路上痴漢で問われる罪と後日逮捕の可能性は?
痴漢は、電車内など密室で行われる行為とは限りません。夜間に人気のない路上で行われることも実際多くあります。
もちろん、こうした屋外での路上痴漢であっても、逮捕される可能性は十分あります。
路上痴漢とは
文字通り、路上で行われる痴漢をいいますが、その態様は様々です。
例えば、すれ違いざまに被害者の胸を触る行為、後ろから被害者に抱きつく行為、夜道で被害者を押し倒してキスをしたり下着を脱がせて盗もうとするなどの事案が多いですが、人目につかない場所での犯行が多いため、その態様も電車内での痴漢に比べるとかなり大胆なものになる傾向があります。
路上痴漢は不同意わいせつ罪か不同意性交罪、又は迷惑防止条例違反になる
こうした路上痴漢をしてしまった場合、問われる罪としては、不同意わいせつ罪(不同意わいせつ致傷罪も含む)か不同意性交罪(不同意性交致傷罪も含む)、又は各都道府県の迷惑防止条例違反になる可能性が高いです。
不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪は、同意しない意思の形成・表明・全うすることが困難な状態にさせた、あるいはその状態であることに乗じて、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(刑法176条1項)。
ここでいう、「同意しない意思の形成・表明・全うすることが困難」とは、
法務省の見解によると、
(1) 同意しない意思を「形成」することが困難な状態とは
性的行為をするかどうかを考えたり、決めたりするきっかけや能力が不足していて、性的行為をしない、したくないという意思を持つこと自体が難しい状態。
(2) 同意しない意思を「表明」することが困難な状態とは
性的行為をしない、したくないという意思を持つことはできたものの、それを外部に表すことが難しい状態。
(3) 同意しない意思を「全う」することが困難な状態とは
性的行為をしない、したくないという意思を外部に表すことはできたものの、その意思のとおりになることが難しい状態。
をそれぞれいうとされています。
路上痴漢の場合は、ほとんどのケースで被害者が同意することはまずありませんので、歩いている女性の後ろから突然抱きついて、胸や陰部を直接触ったとか、人気のない場所に連れ込み、無理やりキスをしたとか、泥酔した路上で寝ている女性の身体を触る、といった典型的な路上痴漢は本罪に問われることになります。
この場合、法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。
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不同意わいせつ致傷罪
不同意わいせつ罪以外にも成立する可能性のある犯罪があります。
例えば、歩いている女性を人気のない場所に連れ込み、押さえつけて強引にわいせつな行為をした結果、被害者がケガを負ってしまった場合、不同意わいせつ致傷罪が成立します(刑法181条1項)。
この場合、不同意わいせつ罪よりも重く、無期懲役又は3年以上の懲役刑が科されます。
(法定刑に無期懲役が含まれている場合には通常の裁判ではなく、裁判員裁判の対象事件となります。)
不同意性交罪(不同意性交致傷罪)
不同意性交罪は同意しない意思の形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて行われたことが要件であるのは不同意わいせつ罪と同じですが、行為の中身が異なります。
具体的には、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(刑法177条)が処罰対象行為となっています。
法定刑は5年以上20年以下の拘禁刑です。不同意性交の機会に被害者が傷害を負った場合には、不同意性交致傷罪として法定刑は無期懲役又は6年以上20年以下の拘禁刑です。
したがって、不同意性交致傷事件の場合にも、法定刑に無期懲役が含まれていますので、裁判員裁判の対象事件となります。
迷惑防止条例違反
路上痴漢について、例えば東京都の場合、「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。」として、「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」と規定されています(東京都迷惑防止条例5条1項1号)。
また、同条例5条1項3号では、前二号に掲げるもののほか、「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」も禁止さています。
迷惑防止条例違反となる路上痴漢は、不同意わいせつ罪が成立し得る行為に比べて、比較的軽微な場合に成立する可能性が高く、たとえ不同意わいせつ罪が成立しないと判断されても、迷惑防止条例違反となることがあります。
特に、「卑わいな言動」については、例えば少女を両手で抱きかかえたりするような行為などの他、肉体的接触がなくとも、卑わいな内容の声掛け(「言動」には動作の他にも発言も含みますので)も処罰対象となります。
この場合、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
路上痴漢で逮捕される可能性は?
路上痴漢をしたことで、逮捕される可能性はどれくらいあるのでしょうか。
前提として、逮捕されるパターンとして、現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)があります。
現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わって間もない人を逮捕することをいいますが、路上痴漢で現行犯逮捕されるケースとしては、その場で周りの目撃者に取り押さえられて、駆け付けた警察に逮捕されるというのが典型的です。
後日逮捕(通常逮捕)
後日逮捕は、被害者による被害届の提出や刑事告訴などをきっかけに、捜査が開始され、犯人を特定した後になされる逮捕です。
後日逮捕の可能性は?
さて、路上痴漢をした後、現場から立ち去った場合、後日警察が訪ねてきて逮捕される可能性はどれくらいあるのでしょうか。
一般的に、被害者が被害届を提出した場合、捜査が開始されますが、主に周辺の防犯カメラから犯人を特定するケースが多いです。
特定され、逮捕されるまでの期間ですが、ケースバイケースなところがあります。したがいまして、半年近くかかるケースもあれば、数週間で逮捕されるケースもあります(1年となると微妙ですが、過去の事例からゼロとは言い切れません。)。
不安であれば弁護士に相談を
路上痴漢は許されない行為ですが、いつまでも逮捕されるのではないかと不安な日々を過ごすより自首をして捜査に協力することで、逮捕勾留される可能性は低くなります。もっとも、自首をしたからといって、不起訴処分を得られるわけではありません。
また自首をしたものの、被害者から被害届が提出されておらず、穏便に前科がつかずに済んだケースも実際にあります。
いずれにしましても、自首するかどうかお悩みであれば一度弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所でもこれまで多くの自首に関するご相談を受けており、実際に自首に同行し、被害届が先行して出されて捜査が開始されていたものの逮捕勾留されずに注意で終わったケースもあります。自首をすることで、警察にも逃亡する姿勢や意思がないことを表明でき、逮捕を免れる可能性が高くなりますし、捜査機関の捜査状況等もある程度把握することができますので、お困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。
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