COLUMN

コラム

少年事件手続の流れ~成人とは異なる特有の手続

少年事件とは

成人による刑事事件では、逮捕・勾留されて、検察官が起訴か不起訴を判断し、起訴となれば刑罰が科される、という流れになります。

しかし、満20歳未満の少年による犯罪(非行)における手続は、成人による刑事事件とは異なっています。

(※ただし、18歳・19歳の少年は「特定少年」として引き続き少年法が適用されるものの、原則逆送対象事件が17歳以下の少年よりも拡大され、逆送決定後は原則として20歳以上の成人同様の扱いを受ける等、17歳以下の少年とは異なる取り扱いがなされます。)

少年事件においては、少年法の目的である「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調停に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」(少年法第1条)に従い、成人の場合とは異なり、少年の更生や保護を目的とする手続がなされます。

以上のような少年事件の目的から、対象となる少年事件は全件家庭裁判所に送致され(これを全件送致主義といいます。)、家庭裁判所調査官による調査が行われます。事案によっては少年鑑別所での鑑別も行われ、最終的に家庭裁判所での審判がなされます。

また、成人の刑事事件では、弁護人と呼称されますが、少年事件では家庭裁判所への送致後は「付添人」として関与していきます。

 

非行のある少年とは

少年事件の手続等に関して規定する少年法は、非行のある少年を対象としています(少年法1条)。ここでいう「少年」とは、20歳に満たない者をいい(少年法2条1項)、「非行のある少年」については、罪を犯した少年として犯罪少年、14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした触法少年、虞(ぐ)犯事由があってその性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある18歳未満のぐ犯少年、が規定されています(少年法3条1項)。

 

民法改正で成人年齢が18歳まで引き下げられたことの影響は?

結論としては、民法の成人年齢とは異なり、刑事事件としては18歳、19歳も「特定少年」として引き続き少年法が適用されます。

既に述べた通り、改正少年法では、18歳と19歳の少年については特定少年とされます。18歳19歳の特定少年が罪を犯した場合、民法上は成人ではあるものの、刑事事件手続上は特定少年として、逆送の範囲が拡大されていたり、保護処分に対する特例などが定められています。

更に、少年のときに犯した事件については犯人の実名報道や顔写真の報道が禁じられていますが、「特定少年」に関しては起訴された場合(但し略式起訴を除く)には報道禁止が解除され、実名報道が解禁されることになりました。

 

少年事件の手続~成人事件との違いも

少年が逮捕された場合、どのような手続を踏んでいくことになるのか、少年事件特有の手続についてご紹介します。

 

捜査段階

勾留は「やむを得ない場合」に限る

非行のある少年に対して、捜査段階では成人と同様、逮捕されますし、勾留もされます(14歳未満の少年は逮捕も勾留もされません。しかし、児童相談所への一時保護として身体拘束は受け得ます。)。

もっとも、少年事件では少年を勾留するための要件が成人の場合よりも厳しく定められています。

具体的には、少年を勾留する際には「やむを得ない場合」であるという要件が加重されています(少年法48条1項、43条3項)。

やむを得ない場合」とは、裁判例で、「刑訴法60条所定の勾留の要件を満たす場合において、当該裁判所所在地に少年鑑別所又は代用鑑別所がなく、あっても収容能力の関係から収容できない場合、又は少年の非行・罪質等から勾留によらなければ捜査の遂行上重大な支障を来すと認められる場合」を指すとされています(横浜地方裁判所昭和36年7月12日決定)。

 

 

 【関連記事】 👇こちらもあわせて読みたい
♦ 留置場での生活はどうなの?差し入れについても解説

 

勾留に代わる観護措置

もっとも、検察官は「やむを得ない場合」があって、少年を勾留できる要件を満たしていたとしても、勾留の請求に代え、裁判官に対して、勾留に代わる観護措置を請求するのが原則です(少年法43条1項、17条1項)。この場合、少年の収容場所は警察署の留置場ではなく、少年鑑別所に限られ、かつ、勾留期間の延長もありません。

裁判官も、検察官から勾留請求がなされても、自己の裁量によって勾留に代わる観護措置をとることができます。

 

家裁送致後審判前

観護措置(少年鑑別所)

捜査機関(警察や検察)が捜査を終え、家庭裁判所に事件を送致した後、家庭裁判所は、少年に対して観護措置をとるか判断します(少年法17条1項)。手続としては、付添人の立会いは法律上規定されていないため、専ら裁判官の裁量によって決められます。

観護措置決定となった場合、少年の身柄は少年鑑別所に送致され(保護者や付添人に通知あり)、実務上、通常は原則4週間(法律上、特に継続の必要があるときは更に2回の更新が認められているので、最大8週間)は収容されます。

少年鑑別所では、入所時調査、心理検査、健康診断を経て、鑑別方針が設定されます。また鑑別所内での行動観察も並行して行われ、最終的に鑑別結果通知書が家庭裁判所に送付されます。

 

在宅調査

観護措置決定とならなかった場合は、そのまま釈放となり、日常生活を送ることはできます。ただし、審判不開始とならない限りは在宅での調査になりますので、釈放されて終わりというわけではありません。

 

少年審判~少年事件における処遇決定

裁判官は、各処遇意見を確認した上で、少年に対する処遇を告知します。

少年が犯行を否認している等で非行事実に争いがある場合でなければ基本的には1回で終了しますが、裁判官の裁量で審判が続行されることもあります。

 

審判不開始

家庭裁判所による調査の結果、審判に付することができない、又は審判に付することが相当でない場合は、審判自体を開始しない決定をします(少年法19条1項)。

「審判に付することができない」場合とは、非行自体がなかったと認められる場合であり、「審判に付することが相当でない場合」とは、事案が軽微であったり、少年が十分に反省しており要保護性が既にない場合をいいます。

審判不開始となれば、事件は終了、身柄は解放されます。

 

不処分

不処分とは、保護処分に付することができないとき、又は保護処分に付する必要がないと認められるとき、になされる処分です(少年法23条2項)。

「保護処分に付することができないとき」とは非行自体がなかったと認められる場合であり、「保護処分に付する必要がないと認められるとき」とは、付添人や調査官によって保護的措置がとられた結果、要保護性がなくなり、再非行の可能性がなくなった場合をいいます。

不処分となれば、審判不開始と同様、身柄は解放されます。

 

知事または児童相談所長への送致

家庭裁判所が少年の要保護性を調査した結果、児童福祉法による措置を相当と認めるときは、都道府県知事又は児童相談所長に送致し、福祉的措置に委ねることもあります(少年法18条)。

都道府県知事に送致したとしても、手続上、最終的には児童相談所長に送致することになりますが、送致後は児童福祉司による指導や児童自立支援施設等への入所措置がなされます。

 

保護処分

保護観察

保護観察とは、少年を家庭等に置いたまま保護観察所の行う指導監督などによって、少年の改善更生を図ろうとする保護処分の一つです。

保護観察となれば一般的に民間ボランティアである保護司が担当となり、決められた遵守事項を遵守するよう保護司によって指導監督されます。

保護観察期間は通常20歳になるまでですが、多くは20歳になる前に保護観察が解除となります。

なお、遵守事項に違反した場合は、保護司から家庭裁判所に報告され(その他月1回の経過報告があります。)、児童自立支援施設等への送致少年院送致となることもあります(少年法26条の4第1項)。

 

 

児童自立支援施設又は児童養護施設への送致

児童自立支援施設等への入所は、多くが親の同意を得て児童相談所が行いますが、家庭裁判所も保護処分の一つとして、児童自立支援施設等への送致処分をすることもあります。またケースとしてはほとんどありませんが、児童養護施設へ送致されることもあります。

児童自立支援施設とは、不良行為をなした児童、不良行為をなすおそれのある児童、家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童に対して指導を行い、その自立を支援することを目的とした施設で、入所するか、通所するかはケースバイケースです。

他方、児童養護施設は、主に保護者のいない、虐待されている児童向けの施設で、非行少年に対する処遇を想定した施設ではないので、保護処分としてはとられることはほぼないでしょう。

 

 

少年院送致

生活指導、職業指導など非行性の矯正を行うことを目的として少年院に収容する保護処分がとられることもあります。(少年法24条1項3号)。

少年院での処遇期間は、特定少年以外であれば、一般的に、6か月の短期間、4か月の特別短期間、2年以内の処遇意見なし、として審判の際に告げられます(特定少年の場合は3年以内での収容期間)。

 

検察官送致

家庭裁判所は、死刑、無期または禁錮に当たる罪の事件について、刑事処分を相当と認めるときは、検察官に送致します(少年法20条1項)。これを逆送といいます。少年が犯罪時には20歳未満であったものの、家庭裁判所が処分を決定する際に20歳以上になっている場合にも、逆送の措置をとることが義務付けられています(少年法19条2項)。

故意の犯罪により被害者を死亡させた事件で、罪を犯したとき16歳以上の少年も原則逆送となります(少年法20条2項)。

また罪を犯したときに18歳以上の特定少年であった場合は、その罪が死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪の場合、原則逆送となります(少年法62条2項2号)。

 

試験観察

家庭裁判所は、保護処分を決定するため必要があると認めるときは、相当の期間、家庭裁判所調査官の観察に付することができます(少年法25条1項)。これを試験観察といいます。

審判日に直ちに保護観察処分をする要保護性が高いものの、更生の可能性があるといった場合になされる、いわば保護処分決定までの中間的な処分です。

更なる調査官の調査結果が良ければ保護観察や不処分、悪ければ少年院送致の処分となります。

 

最後に

少年事件では、皆さんがイメージする刑事手続ではないことがお分かりいただけたかと思います。成人の刑事事件では、逮捕、勾留、起訴又は不起訴、起訴であれば刑罰が科されるという流れになりますが、少年事件では、その背景に少年に対して刑罰を科するよりも、少年の健全な育成を期待し、非行のある少年に対して性格の矯正や更生に向ける少年法の目的に沿った複雑な手続となります。

しかし、全ての手続を網羅的に説明するのは難しいです。今回ご紹介した流れは、あくまで一般的な少年事件の流れであって、少年が触法少年なのか、虞(ぐ)犯少年なのか、それとも特例がある特定少年なのか、によって手続が変わるところもあります。

いずれにしろ、少年事件に携わる弁護人(付添人)、調査官、裁判官、保護司、児童福祉司などの関係者は、少年の矯正を願い、それぞれの立場からサポートする人たちです。

中でも保護者にとって、身近といえるのが弁護人(付添人)になります。少年事件の手続的なことで不安に思うことがありましたら、遠慮なく弁護人(付添人)に問い合わせましょう。

コラム一覧