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不同意わいせつ罪・不同意性交等罪に問われる「同意」の有無に関する証拠とは?

令和5年の刑法改正により新設された不同意性交等罪不同意わいせつ罪では、「同意しない意思」という文言が条文で明記されています。

実際のところ、録音等の証拠がなければ、密室で男女が二人きりで性交等を行うにあたって、両者に同意が有ったか無かったかというのは当事者にしか分かり得ません。

そのため、同意があるものと思って性行為に及んだ、確かに同意を得ていたのに後日女性から同意していないとして警察に被害届を提出された、というケースは非常によくあります。

 

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪の条文を確認すると、「次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。」と規定されています(刑法176条)。

そして、「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」になる原因となりうる8つの類型についても規定されています。

① 暴行又は脅迫

② 心身の障害

③ アルコール又は薬物の影響

④ 睡眠その他の意識不明瞭

⑤ 同意しない意思を形成・表明・全うする暇がない

⑥ 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖又は驚愕

⑦ 虐待に起因する心理的反応

⑧ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮

これら①~⑧の状況にあったことが認められれば、不同意わいせつ罪が成立する方向の強い事情となり得ます。

 

不同意性交等罪

不同意性交等罪は、不同意わいせつ罪で挙げた8つの類型により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処せられます(刑法177条1項)。

 

同意の有無に関する証拠とは?

不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪で後日逮捕される可能性ですが、前提として、証拠が全くなければ逮捕されない場合もあります

つまり、わいせつな行為や性交等をするにあたって、同意がなかったことがわかる証拠がなければ不同意わいせつ罪等で逮捕される可能性は低いです。

もっとも、被害者の供述も証拠の一つではあるのですが、被害者供述のみで逮捕に至る可能性もゼロではありませんが高くはありません(ただし重要な証拠にはなります。)。

通常逮捕の要件は「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」ですが、被害者の供述が被害直後に行われた生々しいものであり、供述内容が具体性に富んでおりDNA等の証跡や揉めた際の傷跡、録音データなどがあれば当然逮捕される可能性は高くなります。

 

通常、同意があったか、なかったかについては当事者にしか知り得ませんし、不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪が成立し得る行為は、一対一の密室で行われるか、夜間の人通りのない路上等、第三者がいない場で行われるケースがほとんどです。

そこで、客観的な状況や被害者供述の具体性、客観的状況との合致の程度、防犯カメラ映像の有無、犯行後の当事者間のやり取りなどを総合考慮し、被害者と加害者のいずれの供述が合理的で信用できるかが非常に重要であり、否認事件であれば捜査機関もこの点に重点を置いて判断します。

警察の捜査においても、防犯カメラや被害者の衣服に付着した体液や指紋、両者の関係性、被害者がわいせつな行為等をされたとされる時間的前後の両者の行動・やり取り、被害者の身体に痣や傷があるかなど、さまざまな客観的証拠を収集し、同意があったのかなかったのか、これら犯罪にあたる行為であったのかを判断します。

 

加害者の立場から同意があったことを証明するためには、例を挙げればわいせつ行為や性交等行為前後のやり取りが重要になることが多いです(もっとも、やり取りだけで同意があったと証明されるわけではありません。)。

やり取りの中で、性行為について嫌だったとか明らかに被害者が同意していなかったとうかがわれる場合は性交等に同意はなかったと判断されるおそれがあります。

 

 

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「不同意」の要件は抽象的で不明確

以上のように、電車内での痴漢など極端な例は別として、ケースとしてこのような場合であれば同意があった、同意がなかった、という線引きは必ずしも明らかではありません。

そもそも不同意性交等罪及び不同意わいせつ罪が新設された改正の背景としては、従来の強制性交等罪では、性交等の際に暴行又は脅迫がないと犯罪が成立しない、部活の監督や養親による上下関係や支配関係など社会的地位を利用した暴行脅迫を手段としないわいせつ行為を罪に問うことが難しい点が問題とされていました。

不同意性交等罪などはこうした問題を解決するために新設されたのであって、警察は被害届や刑事告訴から捜査を開始し、きちんとした客観的証拠を集めた上で、逮捕の要件が揃えば逮捕します。

 

 

同意があったかなかったかは客観的証拠に基づいて判断する

同意があったのか、なかったのか、本当のところは当事者にしかわかりません。

そのため、警察や検察、弁護活動を行う弁護士は、客観的証拠によって判断せざるを得ないのです。

特に最近ではマッチングアプリで知り合った初対面の男女間ででこうしたトラブルになるケースは多く、「不同意」の要件は専門家でないと判断が難しい面があります。

合意に基づいた性行為後、被害者から同意していないと突然言われて脅され悩んでいたり、あるいは被害者の同意なくわいせつな行為をしてしまい逮捕される可能性があるのかで不安でしたら、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

当事務所ではこれまで加害者側の弁護人として多くの不起訴処分を獲得に成功しており、また被害者側でも代理人として刑事告訴を受理させております。性犯罪でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

 

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