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AV新法における契約書に記載すべき事項と交付しなかった場合の罰則について

「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」、いわゆるAV新法が施行されて2年が経過しました(施行日は2022年6月23日)。

これまで当事務所には、AV新法に関して、契約の解除や契約書等の書面が交付されていないというご相談や、AV新法に対応する契約書の作成依頼又はリーガルチェックなど、出演者側、制作公表者側、双方からの相談が寄せられているところです。

 

 

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AV新法の規制対象となる性行為映像制作物とは

そもそも性行為とはどのような行為をいうのか、また性行為映像制作物とはどのような物をいうのでしょうか。

AV新法上、性行為とは、性交若しくは性交類似行為又は他人が人の露出された性器等(性器又は肛門)を触る行為若しくは人が自己若しくは他人の露出した性器等を触る行為をいうとしています(AV新法2条1項)。

こうした性行為を撮影した映像又は音声であって、その全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するもの性行為製造制作物となります(AV新法2条2項)。

したがいまして、一般的なAVであれば規制の対象となりますし、個人が制作したものであっても、審査団体による審査を受けていない作品であっても、これらは法律上は区別されていないので、やはり性行為映像制作物にあたると考えて下さい。また「人」とありますが、アニメやAIについては法律解釈上、性行為映像制作物となり得ることもあります。

ここで法が想定していない問題として起こり得るのが、カップルや夫婦など近しい関係同士の者が出演、撮影、公表する作品であった場合に、性行為映像制作物にあたるのかという問題です。これについては、今後の法改正や解釈が待たれるところですが、現状としては撮影態様や公表の方法などを考慮して、個別具体的に検討する必要があるでしょう。

 

出演契約に関する制作側の義務

 

 

出演契約

さて、制作側において、AVの出演者とAVの撮影、公表などの出演契約をする際には、作品(性行為映像制作物)ごとに締結しなければなりません(AV新法4条1項)。

そのため、例えば作品5本分まとめての契約や今後1年間に撮影する作品といった包括的な契約をすることはできません。

ここでも法が想定していない問題が起こるでしょう。例えば、3本立て1作品のようなチャプターが設けられている場合です。この場合も、作品の内容ごとに一体性があるのかなどを考慮する必要があるでしょう。

そして、この出演契約は、書面又は電磁的記録でしなければ効力を生じません(AV新法4条2項)。

 

記載しなければならない事項(AV新法4条3項各号)

 

ご覧の通り、出演契約書に記載しなければならない事項は多くあり、モレがないように十分注意しなければなりません。

 

出演契約に係る説明義務

 

制作側には、出演契約自体の義務のみならず、こうした事項についての説明義務が課せられています(AV新法5条)。

制作側は、これら説明事項を、出演者がその内容を容易かつ正確に理解することができるよう、丁寧に、かつ、分かりやすく、行わなければなりません(AV新法5条2項)。もちろん、出演者を誤認させるような説明その他の行為をしてはなりません(AV新法5条3項)。

 

出演契約書等の交付等義務

制作側は、出演契約書に記載すべき事項を正確に記載し、かつ出演者が理解できるよう丁寧かつわかりやすく説明しなければなりません。

この他にも、制作側は、速やかに、出演者に対し、出演契約書等を交付し又は提供しなければなりません(AV新法6条)。

 

説明義務・交付義務に違反したら?

AV新法が制作側に課している義務は以上の通りですが、制作側がこれら義務に違反した場合については、6月以上の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこの両方に処せられます(AV新法21条)。

 

 

両罰規定もある

さらに、両罰規定として、法人の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、説明又は交付義務に違反した場合には、行為者のほか、その法人に対しても、同じ6月以上の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこの両方に処せられます(AV新法21条2号)。

 

最後に

冒頭でもご紹介した通り、AV新法は、令和4年(2022年)6月23日以降に締結された出演契約、撮影、公表について適用されます。

つまり、令和4年6月23日以降に締結された出演契約については、制作会社側にご紹介した義務などが課せられています。

製作側が説明するにあたって出演者にわかりやすく説明しなければならない、契約書を交付しなければならない、など注意点もありますが、契約書に記載すべき事項については漏れがあれば民事上の契約の効力を失うことになりかねず、そうならないためにも弁護士によるリーガルチェックを相談・依頼することも一つでしょう。

出演者側においても、説明を受けていない、契約書をもらっていないなど制作側の義務違反があるような場合には、速やかに、契約書の交付を求めるなり、契約を取消すことができるので、弁護士に相談することをお勧めします。

 

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