電車内での押し付け痴漢は不同意わいせつ罪に問われる?偶然当たってしまったら?
目次
押し付け痴漢とは
一般的には、混雑した電車内など狭い空間において、性的欲求を満たすために相手の身体に自分の身体の一部(手の甲や下半身)を押し付けたり、密着させたりする行為をいいます。
一般的にイメージする痴漢行為といえば、被害者の身体を撫でまわしたり、揉んだりするものですが、押し付け痴漢であっても犯罪として処罰される可能性があります。
押し付け痴漢をすると、どのような罪に問われるのか?
以前は、下着の中に指を入れて被害者の性器をもてあそぶ行為は強制わいせつ罪、服の上から被害者の身体を触る、いわゆる痴漢行為は各都道府県の迷惑防止条例で処罰されるのが通常でした。
不同意わいせつ罪
しかし、令和5年の刑法改正によって、強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪が統合され、不同意わいせつ罪が新設されました。
これにより、例えば、陰部を露出して被害者の身体に無理やり押し付けるといった悪質な押し付け痴漢をした場合は、不同意わいせつ罪に問われる可能性があります。
不同意わいせつ罪とは、被害者が同意しない意思を形成、表明、全うすることが難しい状態でわいせつな行為を行う犯罪で、法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑になります(刑法176条)。
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迷惑防止条例違反
不同意わいせつ罪に問われなくても、各都道府県が定める迷惑防止条例違反に問われる可能性があります。
東京都の場合、「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れてはならない。」とされています(東京都迷惑防止条例第5条1項1号)。
つまり、押し付け痴漢のみならず痴漢行為全般について、迷惑防止条例違反に該当し得ることになります。その場合、6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられます。
当たってしまった場合でも押し付け痴漢になるの?
冒頭でも少し触れましたが、電車は走行中は揺れが生じます。その揺れによってバランスを崩し、何かに捕まらないと、と思って手を伸ばしたところ、たまたま偶然自分の手の甲が被害者の胸に触れてしまったというようなケースでも押し付け痴漢になるのでしょうか。
このように、電車の揺れや急停車の影響で意図せず他の乗客に触れてしまう可能性はゼロではありません。
ここで押し付け痴漢であると認められるためには、犯罪の故意が必要です。故意とは、平たく言えば、犯罪行為に当たる自らの行為を認識しつつその行為をしようと考える意思のことです。
つまり、電車の揺れによってたまたま手の甲が当たってしまったというようなケースでは、「さりげなく胸に触ろう」という故意もないですし、性欲を満たすために意図的に触れたわけではありませんので、電車の揺れなどの影響(不可抗力)によるものであって、押し付け痴漢とは認められにくいでしょう。
ただし、故意があったか無かったというのは実際のところ触れた人にしか分かりません。そのため、触れてしまった側がそのように認識していても、触れられた側は必ずしもその通りの認識になるとは限りませんし、相手方が警察に通報するなど被害を申告すれば、(後日)逮捕されることも有り得ます。
押し付け痴漢を疑われたとき、どう対応する?
自分では当たってしまった、故意ではない、不可抗力だったという認識であっても、相手は異なる認識をもつことがあります。
このような場合は、まずはっきりと「痴漢をしていない」と伝えるべきです。
また痴漢の場合は、多くは周りのお客様に迷惑になるので一度駅員室に来てくださいと言われますが、よほどのことがない限り、駅員室には行かない方がいいでしょう。現行犯逮捕扱いとなる可能性があるためです。
自らの身分を身分証明書や名刺等で明かし、逃亡のおそれがないことを示した上で、その場に留まり、すぐにその場から弁護士に連絡しましょう。
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押し付け痴漢は疑われる前に回避できる
電車の揺れなど不可抗力によって、押し付け痴漢に疑われかねないことはやむを得ないところはあります。
しかし、それ以前に押し付け痴漢など広く痴漢に間違われないようにするために、事前に自分で行える対処はあります。
例えば、乗車した際に不必要に異性の近くに立たない、吊革につかまるなど両手を高い位置にするなどは有効な対策でしょう。
電車を利用して混雑していれば、不可抗力によって押し付け痴漢に間違われる可能性はゼロではありません。必要な対策を講じて、万が一押し付け痴漢で疑われた場合は、すぐに弁護士に相談・依頼することで、逮捕を免れ、あるいは早期の身柄解放に向けた弁護活動をすることができますので、すぐに相談して下さい。
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