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刑事告訴をするにあたって、知っておいて欲しいデメリット

刑事告訴は、犯罪の被害者等が捜査機関に対し、犯罪の被害があった事実を申告するとともに、犯人の処罰意思を示す手続です。

そして、刑事告訴が受理されれば、捜査が開始され、最終的に犯人が逮捕・起訴され、刑事責任を負わせられる可能性があります。

他方、刑事告訴をするにあたっては、いくつかの注意点(デメリット)もあります。これらを知っておくことで、本当に刑事告訴をしたいのか、ご自身に問いかけるきっかけとしていただけれればと思います。

 

デメリット①:受理までのハードルが高い

捜査機関が刑事告訴を受理すると、捜査を開始しなければならない義務を負います。そして、捜査機関側の都合ですが、捜査にあてられる人数には限りがあります。

つまり、いくら受理義務があっても、証拠が足りない、犯罪かどうか分からないなどと適当な理由を付けて、捜査機関が受理に消極的な姿勢を見せることがよくあります。

その他、証拠が乏しい、被害が発生した日から長期間経過して証拠が散逸しているなど、最終的に不起訴になる見込みが高い場合は、受理までのハードルがより高くなってしまうのです(このような場合であっても、捜査機関には刑事告訴を受理しなければならない義務はあります。犯罪捜査規範第63条)。

 

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デメリット②:最終的に不起訴で終わる可能性がある

捜査機関によって受理されたとしても、捜査の結果、最終的に犯人が不起訴処分で事件が終わる可能性があります。

刑事告訴が、犯人への処罰意思も含む手続であることから、告訴人(犯罪被害者など)からすれば不起訴処分で終わることに納得できないこともあるでしょう。

ただし、不起訴処分となった場合には、検察審査会に対して、不起訴処分の当否を審査する申立てをすることは可能です。

 

 

デメリット③:弁護士に依頼する場合、赤字となる可能性がある

基本的に刑事告訴を被害者自らがする場合は、費用はかかりません。

しかし、刑事告訴は専門的な知識を要する手続であり、かつ受理にあたって警察とも毅然とした対応をしなければならない場面がある場合があります。実際、現実問題として、被害者自身が告訴状を作成した上で告訴を行っても、受理されないケースは少なくありません。

このような場合は弁護士に依頼して刑事告訴を一任することも可能ですが、依頼にあたっては弁護士費用(着手金と報酬金など)が発生します。

弁護士または法律事務所によっても、事件の複雑性や難易度によっても金額は異なりますが、基本的には数十万円ほど掛かるケースが多いです。

そうすると、仮に被害金額が少ない場合には、示談交渉により全額回収できたとしても、弁護士費用の方が上回ることになり、結果赤字となってしまいます。

 

 

デメリット④:損害が発生しても、被害回復が図られるわけではない

デメリット③でも少し触れましたが、刑事告訴をしたからといって、被害金額が回収できるわけではありません。刑事告訴はあくまで犯人に対して刑事処分を求めるためのものであり、犯罪によって被った損害賠償の請求は民事訴訟で別途行わねばならないのが原則です。

もっとも、犯人が逮捕されたりした場合には犯人側から示談交渉を持ちかけてきてそこで示談金として被害回復や慰謝料等を払ってもらえる場合もありますが、示談交渉のために刑事告訴を足掛かりにすることは、捜査機関側が受理に強い難色を示します。また、刑事告訴をしたら、犯人から必ず示談交渉をもちかけられるわけでもありません。

 

 

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デメリット⑤:解決まで時間がかかる

刑事告訴を被害者自らが行う場合でも、弁護士に依頼する場合でも、告訴状を持参した日にそのまま受理されることはほぼありません。即座に捜査を行わないと証拠が散逸する恐れの高い緊急性を要する事案では、理屈で責めて即日受理させるまで帰らないという方法を採ることもあります

理屈上も、前述のとおり警察が告訴の受理義務を負っておりますので、警察が拒否出来る道理はありませんから、即日提出しようと思えば可能です。

ただし、受理後に捜査に当たるのは当該警察ですし、告訴受理後の捜査においては被害者側や代理人が警察と連携して協力していくことが通常ですので、捜査に当たる警察の心証をあまりに無下にすることは好ましくありません。

それ故に、基本的には一度警察に告訴状のコピーと証拠関係を渡して、事件内容や証拠関係を精査する時間を与えた上で告訴の内容についても警察が動きやすい形で訂正に協力出来るところは協力するなどして、捜査機関と連携できる関係性を構築することは、告訴受理後の捜査状況を確認する際にも警察の方で情報共有をしてくれることにも繋がるという大きなメリットもあります

当該事件の解決(着地点)をどこにするのかは相談者次第ではありますが、もし刑事告訴の受理を着地点とするならば解決までに要する時間はケースバイケースです。ご参考までに、当事務所では、これまでご依頼から1か月程度で受理に至ったケースもあれば、半年以上かかったケースもあります。事件内容の複雑性や、管轄警察署の刑事の繁忙にもかなり左右されます。

他方、横領や詐欺など具体的な被害金額が発生している場合で、その全額の回収を着地点とするならば、刑事告訴とは別に民事訴訟を提起する必要がありますので、刑事告訴も含めると1年以上はかかるでしょう。

 

それでも刑事告訴には、するだけの価値がある

刑事告訴には、以上のデメリットがありますが、もちろん刑事告訴に踏み切った方がいいケースもあります。

例えば、インターネット上の誹謗中傷被害を受けていて、止めるために刑事告訴をする場合、詐欺被害者が多数おり更なる被害者が出ないようにしたい場合、性犯罪被害を受けた場合、業務妨害の被害を断続的に受け続けている場合など、告訴受理によって、捜査が開始されることで被害が止められるなどの実益があるようなケースは刑事告訴のメリットを活かせるでしょう。

 

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まとめ

刑事告訴には、受理までのハードルが高かったり、犯人に実刑を負わせたいのに最終的に不起訴処分になる可能性があるなどのデメリットがありますが、告訴が受理されれば捜査が開始され、犯人に捜査が及び、継続する被害を止めることもできます。

また、しっかりと処罰意思を示したいのであれば弁護士のサポートを受けることも一つでしょう。

当事務所では、多くの刑事告訴に関するご相談を受けております。ご依頼いただい刑事告訴については、全て受理という実績を誇っています。

警察にも無下な対応をされ、どうしても犯人を許せず、刑事告訴を強い気持ちで行いたいとお悩みの方は当事務所までご相談ください。

 

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