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商業施設内での盗撮事犯が過去最多とのこと~盗撮したらどうなるのか、逮捕された後の残された家族ができることも解説

テレビやインターネット上のニュースなど、盗撮事件に関する報道は良く見聞きすると思います。

最近の盗撮事件の概要を見ると、脱衣所やトイレにカメラを設置して撮影した、商業施設内で少女の下着を撮影しようとして穴の開いた袋に忍ばせたスマホを差し向けた、スーパー内において買い物客の下着をスマホで撮影した、露天温泉浴場において岩に似せたカメラを設置した、エスカレーターで追い越しざまにカメラをスカート内に差し向けて撮影したなどなど、その状況や撮影方法は本当にさまざまです。弁護士目線での印象としては、入念に準備されカメラを偽装するなど手の込んだ盗撮事案のご相談も増えたという印象があります。

 

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令和5年中の検挙件数うち、商業施設での盗撮事犯は最多

商業施設での盗撮被害は年々多くなっておきており、令和5年中の痴漢・盗撮事犯に係る検挙状況の調査結果(出典元:警察庁生活安全局生活安全企画課)によると、ショッピングモール等商業施設での撮影罪での検挙件数は全体の35.4%を占め、最多となっています(次いで駅構内が22%)。

 

商業施設での盗撮が増加している理由

令和5年中の検挙状況の調査結果にもある通り、なぜ商業施設での盗撮が多いのでしょうか。それは、商業施設という場所の特質性があるといえます。

つまり、商業施設は、毎日多くの人が出入りするため、盗撮犯からすれば盗撮のターゲットとなる人が多くおり、自分好みの人やスカート姿等、被害者の選別がし易いといえます。トイレについても、中に客がいなければ男性が女性用トイレに入ることも比較的容易であり、トイレ内の盗撮も実際に多いです。

また、陳列された商品をターゲットが見入っている状態であれば後ろから盗撮しやすかったり、地方の商業施設ではいわゆるプリクラが設置されており、撮影に夢中になっているところを盗撮するなど、盗撮の機会が生まれやすい場所と言えます。

さらに、今では歩きスマホやスマホ決済という言葉があるように、盗撮の手段であるスマホは日常生活に欠かせないものとなっています。商業施設内でスマホを操作していても、周りから見れば基本的に怪しまれません(そして常習盗撮犯はこうした素振りをすることに長けている場合も多いです。)。

以上のような商業施設という場所の特質性が盗撮事件を多く発生させる一因となっているのです。

 

盗撮とは

盗撮とは、要するに相手方の同意なく盗み撮りすることです。ただ、法律上、「盗撮」という用語に関して定義規定を置く法律や条例は、今のところありません。

例えば、令和5年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法を見ると、正当な理由がないのに、ひそかに、性的姿態(性的な部位、身に着けている下着、わいせつな行為、性交等がされている間における人の姿態)を撮影した場合は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処せられます(性的撮影等処罰法2条1項1号)。

また、東京都の迷惑防止条例では、何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、住所、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所、あるいは公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置することを禁止しています(東京都迷惑防止条例5条1項2号)。

 

 

そのため、例えば、商業施設内で単に中の人が往来する様子を撮影しているだけというような場合には撮影罪にも迷惑防止条例違反にも当たらないでしょう。しかし、性的な部位を執拗にフォーカスしてカメラを向けたりすれば、撮影罪は適用されなくても迷惑防止条例違反に問われる可能性はありますし、迷惑防止条例違反に問われなくても何らかのトラブルに発展する可能性はもちろんあります。

 

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盗撮犯は現行犯逮捕以外での逮捕は難しい?

盗撮犯は、現行犯逮捕が一般的であり、後日逮捕されることはないと言われますが、それは間違いです。実際、後日逮捕されたケースに当たったことも何件もあります。

商業施設内であっても、防犯カメラは至る所にありますし、被害者の供述や目撃者がいればその目撃情報も加味して、そこから数珠つなぎのようにして盗撮犯が特定されることはよくあります。

防犯カメラ以外にも盗撮犯が別件で逮捕されていて、警察がスマホ内のデータを確認した結果、盗撮行為が判明するケースも多いです。

 

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盗撮事件として捕まるとどうなるか?

一般的に、逮捕されてから検察官による処分(起訴か不起訴)決定までの大まかな流れは、逮捕後48時間以内に警察による取調べ、その後検察官に送致され、送致後24時間以内に勾留するかどうかの決定がされます。つまり、逮捕されてから最大3日間は身体拘束されます。もちろんその間スマホなどの私物は警察官に預けられます。

勾留決定がされると最大23日間は身体拘束を受けます。そして最終的に起訴か不起訴の処分が下ります。起訴となれば、有罪率99.9%の日本においては前科は免れないでしょう(不起訴となれば前科はつきません。)。

また最大23日間の勾留となれば、勤務先や学校にも少なからず影響を与えることにもなりかねず、無断欠勤による懲戒解雇や退学を余儀なくさせられる可能性があります。

 

残された家族にできること

逮捕された人に家族がいた場合、突然警察や弁護士から逮捕した(された)という連絡がくることがあります。

それが詐欺であるかどうかは別として、最初は何が起きているのかわからずパニックになってしまうでしょう。

ですが、このような場合、残された家族としてできることは、まずは弁護士に依頼して、状況を把握するためにも、すぐに本人に会いに行ってもらってください(残された家族が逮捕されてから3日間のうちに接見に行こうとしても取り合ってくれません。)。

通常、警察は逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれの観点から勾留(身体拘束)をしますが、たとえ警察が逮捕後に被疑者に逃亡のおそれがないことが判明しても、積極的に考慮してくれるわけではありません。

考慮してくれるようアピールするため(早期の身柄解放を目指すため)にも、弁護士による早めの弁護活動が重要となります。

弁護士がすぐに弁護活動を行うことができれば、早期に身柄を解放できる可能性は十分にあります。

 

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