誹謗中傷で訴えることは難しい?
誹謗中傷で、誹謗中傷してきた人を訴えることは難しいのでしょうか。
結論から申し上げますと、決して容易ではありません。
その理由は、さまざまな観点から挙げられます。
こういった誹謗中傷が名誉毀損に当たるという絶対的な基準はない
よく言う誹謗中傷とは、人の悪口を言うこと、根拠の内容で人を貶めることを言いますが、法律上、誹謗中傷に関する定義規定はありません。
法的には名誉毀損や侮辱という言葉が近い言葉になりますが、これらについても、こうしたコメント、投稿が名誉毀損に当たる、侮辱になる、という絶対的な基準はないのです。
絶対的ではありませんが、名誉毀損であれば、同定可能性、公然性、事実の摘示、社会的評価の低下、違法性阻却事由の有無といった観点から名誉毀損にあたるか判断されます。
つまり、インターネット上にある全ての誹謗中傷コメントが名誉毀損にあたるわけではないのです。そして、その誹謗中傷が名誉毀損にあたるということを、被害者側が証拠をもって主張立証していかなければなりません。
主張立証に関しては、先ほどの名誉毀損の5つの観点に則って、法的に主張しなければならず、弁護士でないと、裁判官に名誉毀損であると判断してもらうにはなかなかハードルは高いといえるでしょう(もっとも弁護士であっても、結果的に裁判官に当該誹謗中傷が名誉毀損にあたると判断されないケースもあります。)。
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投稿者特定までの過程が複雑
投稿者を特定するのも容易ではありません。インターネット上では、匿名やハンドルネームでの投稿が一般的であり、投稿した人が誰なのか、被害者からすれば知る由もありません。
投稿者を特定するためには、発信者情報開示請求を行うのが一般的ですが、例えば、Xで誹謗中傷された場合、まずはX運営者から投稿者のIPアドレス(インターネット上の住所)の開示を受け、そのIPアドレスを使用する接続プロバイダ(KDDIやドコモなど)を割り出し、接続プロバイダから契約者の氏名や住所を特定するという過程を経ることになります。
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時間との戦いがある
さらに、時間との戦いもあります(手続上、ここが重要といえます。)。
つまり、発信者情報開示請求にはログ保存期間による事実上の時間制限があります。
誰がそのIPアドレスを使ってXなりInstagramなり掲示板にアクセスしたのかというアクセスログは、ほとんどの場合3か月から6か月しか保存期間がありません。これを過ぎると、いくら法的手続によって発信者情報開示請求をしても、投稿者まで辿れませんでしたという結果になります。
したがいまして、1年前の誹謗中傷の投稿に対して相手を特定して訴えるというのは事実上難しいです(ログ保存期間が無期限というプロバイダも過去にはありましたが、全体の中では極めて少数です。)
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♦ 発信者情報開示請求におけるログの保存期間と法的な時効 |
費用が相当程度かかる
発信者情報開示請求はもちろん自分でもできますが、複雑で専門的でもあるため、弁護士に依頼する方がほとんどです。そのため、弁護士費用がかかります。
また弁護士費用のみならず、手続にあたって裁判所に納める費用も発生しますので、費用面からすると大きな負担となります。
また投稿者を特定して、投稿者に対して損害賠償請求訴訟を起こしたとしても、名誉毀損や侮辱により得られる賠償金は数十万円程度の可能性もあり、費用倒れになることもありますので、ご注意ください。
弁護士のサポートを受ければ難しくはない
誹謗中傷で訴えることは難しいというのは、あくまで被害者自らが自分で発信者情報開示請求を経て、投稿者を特定して、民事上の損害賠償請求や刑事告訴で訴えることに限った話になります。
しかし、弁護士のサポートを受ければ、一連の手続を任せることができます。
それを前提として、誹謗中傷の被害に遭った方がまずやるべきことは、問題のコメントや投稿をスクリーンショット(URL全文が映る形でスマホではなくPCから保存して下さい。)で保存しておき、速やかに弁護士に相談することです。
投稿者の特定(又は損害賠償請求など)までの一連の手続を弁護士に相談・依頼すれば、誹謗中傷によって社会的評価が低下したのか(ただし、最終的な判断は裁判官がします。)、ログの保存期間は問題ないかなどのアドバイスから、裁判所にこちらの主張を認めてもらうための主張立証を一任することができます。
まずは誹謗中傷の内容を見てからになりますので、誹謗中傷でお困りの方は当事務所までご相談ください。
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