益にはなりません

生活費の贈与がされていた場合

取引履歴は勿論、クレジットカードの明細などから生活費の援助を受けていたと主張できる可能性があります。

ただし、仮に特別受益があったとしても、全てが認められるわけではありません。冒頭でもご紹介した通り、実際はその贈与が親族間の扶養としての範囲を超えているか、他の相続人との公平さ、援助総額、相続財産に対する割合などから、特別受益であるかどうかで判断されます。

 

借金の肩代わりをしてもらった場合

借入先が発行する完済証明書です。金融機関や会社によって対応が異なりますので、まずは問い合わせてみたほうが良いでしょう。完済日時と完済時にまとめて支払を行った額、それと対応する日時に被相続人の口座から同額の金員が動いていれば、特別受益として認められる可能性が高まります。

 

特別受益の証拠収集のポイント

これまでご紹介した通り、お金の動きに関しては取引履歴との照らし合わせが必須となります。そのため、相手方に特別受益があると主張する場合には、まずは取引履歴を取得するところから始めましょう。

その他特別受益の証拠になり得るものとしては、契約書・合意書被相続人のメモ・日記・手帳、被相続人と受遺者とのやり取り履歴といったものも証拠となり得ますので、被相続人の自宅を探してみましょう。

 

特別受益の主張は弁護士にご相談を

特別受益を主張する場合、どうしても感情的になってしまい、相続人間で遺産分割協議が進まないケースがあります。

そのような場合は、弁護士が窓口になることで、特別受益を主張するにあたって必要な書類の収集を任せることができますし、相手方との交渉もスムーズに行うことができます。

また場合によっては裁判(調停)手続にまで発展するケースがありますが、その場合でも弁護士に任せることで負担を減らすことができます。

相続、特に他の相続人に特別受益があることを主張したい場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

当事務所では、これまで相続に関する案件を多数扱ってきました。相続や特別受益に関してお悩みの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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