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痴漢、盗撮で疑われたら名誉毀損で訴えられる?

混雑した電車内では、刑事トラブルが起きることがあります。

中でも痴漢や盗撮は、実際に行為をしている場合は別として、本当はしていないにもかかわらず、「この人痴漢です。」と女性から告発されてしまう可能性もあります。

女性の勘違いから冤罪が起きてしまうこともありますが、時に美人局のように、共犯の仲間と痴漢被害や盗撮被害をでっち上げられてしまうこともあります。

こうした痴漢又は盗撮で疑われた際に、でっち上げた相手を名誉毀損で訴えられるのか、についてご紹介します。

 

名誉毀損罪とは

痴漢又は盗撮したと疑われたことに対し、名誉毀損で訴えられるかについては、まず名誉毀損罪が成立する条件(構成要件)は何かを知っておく必要があります。

 

 

このように、名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損したときに成立する犯罪です。

つまり、盗撮を疑われたことによる名誉毀損が成立するかどうかは、名誉毀損罪の構成要件である①公然と、②事実を摘示し、③人の名誉を毀損した、の各要件を満たさなければなりません。

 

各要件について、簡単に概念的なことをお伝えしますと、

公然」とは、不特定又は多数人が認識できる状態のことをいいます。

次に、「事実を摘示」ですが、その人の社会的評価を低下させるような具体的な事実を摘示することをいいます。条文に「その事実の有無にかかわらず」とある通り、摘示する内容に真偽は問われません

最後に、「人の名誉を毀損した」です。これは、人の社会的評価を低下させる(落とす)ことをいいます。名誉毀損罪は結果的に社会的評価が落ちなくても成立する犯罪ですので、社会的評価を低下させる危険性がある行為があっただけでも成立し得ます(これを抽象的危険犯といいます)。

 

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痴漢・盗撮で疑われた際、名誉毀損罪で訴えることができるか?

さて、痴漢・盗撮を疑われた際に、冤罪を理由として名誉毀損罪が成立し、訴えることができるでしょうか。

わかりやすい場面として、痴漢・盗撮の典型例としてよく挙げられる電車内(駅ホームも含む)で疑われたというケースで検討してみましょう。

 

まず「公然」です。先ほどご説明しました通り、電車内は不特定又は多数人が当該発言を認識できる状況といえますので、公然性の要件を満たします。駅ホームであれば、朝の通勤通学ラッシュの時間帯は、ほとんどのドアの前で列をなして電車の到着を待ちますので、そこで「盗撮したでしょ」と声を挙げられれば、やはり公然性を満たすでしょう。

 

次に、「事実を摘示」ですが、摘示される内容の真偽は問われませんので、本当に痴漢行為をしていようがいなかろうが、「この人痴漢です」と言われれば事実の摘示に当たります。

 

そして、「人の名誉を毀損」です。痴漢又は盗撮行為をしたかのように、不特定かつ多数人がいる前で言われることは、その人の社会的評価を低下させる可能性が十分にありますので、名誉を毀損したことになりそうです。

 

名誉毀損で訴えることが難しい場合がある

ただし、痴漢冤罪であっても盗撮冤罪であっても、名誉毀損罪で訴えることが難しい場合があります。

刑法では、罪を犯す意思のない行為は罰しないとされています(刑法38条1項)。そのため、故意がなければ名誉毀損罪などが成立しないことになります。

極端な例を挙げますと、女性の脅迫又は恐喝目的であった場合や、近くに仲間の男性がいて、いわゆる美人局のようなケースでは故意があるといえるでしょう。

しかし、故意がない、つまり本当は別の人物による犯行であったり、バッグなどが当たっていて痴漢はいなかったが女性が現実に勘違いに陥っていたような理由で疑われたというような場合には、女性としては真実痴漢被害を訴えるために発言したものであり、名誉毀損罪を犯す意図がありませんから、故意があったとは認められにくいでしょう。

 

 

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虚偽告訴罪で訴えられる可能性は?

 

 

痴漢又は盗撮の冤罪に対しては、虚偽告訴罪で訴えることができる可能性もあります。

虚偽告訴罪についても簡単に触れておきますと、虚偽告訴罪が成立するためには、申告した事実が虚偽である(客観的事実に反する)ことの故意(認識・認容)が必要です。

告訴、告発、その他の申告とありますが、刑事告訴、刑事告発に限られず、被害届の提出もあてはまりますし、もちろん口頭でも申告といえます。

したがいまして、告訴人(告発人、申告人)において(本当はやっていないのに)客観的事実に反することを認識していながら、駆け付けた警察官に「この人に盗撮されました」と被害を申告すれば、虚偽告訴罪が成立する可能性はあります。

 

 

痴漢又は盗撮の冤罪を理由に名誉毀損罪で訴えられることはそう多くない

実際のところ、痴漢又は盗撮冤罪で名誉毀損又は虚偽告訴で訴えるケースはそう多くありませんし、簡単なことではありません。

冤罪の現場で瞬間的に故意があるかどうかなんて分かりようがありませんし、仮に、後日、故意であることが判明し、名誉毀損罪又は虚偽告訴罪で訴えるにしても、加害者の内心(故意)を証明できるだけの証拠を集めなければなりません

つまり、加害者が虚偽の申告をした時点で、痴漢を疑われた人が刑事処分を受けるという認識・認容が必要であり、被害者(又は捜査機関)はこうした事実を立証しなければなりません。

 

身の潔白を証明することが重要

もし仮に冤罪であっても、逮捕・勾留されてしまえば、最長で23日間は身柄拘束を受ける可能性があります。そうならないため、また身の潔白を証明するためにも、一貫して痴漢又は盗撮をしていないと主張することが大事で、弁護士を呼ぶことも必要でしょう。

冤罪を被せられた際には、ご紹介した名誉毀損や虚偽告訴以外にも、民事上の損害賠償請求ができる可能性もあります。

どの手続が適切なのか、いずれの手続を選択するにしても、証拠が鍵となり、弁護士のサポートが必要不可欠となります。

冤罪被害で悩まれている場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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