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こんな時どうする?|遺産分割協議の内容が守られない

相続が開始し、相続人が複数いる場合、遺産分割協議を行いますが、無事に遺産分割協議が成立しても、協議書通りに履行がなされないことがあります。

よくあるパターンとしては、協議書で約束したお金が振り込まれない不動産が引き渡されない、です。

このような場合、履行してもらうために、何ができるのでしょうか。

 

原則は成立した遺産分割協議を解除できない

そもそも履行されないのであれば解除して遺産分割協議書をなかったことにできるのでしょうか。一般的な契約であれば、相手方が債務を履行しなければ解除することができます。

しかし、遺産分割協議は異なり、原則として解除することはできません

その理由は、最高裁判例で、「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法541条によって右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。(中略)このように解さなければ民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。」と示されているからです。

 

 

例外的に遺産分割協議のやり直しが認められることもある

しかし、例外的に遺産分割協議をやり直すことができるケースもあります。

例えば、相続人全員が再度協議を行い、遺産分割方法を決め直した場合や他の相続人から騙された場合、そもそも相続人でない人が協議に参加していた場合などです。

 

協議内容を履行しない相続人に対してどう対応するか

原則として解除できない遺産分割協議の内容を履行してくれない相続人に対して、どう対応をするのが良いのでしょうか。

履行を求める

まずは履行するよう求めることです。求める際には、内容証明郵便などで相手に確実に求められていることを認識してもらうようにすることが大事です。

 

 

再協議する

相手に履行する意思はあるものの、何らかの事情で履行できない状況であるならば、手間はかかりますが、再度相続人全員で協議し直すこともきちんと履行してもらうためには有効といえます。ただし、再協議を行うには相続人全員の協力が必要ですので、一人でも反対する相続人がいれば再協議はできず、実際にはなかなかこれは難しいことが多いです。

 

遺産分割後の紛争調停を申し立てる

履行を催告しても相手が無視する、再協議の見込みもないという状況であれば、家庭裁判所に遺産分割後の紛争調停を申し立てます。

裁判所では、調停員という第三者が間に入ってトラブル解決を図ります。そこでは、調停員を通じて、履行されない状況などを客観的資料の提出を求めることができますし、場合によっては実質的に再協議といえるような提案を調停員から受けることもあります。

勿論紛争調停申立ては自分でもできますし、裁判期日に出席して状況を説明することができます。ただし、相続に関する法的な知識が求められる場面もありますので、スムーズに調停を進めるためには、弁護士に依頼するのが現実的です。

 

訴訟を提起する

調停はあくまでも話し合いによる解決を目指す手続なので、そもそも相手が出席するとは限りません(もっとも裁判所から呼出状は送付されます。)。

調停でもまとまらない場合には、訴訟を提起せざるを得ないでしょう。

お金が振り込まれず、その履行を求めたい場合は、代償金支払請求訴訟を提起することになります。

 

遺産分割協議の内容を守ってもらうために、協議の段階からできること

誰しも遺産分割協議が成立すれば、あとは履行されるのを待つだけ、まさか履行されないなんて考えもしなかったと思う方は多くいらっしゃると思います。

相続トラブルは、相続開始後遺産分割協議前はもちろん、遺産分割協後のトラブルも含まれます。

そこで、遺産分割協議の内容を守ってもらうために、できることとしては、理想としては協議書締結と同時履行で代償金の支払を行ってもらうことですが、それが何らかの事情により難しいのであれば、(通常は公正証書化することはあまりありませんが)遺産分割協議書を公正証書で作成することでしょう。さらに強制執行受諾文言付の公正証書であれば、裁判をすることなく、公正証書で作成した遺産分割協議書を元に強制執行することができます。

 

 

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遺産分割協議の内容が守られず困っている方は弁護士に相談を

今回は、遺産分割協議の内容が守られずに、遅々として履行されない場合の対処方法をご紹介しました。

履行されない理由は、相続手続に時間がかかっている場合もありますので、履行を求める際は、履行しないという意思が明確であるなどの場合でない限り、まずはお伺いベースから入るのが余計なトラブルにならないと思います。

いずれにしましても、弁護士が介入することで、相手が素直に履行請求に応じたり、時間がかかっている状況が判明したりと有益なこともありますので、お困りの際はまずは弁護士に相談しましょう。

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