【令和7年6月1日改正刑法施行】懲役・禁錮刑は「拘禁刑」へ
令和4年6月13日、刑法が改正され、これまで刑事罰として、懲役・禁錮がありましたが、これらに代わる刑事罰として「拘禁刑」が創設されました。
【改正前】懲役刑と禁錮刑
改正前の刑法では、刑事施設に収容される刑として、懲役刑と禁錮刑に形式的に区別されていました。
懲役と禁錮は、いずれも刑務所といった刑事施設に拘置して執行される点と、無期・有期の場合があるという点は共通ですが、懲役が所定の作業が課せられるのに対し、禁錮は課せられないというところで違いがあります。
拘禁刑の創設
拘禁刑創設の理由と目的
現行の刑法では、刑事施設に拘置する刑事罰として、懲役刑と禁錮刑がありますが、本来、懲役となった受刑者は所定の作業を行うことになる一方、禁錮受刑者は所定の作業を行う必要はありません。
しかし、刑事施設の長は、禁錮受刑者が作業を行いたい旨の申出をした場合には、その作業を行うことを許すことができるとある通り(これを請願作業と言い、作業報奨金が出ます。刑事収容施設被収容者処遇法93条及び98条)、禁錮受刑者であっても作業を自ら進んで行うことができます。実際、禁錮受刑者の多くが請願作業に取り組んでいるのが現状です。
拘禁刑となるのはいつから?
公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。
そして、政府はこの施行日を令和7年(2025年)6月1日とする政令を閣議決定しました。
そのため、拘禁刑が適用されるのは、令和7年6月1日からとなります。
応報的な刑事罰から改善更生に向けた刑事罰へ
今回、拘禁刑が創設されることによる影響としては、刑法上のほとんどの犯罪の法定刑が懲役から拘禁刑に変わることになります。
例えば、改正前の名誉毀損の法定刑は、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」となっていますが(刑法230条1項)、改正後は「3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。」(改正刑法230条1項)、となります。
ただ、改正の背景には、応報的な刑罰から社会復帰に向けた更生を目的とすることが大きいでしょう。