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刑事告訴の概要と、告訴を警察に断られた場合の対応

刑事告訴(告訴)とは

刑事告訴とは、犯罪の被害者等の一定の者(告訴権者)が、捜査機関に対して犯罪を申告し、犯人の処罰を求めることをいいます。

被害届と刑事告訴の違いは?

被害届は、単に警察などの捜査機関に対して「このような被害に遭いました」という犯罪被害に遭った事実を申告する届け出のことをいいます。これは、あくまでも被害に遭ったという「報告」を警察等へ行う意味合いしかありません。

他方、告訴の場合、警察等に被害報告を行うのみならず、「犯人を処罰して欲しい」との処罰を求める意思表示が含まれている点で被害届よりも強い効果を有しています。

警察が告訴を受理してくれない理由はここにある

いざ自分が犯罪に巻き込まれ、犯人の処罰を求めて刑事告訴をしようと警察署に赴いても、警察に色々と理由をつけられて断られた、受理してもらえないという相談は本当に多く寄せられます。そして、告訴を受理してもらえないケースは、話を聞いた警察官が「この事件は証拠があまりなさそうだな」と判断したり、あるいは「大したことのない事件だ」と警察官が独自に判断している場合もあると思われます。

このように、警察が色々と理由をつけて刑事告訴を断る理由は、一度告訴状を受理してしまうと、事件について捜査を尽くして検察官に書類を送付したり、犯人について最終的にどのような処分を行ったのかを告訴人に通知する法的義務を負ってしまう(刑事訴訟法第242条、同法第260条)ため、全件告訴を受理していたのでは業務が膨大な量となるため、証拠がほとんどない事件や捜査しても最終的に不起訴となるような軽微な事件までは受理していられないという実質的な事情もあると思われます。

警察には告訴を受理しなければならない義務がある

本来、警察官は、告訴が行われたときにはこれを受理しなければならないという義務を負っている(犯罪捜査規範第63条)ため、どれほど他の業務が多忙であったり軽微な事件だったとしても、被害者が告訴を行ってきた場合には受理しないという選択はできないことになっています。

しかし、実務上、弁護士が告訴を行おうと告訴状を警察署に持参しても、何かと理由をつけてきますので、すんなり受理してもらえることはほぼありません。

受理しないために警察が使ってくるお決まりの断り文句

以下は、私が実際に経験した警察官の言い訳ですが、誤字を粗探しし、「ここに誤字がありますのでこのままでは受理できませんね。」と言ってみたり、「犯人が「氏名不詳者」となってますけど、犯人が分からないのに刑事告訴って出来るんですか?」ととぼけてみたり、「証拠が不十分なので受理出来ません。」と言ってきたり、あるいは告訴状原本を受領すると受理したことになってしまうため、「一旦原本のコピーを取らせてもらい、原本はお返しするのでコピーを預からせていただきますね。」と言ってきたりと、よく色々と思いつくなと感心するほどにもっともらしい理由をつけて、正式に告訴を受理することを頑なに拒まれます。

弁護士に対しても上記のような対応ですから、弁護士でない一般の被害者の方が警察へ行った際の対応は推して知るべしであり、本当に酷い対応が多いです。

特に一般の方からすれば、上記のように説明されれば、「警察が言っているのだしそういうものなのかな」と理解してしまって仕方がないでしょう。

しかし、上記の警察官の拒否理由は全て通りません。

誤字があったとしても、告訴状の様式を備えているものは受理義務が生じますし、犯人の氏名が分からない場合でも当然受理しなければなりませんし、証拠が不十分という言い訳に関しては、証拠を集めるのが警察の仕事ですから、職務放棄を宣言しているに等しい言い訳です。

泣き寝入りする必要はありません

ご自身やご家族が犯罪に巻き込まれてしまい、警察にも告訴を拒否されたと泣き寝入りして犯人を野放しにしておく必要は一切ありません。

警察から上記のような不当な対応を受けた場合には、すぐに弁護士にご相談ください。

事件の内容等によってはそもそも犯罪事実が認められなかったり、時効等の法律上の制限にかかっている場合など受任をお断りする場合もありますが、まずは事件内容をお伺いした上で、正当な告訴であれば弁護士が代わって告訴を行います(当事務所では、本記事執筆段階で告訴は100%受理されています)。

弁護士が介入しても頑なに警察が告訴状の受理を拒否し続けるケースもありますが、そういった場合にも諦めることなく公安委員会や監察官室をも対象として受理してもらうよう働きかけ、受理を拒否した警察官の職務違反行為について問い詰めていき、受理されるまで戦います。

⇒告訴が正式に受理されれば、「令和●年●●●番」という受理番号を聞けば捜査官が教えてくれますので、受理番号も尋ね、正式に受理されるところまで頑張りましょう。

被害者なのですから、決して泣き寝入りする必要はありません。不当な警察対応があれば、是非ご相談下さい。不当な対応に対しては警察署長や警察の上位機関等にも徹底的に抗議し、受理されるまで一歩も譲らずに一緒に戦います。

 

 

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