COLUMN

コラム

突然、家族が逮捕された場合における弁護士の役割の重要性について

逮捕される際のパターン

・ある朝、突然、自宅インターホンを何度も押され、出てみらた刑事が数人おり、そのまま家に入ってきて家族や恋人が警察に連れて行かれてしまった。その後、警察から電話があり、「逮捕しました。当分帰れません。」と話をされた。

・一人暮らししている子供と突然連絡が取れなくなり、携帯電話も電源がずっと切られたまま。LINEやメールの返事もない。その後、警察から電話があり、「息子さんを逮捕し、現在は●●署で勾留されています。」とのこと。事件の内容については細かく教えてくれないし、「接見禁止」がついているので警察署に行っても本人には会えないと言われた。どうしたら良いのか分からない。

 

通常逮捕の場合、家族が逮捕されたことを知るのは、上記のパターンが非常に多いです。

ご家族の方としても、急なことで頭が真っ白になり、どうしたら良いか分からなくなってしまっても仕方ありません。

他方、逮捕されている本人としても、(何度も覚醒剤等を使用して逮捕歴が複数回あるような場合でなければ)通常、逮捕は初めての経験であり、警察の苛烈な取り調べにどのように対応すれば良いのか、自分が今後どうなるのか、会社や学校にはバレていないのか、仕事を無断欠勤することになってしまうがどうしたら良いのか、ニュースになって報道されていないのか等、大変強いストレスと不安を抱えて、ご家族の方と同じく、頭が真っ白になっている状態です。

警察は、弁護士が付く前にいかに早く本人(被疑者)から自白調書を取るかに心血を注ぎ、本人が後で否認しても裁判で有罪判決を得られるだけの証拠を迅速に収集しようとしてきます。

そして、現在の日本の刑事裁判制度においては、一回でも自白調書に署名押印をしてしまうと、それを後からひっくり返すことは相当困難です。

それ故に、ご家族や恋人など、ご自身の大切な方が逮捕された場合には、すぐに弁護士に依頼し、本人に会いに行ってもらってください。

逮捕された場合、すぐに弁護活動を行えれば、捜査機関による身体拘束から身柄を早期に解放できる可能性のある段階がいくつかあります。

 

【逮捕された後の流れ】

通常、逮捕されると、最大72時間(3日間)までは身体拘束がなされます。逮捕時点から48時間(2日間)の間に警察が被疑者の取り調べを行い、残りの24時間(1日間)で検察官に被疑者の身柄を送ります。

検察官のもとに送られると、検察官による取り調べが行われ、更に長期間身柄を拘束して取り調べを行う必要があるか否かについて検察官が判断を行います。その結果、更なる必要があると判断すれば、検察官は裁判官に対して勾留請求を行います。

そして、検察官の勾留請求に対して、裁判官が勾留決定を行うと、10日間被疑者の身柄を拘束することができます。この勾留は1回延長することができ、更に追加で10日間の勾留が付くことが多く、実際には逮捕時点から起算して、最大23日間の身体拘束がされることになります。

そうなると、会社勤めをしている方であれば、仮に警察から職場に連絡が行われていないとしても、23日間も無断欠勤すればそれだけで懲戒解雇事由に該当する可能性が高いですし、その後無事釈放されたとしても、会社に対する合理的な説明がこの段階で既に困難となっているのはお分かりいただけるでしょう。

更に言えば、23日間の身体拘束後、検察官が「公判請求」(いわゆる、公開の法廷における通常の刑事裁判のことです)を行った場合、自動的に起訴後勾留というものが付きます。起訴後勾留は、保釈請求を通さない限り、判決言渡し期日まで続くのが通常です。

刑事裁判は初回期日が起訴からおよそ数週間から1ヶ月後に開かれます。そして簡易な事件であっても第1回公判期日で判決まで行われることは多くなく、第2回公判期日で判決文の言渡しが行われることが多いです。

そうなると、逮捕・勾留の23日間に加え、判決まで起訴後勾留として更に2ヶ月ほどはずっと留置場から出られないことになり、合計3ヶ月近くも外の世界に出てこれないことになります。

しかし、早期に弁護士に依頼すれば、最短3日間以内に解放されることも有りえますので、通常どおりその後会社に勤め続けることができる可能性も非常に高くなり、事実、会社に知られずに逮捕の影響を最小限に抑えられたケースも多くあります。

では、具体的に、どの段階でどのような弁護活動を行えば、捜査機関による身体拘束から身柄を早期に解放できる可能性があるのかについてご説明いたします。

上述の【逮捕された後の流れ】の中の各場面において、解放のチャンスがあります。

身体拘束からの解放のチャンス

具体的には、

第一に、逮捕直後の段階においては、検察官がまだ勾留請求を行っていない段階です。この段階で、担当検察官に対して、勾留請求をしないよう、勾留請求回避を求める意見書を提出することが出来ます。ここで、勾留の要件である罪証隠滅のおそれがないことや逃亡のおそれがないことなどを理解してもらえれば、実際に勾留請求を行わないでもらえる場合があります。ここでは具体的な資料を添えて検察官を説得する必要がありますので、長年会社勤めをしているであるとか、配偶者やお子様と共に生活しており、家も持ち家であるなどといった事情があれば、それらをすべて捨ててまで逃亡しないだろうということで有利に働く事情になります。また、一人暮らしであったり、別居している家族がいるが家族には知られたくないなどの場合には、弁護人が身元引受人になることもあります。

第二に、検察官が勾留請求を行ったとしても、裁判官に対して、勾留決定を行わぬよう、同様に資料を添えて上申書という形で、被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがなく勾留の必要がないことや勾留されることによる影響(会社の失職や幼い子供の世話をするものがいなくなるなど)を記し、捜査機関からの呼び出しがあれば必ず出頭するので勾留はしないよう求めることが出来ます。ただし、裁判官の勾留決定は比較的迅速に行われるため、次に説明する準抗告で争うのが本丸となります。

第三に、検察官が勾留請求を行い、裁判官が一旦は勾留決定を出したとしても、「準抗告」といって、裁判官の決定に対して異議を出す制度を利用し、裁判官の勾留決定を取り消してもらうという手段があります。

準抗告の申立においては、勾留決定を行った裁判官が行っても、自分の行った判断を自分で撤回するわけがないので、勾留決定を行った裁判官とは別の裁判体(裁判官3名の合議)が公平に判断を行うこととされていますので、ここでも実際に準抗告が認められ、勾留決定が取り消されるケースもあります。

弁護士がいないと、こちらに有利な事情は、警察は積極的には考慮してくれない

そして、大事なことは、ほとんどの場合において、捜査機関は勾留請求において、被疑者側に有利な事情については当然言及してくれませんので、被疑者側から自己に有利な事情(逃亡のおそれがないこと等)について具体的に主張してアピールしなければ、勾留決定の判断を行う裁判官にはそもそも被疑者に有利な事情や証拠が届くことはありません。

そこで、裁判官に、公正な判断をしてもらうためにも、弁護人を通して、被疑者に有利な事情や証拠という判断材料を提供する必要があるのです。

身体拘束からの早期解放が実現できるか否かで、大げさではなく人生が大きく変わります。

以上のように、逮捕された事案においては、何より早く弁護士を探し、初動対応を行うことが本当に大きく影響しますので、ご家族や恋人が突然逮捕された場合には、すぐにご相談ください。

※このような事件においては初動が大切なので、土日祝日問わず弁護士直通電話(080-3391-7938)を開放しております。電話と同時に、逮捕直後である旨を上記番号にSMSでも送付いただければ、すぐに対応できるよう努力いたします。

 

 

コラム一覧