大麻使用罪はいつから?罰則は?~大麻取締法などの改正内容をわかりやすく解説
目次
覚せい剤を始めとする薬物事犯は減ることはなく、特に、大麻に関しては、使用罪はないから処罰されないという誤った認識があるからなのか、それとも大麻は合法な国があるから害が少ないと考えるからなのか、若年層による乱用が拡大している傾向にあります。
こうした問題を受けて、令和6年12月12日より、大麻を麻薬と位置付けるなどの内容となる麻薬及び向精神薬取締法、従前の大麻取締法が大麻の栽培の規制に関する法律へと名称が変更されるなど、新たな法律が施行されます。
今回は、施行予定(2024年10月現在)の法律についてご紹介します。
現行の大麻取締法の内容
大麻取締法の改正内容に入る前に、現行法(2024年10月現在)の内容についてみていきましょう。
大麻取締法とは、薬物を禁止している法律として、覚せい剤取締法、大麻取締法、あへん法、麻薬及び向精神薬取締法(いわゆる薬物四法。麻薬特例法も含めると薬物五法)のうち、大麻取扱者以外による大麻の所持、栽培、譲り受け、譲り渡し、研究のための使用を禁止する法律です。
大麻とは、大麻草及びその製品のことをいいますが(大麻取締法1条)、成熟した大麻草の茎と種子には、有害な物質がほとんど含まれていないことから、これらは規制対象から除外されています(大麻取締法1条ただし書)。
大麻取締法では、輸出入、栽培、譲渡、譲受、所持、使用が禁止行為として規制されており(大麻取締法4条など)、営利目的の有無によって刑罰の重さが変わります。
営利目的で、大麻で輸出入、栽培した場合は、10年以下の懲役及び300万円以下の罰金(大麻取締法24条2項)、非営利目的であれば7年以下の懲役となります(同条1項)。
また譲渡、譲受、所持、使用をした場合で、営利目的であれば、7年以下の懲役及び200万円以下の罰金となり(同法24条の2第2項など)、非営利目的であれば、5年以下の懲役となります(同条1項など)。
改正の趣旨
これまで、大麻をめぐっては、使用罪がないことで若年層の乱用が拡大しているという指摘もある一方で、欧米では大麻由来成分カンナビジオール(CBD)を含む難治性てんかん治療薬が薬事承認されていましたが、日本では大麻取締法により大麻から製造された医薬品の施用等が禁止されており、関係団体などから国内でも使えるよう要望が出されていました。
こうした問題を受けて、今回、大麻草成分が使われる医薬品の使用が解禁されるほか、大麻の所持も罰則対象となり、大麻草の栽培も免許制になるなどの改正が行われました。
なお、厚労省が公表する「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律要綱」でも、今回の法改正の趣旨は、大麻の適正な利用を図るとともに、その濫用による保健衛生上の危害の発生を防止するため、大麻草から製造された医薬品の施用を可能とするとともに、有害な大麻草由来成分の規制、大麻の施用等の禁止、大麻草の栽培に関する規制に関する規定の整備等の措置を講ずる」こととしています。
改正の内容
改正の趣旨でもお伝えしましたが、今回の改正のポイントは、①大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とするための規定の整備、②施用罪に係る規定の整備、③大麻草の栽培に関する規定の整備、になります。
大麻草から製造された医薬品の施用等を可能とするための規定の整備
改正前の大麻取締法では、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付することを禁止されていましたが(大麻取締法4条1項2号)、国際的な整合性を図り、また医療ニーズに対応する観点から、これらの規定が削除されることになりました。
また、大麻と麻薬は別の法概念でしたが、大麻及びその有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は「麻薬」の一つとして、麻薬及び向精神薬取締法上に位置づけられることになりました(改正後の麻薬及び向精神薬取締法2条1項1号の2)。
これにより、他の麻薬と同様、安全性と有効性が確認された大麻草から製造された医薬品(THCを含有するもの)が施用できるようになっただけでなく、適正な手続に基づいて輸入し、それを患者の治療のために施用することも可能となります。
大麻草から製造された医薬品の施用が可能になるということは、医療業界にとっては大きな追い風になるだけでなく、難治性てんかんを患う人にとっても嬉々となるものでしょう。
ただし、大麻及びTHCを含有するものを嗜好目的で吸引することは、新麻向法では違法となります。
施用罪に係る規定の整備
今までの大麻取締法では、大麻の単純な使用自体は犯罪となっていませんでした。
ここで、先ほどご紹介した現行の大麻取締法で大麻を使用した場合に、非営利目的であれば5年以下の懲役になるのでは?つまり使用についても犯罪になっているのでは?と疑問に思うかもしれません。
ですが、大麻取締法は、大麻の自己使用自体を処罰の対象としていないのであって、大麻取扱者が目的外で大麻を使用することや、一般人が大麻を研究のため使用することを禁止しているのです。
つまり、単純な使用は犯罪ではありませんでした(よくネットで大麻の使用を処罰対象としていないとありますが厳密に言えば不正確です。)。また薬物四法のうち、覚せい剤や麻薬・向精神薬については使用罪が処罰規定されていたところ、大麻については、所持や譲渡で対応しているところがありました。こうした背景が若年層における大麻乱用が拡大した要因でもあります。
近年の大麻に関する薬物事犯が増加していることもあり、大麻についても使用を規制して不適切な使用を規制しようという目的で、大麻を麻薬と位置付け、その他薬物等と同じように施用を禁止したのです(新麻向法27条)。
施用罪に違反した場合の罰則も規定され、7年以下の懲役となります。なお、大麻等の不正な所持、譲渡や輸入等についても新麻向法に基づく規制の適用となり、同じく7年以下の懲役となります。
いつから適用される?
今回の法改正は、令和6年(2024年)12月12日から施行されます。
したがいまして、2024年12月12日から改正後の法律が適用されます。改正前に発生していた事案については旧法が適用され、新法を遡求適用することはありませんが、注意が必要です。
例えば、12月1日から所持し始め、そのまま13日まで大麻を所持していた場合には新法と旧法いずれが適用されるでしょうか。
こちらについては、所持は大麻取締法でも、改正された麻薬及び向精神薬取締法でも禁止されていますので(大麻取締法3条、改正後の麻薬及び向精神薬取締法28条)、極端に言えば、12月10日に逮捕されれば大麻取締法で、13日に逮捕されれば改正された麻薬及び向精神薬取締法が適用されることになるでしょう。
カンナビジオール(CBD)の取扱いはどうなる?
大麻等が麻向法への移行に伴い、麻薬成分ではない大麻草由来製品(カンナビジオール)については、これを含む大麻は新麻向法上の定義に含まれることになります。
しかしながら、国際的には、成分としてのCBDは幻覚作用はなく、CBDを含んだ医薬品が薬事承認されている国も多くあります。日本でもCBDを含む製品は流通しており、国内で流通しているものは有害成分THCが含まれていないことが証明されたものです。
ここのバランスは難しいところですが、今回の改正では、CBD製品は、葉や花穂から抽出されたものも流通と使用が可能となり、一方で保健衛生上の危害発生を防止する観点から、その製品に微量に残留するTHCの残留値を設けることになっています。つまり、その濫用による保健衛生上の危害が発生しない量以下のTHCを含有する製品は新麻向法上の麻薬から除外することになっています。
大麻草の栽培に関する規定の整備
大麻が新麻薬及び向精神薬取締法へ移行することに伴い、現行の大麻取締法は主に大麻草の栽培規制に関する法律となります。そのため、名称も大麻取締法から大麻草の栽培の規制に関する法律へと変更されます。
この辺りは一般の方からすれば、あまり馴染まないかもしれませんが、大麻草を製品の原材料として栽培する場合は都道府県知事からの免許、医薬品の原材料として栽培する場合には厚生労働大臣からの免許をそれぞれ得なければ、栽培等することができない、程度の理解で十分でしょう。
そして、大麻草をみだりに栽培した場合は、1年以上10年以下の懲役刑となります(大麻草の栽培の規制に関する法律24条1項)。
最後に
大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法の各改正の背景には、医療業界又は若年層による大麻乱用があります。
今回の大麻に関する法改正によって、どちらの法律が適用されるのか、弁護士でも判断が難しいところがあります。その日を境にして前日までは旧法、翌日は新法、という単純なケースもあれば、複数の行為にまたがって(例えば、今回の大麻で言えば、輸入から使用まで)違法行為が行われることがよくあります。
今回は法改正を中心にご紹介しましたが、何より大事なのは、大麻を含む薬物には手を出してはなりません。