SNS型ロマンス詐欺被害に遭ったらお金を取り戻すことはできる?刑事告訴すべき?
近年、インターネットやSNSが発展したことにより、見知らぬ人と繋がることができるようになりました。特に男女の出会いの場として主流になっているマッチングアプリでは、ロマンス詐欺被害に遭うリスクが潜んでいることもあります。
警察庁によると、令和6年1月から6月までに、接触ツールとしてマッチングアプリが全体の4割近くを占めており、詐欺行為が行われる主な連絡手段としてLINEが挙げられています。
ロマンス詐欺とは
相手の恋愛感情につけこんで金銭を騙し取る詐欺行為の種類の一つです。
ロマンス詐欺の多くの手口が、マッチングアプリで接触し、その後LINEなど別のメッセージツールに移行します。そしてLINEに移行してからも好意を抱かせるような言動をしてきます。
例えば、初めのやり取りで「あなたのことが好き」、「あなたと一緒に暮らしたい」と言いながらも、「投資をして二人のためにお金を稼ごう。」、「すぐにでも会いに行きたいけど家族が病気で治療費が必要なの。」、「かなりの額の借金を抱えているから、完済できるまでずっと働かなきゃならない。」などなど、あの手この手であなたからお金を引き出そうとします。
客観的に見れば、会ったことすらない人、ましてややり取りして日が浅い人からお金の話を持ち出されたら不審がるでしょう。しかし、そこはあなたに事前に好意を抱かせておくことで、あなたは何も疑わずに信じてしまうことが多いのです。
外国人による国際ロマンス詐欺も
詐欺師は日本在住の日本人とは限りません。中には、海外在住の日本人又は外国人になりすまして、接触してくることもあります。手口としては概ねロマンス詐欺と同じですが、送金については国際送金や海外送金といった海外を思わせるワードがあれば、国際ロマンス詐欺である可能性は高いでしょう。
ロマンス詐欺の手口
一般的に、ロマンス詐欺はこのような手口であなたからお金を引き出すものですが、詐欺の手口は巧妙化しており、この手口によるものだと認識していたとしても、また新たな手口によるロマンス詐欺被害もあり得るところですので、知らない人に安易にお金を渡さない、振り込まない、投資の話が出たら注意する意識をしておくことが重要です。
また、(返信の頻度は減るものの)最後の最後までLINEなどでは連絡は取れており、弁護士に相談して初めて詐欺だと気づくケースも少なからずありますので、自分のみで判断せず、弁護士や身近な方に相談してみて客観的な意見をもらうことは非常に大事です。
ロマンス詐欺被害に遭ってしまったら?
しかし、いくら注意をしていても、詐欺被害に遭ってしまうことはあり得ます。
その場合にお金を取り戻すことはできるのでしょうか。
確かに、いくつか被害回復の方法はありますが、結論から言いますと、お金を取り戻すことはかなり難しい(ほとんど不可能)と思ってください。
当事務所で取り扱った過去の事例で言いますと、ロマンス詐欺被害額が5000万円以上で刑事告訴したところ、その後の報道で加害者が逮捕されました。報道によると、加害者は得た被害金をホストクラブに使い込んでいたようで、このような状況では仮に加害者に別途民事訴訟を提起して勝訴したとしても、被害金の一部どころか回収できる見込みは限りなく低いと言わざるを得ません。
さらに、国際ロマンス詐欺によくありますが、振り込んだお金は基本的には数十分以内などのうちにすぐに引き出されたり、マネーロンダリングのため海外の口座に移されたりするなどお金の行方がわからなくなります。振込先口座の名義人が犯人であることは非常に稀であり、詐欺師は他人名義の口座に振り込ませるのが常套手段です。そうすると、口座名義人に被害の弁償を求めても、詐欺には直接関与していないとして返金される保証はありません。さらに、最近では仮想通貨で支払わせることも多く、その場合、銀行口座への振込の事例よりより一層捜査することは厳しくなります。
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ロマンス詐欺被害の回収が難しい理由
加害者の特定が難しい
被害回復が困難である最大の問題は、詐欺師がどこの誰で、どこにいるのか、特定することが極めて困難だということです。
詐欺師からすれば、詐欺をするにあたって、匿名で接触できるSNSはかなり有用性の高いものであり、名前を始め詐欺師に関する本当の情報を、詐欺行為をするために記載するなんてことはあり得ません。
使用している携帯電話も他人名義、口座も他人名義、住所も嘘でどこの誰かもわからないということで警察もお手上げのケースが多いです。
詐欺罪の立証は難しい
以前の記事でも記載しましたが、詐欺であることを立証するためには、加害者の内心を証明できるだけの証拠、つまり犯人が初めからあなたを騙すつもりだったという事実を証拠に基づいて立証しなければなりません。
ただ、あくまで難しいであって、法律上または事実上不可能というわけではありません。確かに、加害者の内心は目で見てわかるものではありませんが、LINEのやり取りの履歴や送金記録、振込先の銀行口座など客観面からの証拠を固めていけば、加害者の内心(主観面)を裏付ける証拠となり得ます。
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振り込んだ口座から移されている可能性が高い
先ほどもご紹介した通り、振り込んでしまったお金は犯人によってすぐに引き出されることがほとんどで、強制執行で差し押さえたとしても、残っていた金額は数千円だったというケースはよくあります。この辺りもロマンス詐欺の被害金の回収が難しいと言われている理由です。
更に、他の被害者もその口座へ振り込んでいることも多く、口座凍結時点で残高がある程度残っていたとしても他の被害者よりいち早く権利行使して口座残高を差し押さえる必要があります。
弁護士への依頼は慎重に検討するべき
ロマンス詐欺被害は多発しており、当事務所にもロマンス詐欺に関するご相談が多く寄せられています。
ここまでご紹介したと通り、ロマンス詐欺の被害金を取り戻すことは極めて困難と言わざるを得ず、たとえ弁護士に依頼したとしても、状況は変わりません。
万が一回収できたとしても、数万円が限界で、弁護士費用との兼ね合いで費用倒れになることは明らかです。
それにもかかわらず、ロマンス詐欺の救済をうたい非弁行為に名義貸しをし、多額の着手金を得たとして、弁護士が逮捕された事例があります。
ロマンス詐欺被害に遭った場合は、被害回復が困難であることを理解された上で、信頼のできる弁護士に相談することをお勧めします。
なお、当事務所では一部回収が現実的に見込めるケースを除く、費用倒れになるおそれがある面から、ほとんどのご依頼をお断りしております。もっとも、被害金の回収ではなく、犯人に対する処罰を求めるため刑事告訴を検討したい場合は、被害態様や証拠の有無、程度などからアドバイス致しますので、お気軽にご相談ください。
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