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従業員による横領が発覚したとき刑事告訴をすべきか否か

会社内での従業員による横領行為が発覚したとき、会社としてどのような対応をしたらよいのか迷われてしまうことはよくあります。

例えば、会社内規に基づく懲戒処分、被害金回収のための損害賠償請求、身元保証契約に基づく従業員の身元保証人に対する請求、取引先に対する説明などなど、会社としての対応は多くあります。

その中で、刑事告訴するべきなのか、した方がいいのかで迷われている代表者もいるかと思います。

 

 

業務上横領罪の構成要件・量刑・時効

業務上横領罪とは、業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処せられる犯罪です(刑法253条)。

 

構成要件

業務上横領罪が成立するためには、①業務上の占有、②他人の物、③横領行為、が必要となります。

①業務上の占有について、まず業務とは社会生活上の地位に基づき反復継続して行われるものをいい、占有とは事実的ないし法律的支配も含まれます。

つまり、業務上の占有とは、業務を有する者が、その業務の遂行として他人の物を占有していることをいいます。

次に、②「他人の物」についてですが、要するに他人の財産(財物)を意味しており、売買質入れといった③横領行為(こうした自分が占有する他人の物を不法領得の意思を実現する一切の行為)をすることで、業務上横領罪が成立します。

業務上横領罪の例としては、借金苦であったため、会社から預かっている又は会社が管理している物品を質入れ(換金)して借金返済に充てたり、成年後見人が成年被後見人の財産から現金を着服した場合などがあてはまります。

 

時効

業務上横領罪の公訴期間は7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。横領した時から7年経過すると検察官による公訴提起(起訴)ができなくなりますが、業務上横領という行為の性質上、毎回の横領行為ごとに時効が進行しますから、初回の横領行為が時効を迎えていたとしても、時効を迎えていない横領行為については刑事責任を問うことが出来ます。

なお、民事で損害賠償を求める際にも時効が存在します。民法上、業務上横領は不法行為に基づく損害賠償請求権を行使することになりますので、被害者が損害又は加害者を知ったときから3年間行使しないとき、又は横領被害のときから20年間行使しないときは時効によって消滅します(民法724条)

 

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会社従業員の横領行為が発覚したとき、会社としてまずすべき対応とは

まずは事実関係の調査と証拠集め

業務上横領罪の典型例は、会社従業員が会社の備品を質入れして、自分の生活費や借金返済に充てたというケースや、経理担当者が会社の口座から自分の口座に振り込んだケースが挙げられます。

このような業務上の横領行為が疑われる場合、又は横領行為が発覚した場合、会社としてまずどのような対応をすることが求められるでしょうか。

結論から言いますと、懲戒処分といった会社内規による処分、刑事責任の追及、民事上の損害賠償の請求が考えられますが、どの選択をとるにしても、まずは事実関係の調査証拠集めを行うべきです。

 

刑事告訴すべきか

その上で、会社として刑事告訴をするべきか迷った際に、刑事告訴した(する)場合のメリットとデメリットについてご紹介します。

 

メリット

刑事告訴は、犯罪事実を申告し、犯人に対する処罰を求める手続です。そのため、告訴状が受理され、警察による捜査の結果、被害金額が数千万円に及ぶなど甚大であり、かつ完全な被害弁済が行われていない場合には、前科前歴がない初犯のケースであったとしても、犯人に実刑(10年以下の懲役)が下る可能性は十分にあり、高額な被害金額であればあるほど懲役期間は長くなる傾向にあります。

また刑事告訴をすることで犯人にプレッシャーを与えることもできますし、捜査が進む過程で、犯人から示談の申入れといった効果もある程度ありますので、被害金額を回収できる可能性もあります。

さらに会社内部に対しても業務上横領に対する毅然とした厳格な会社の姿勢を示すことができますので、秩序が保たれ、再発防止につながることもあります。

 

 

デメリット

メリットのところでも挙げましたが、「刑事告訴=被害金全額又は一部の回収」ではありません。

業務上横領罪での刑事告訴はあくまで犯人に10年以下の懲役を食らわせるためのものであり、被害金の回収は直接的な関係に立つものではありません。きちんと被害金の回収を図りたい場合には、別途民事上の損害賠償請求を行うことになります。ただ、犯人の資力や被害金額によっては、満足的な被害の回復が図れない可能性は高いと言えます。

 

 

業務上横領被害に遭った際には弁護士にご相談を

業務上横領被害に遭われた際の会社の対応についてご紹介しました。対応の方針決定については、社長独断で行うことができる会社もあれば、社内協議で決める会社もあり、千差万別です。

特に会社内規として懲戒処分に付するとともに、刑事責任や民事で損害賠償を求めていくことになった場合、大変な労力となり得ます。

そのような場合含め、刑事告訴するべきなのか、そもそも会社としてどう対応したら良いのかお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

当事務所では、業務上横領に関連して、刑事告訴と被害金の回収を行った実績がございます。事実関係の調査方法や証拠の収集方法といったところも含めてアドバイス致します。

 

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