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勾留決定に対する準抗告~早期の身柄解放に向けた弁護活動

準抗告とは

裁判官が下した決定に対して行う不服申立ての手続の一つが準抗告です。

手続としては抗告もありますが、抗告は裁判「所」の決定に対する不服申立てであるのに対し、準抗告は裁判「官」の決定に対する不服申立てを指します。

 

準抗告の対象となる裁判官の決定とは

準抗告は何に対しても不服申立てができるわけではありません。

準抗告について規定する刑事訴訟法429条には、「裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。」と規定し、「左の裁判」とは「1忌避の申立を却下する裁判 2勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判 3鑑定のため留置を命ずる裁判 4証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判 5身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判」となっています(刑事訴訟法429条1項)。

つまり、準抗告の対象となる裁判官の決定は法定されており、この中で特に弁護活動で最も問題になり、かつ申立が行われるのが「勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判」です。

 

 

 

 

逮捕から勾留までの流れ

準抗告の対象となる裁判官の決定に「勾留」がありますので、まずは逮捕から勾留までの一般的な刑事手続の流れを踏まえ、準抗告をどのタイミングで申し立てるのか見ていきます。

まず警察は逮捕後48時間以内に、被疑者の身柄と証拠類を検察官に送致します。

送致を受けた検察官は、送致を受けてから24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、引き続き身柄拘束が必要と判断した場合は、裁判官に対して勾留請求をします。
(ここまでで逮捕時から最大で3日間となります)

 

勾留請求には要件がある

検察官が勾留請求をする場合には、一定の要件を満たさなければ裁判官は認めてくれません。

勾留が認められるための要件は、①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、②定まった住居を有しないとき、③罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき、④逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき、⑤勾留の必要性、とされています(刑事訴訟法60条1項、87条1項)。

 

 

 

準抗告と早期の身柄解放のためのその他の手続

こうした検察官からの勾留請求に対して、裁判官が勾留決定とした後の不服申立てとして登場するのが準抗告です。

準抗告とは、裁判官が下した決定に対して行う不服申立ての手続ですので、勾留決定をした裁判官が所属する裁判所に対して申し立てることが必要です(東京地裁の場合は刑事訟廷事件係が受付です。)。

準抗告申立書には、勾留の要件とは逆に、定まった住所を有すること罪証隠滅のおそれがないこと逃亡のおそれがないこと勾留の必要性がないことを具体的にその個人個人の事情をふんだんに用いて記載していきます。

 

その他の弁護活動手続

勾留に対する不服申立ての手続は準抗告に限りません。

手続としては、勾留決定より前の検察官による勾留請求を阻止することをまず試みます。その場合は、勾留請求する前に、検察官に対し意見書を提出して、勾留の理由や必要性がないことを主張します

また勾留請求されたとしても、裁判官による勾留決定を阻止することもできることがあります。これについても同様に、意見書を提出したり、都合があえば直接面接したりして、裁判官に勾留の理由や必要性がないことを主張します。

さらに、勾留決定がされて実際に勾留された後でも、勾留の取消請求をすることもあります。

準抗告との違いは、準抗告が勾留決定に対する不服申立てであるのに対し、勾留の取消請求は勾留された後に、勾留の理由や必要性がなくなった場合にとる手続になります。

準抗告が認められる率は?

2021年版の弁護士白書によれば、2020年に裁判官の処分に対して申し立てられた準抗告は1万5347件、そのうち認められた件数は2907件で、認容される確率は約18.9%です。

準抗告が認められずに棄却されたら?

準抗告に連動した手続として、「特別抗告」があります。特別抗告は、憲法違反を理由に、最高裁判所に対して、準抗告に対する棄却決定に異議を申し立てます。

ただし、憲法違反を理由とするため、そのハードルは準抗告よりも極めて高く、特別抗告が通ることはほとんどありません。

 

まとめ

今回は勾留決定に対する準抗告についてご紹介しました。

準抗告はなかなか認められないことが多いのが実態ですが、可能性としてゼロではありません。

当事務所でも勾留決定に対する準抗告を申立て、認められたケースはあります。長期間の身柄拘束は被疑者の生活にも悪影響を及ぼしかねないので、早期の弁護活動のためにも、お早めに弁護士に相談することをお勧めします。

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