COLUMN

コラム

保釈とは|保釈に必要な条件と保釈請求が通る確率は?~わかりやすく解説

犯罪の嫌疑がある者(被疑者)は捜査機関の捜査や取調べの後に起訴されると、被告人として刑事手続を踏むことになります。

ただ、逮捕されてから、仮に勾留満期まで身体拘束を受けたとすれば最長で23日間、そこから起訴されて実際に裁判が開始するまで通常1ヶ月前後掛かり、判決言渡期日まで更に最短2週間程度~1ヶ月程度は掛かります。

時期によっては裁判所の都合で年末年始は裁判期日を入れられないため、年を越してしまうこともあります。

また、大きな事件や否認事件等は年単位でかかることも有り得ますが、保釈を請求しないと、その間は基本的に留置場又は拘置所での身柄拘束を受け続け、そこで過ごすことになります。身柄拘束が続けば日常生活にも大きな影響を及ぼすことになるでしょうし、被告人の精神状態としても大変辛いものがあります。

 

 

保釈とは

保釈とは、保釈保証金を裁判所に納めること、指定条件を遵守することを条件として、被告人の勾留を停止することをいいます。保釈請求は被告人本人やご家族の方も請求できますが、保釈を認めてもらうためにも弁護士が保釈請求書を法的に有利な事情及び証拠を添えて作成し、裁判所に申請するのが一般的です。東京地裁本庁であれば刑事14部が提出先になります。

保釈は被告人(起訴された後の被疑者のこと)の勾留を停止することを目的とするものですので、起訴された後でなければ請求することができません。起訴される前であれば、別の手続である準抗告勾留取消請求を行うことが多いです。

 

保釈と釈放

似たような言葉で、保釈と釈放があります。

一般的に、釈放とは、身体拘束から解放されることを意味します。

一方で、保釈は、起訴後に勾留されている被告人に対する身体拘束を一時的に解放することを意味します。似た言葉ではありますが、身体拘束から解放される期間が一時的なものであるかどうかの違いという認識で十分です。

 

釈放のタイミング

 

 

刑事手続の中では、さまざまなタイミングで釈放されます。

例えば、逮捕後かつ勾留前の段階であれば、極めて軽微な犯罪であった場合、そもそも犯罪の嫌疑がない場合、また勾留せずに在宅事件として手続を進める場合には釈放されます。

また勾留後、起訴を経て、裁判が始まる前の段階では、保釈請求によって釈放されることがあります。

さらに裁判で有罪判決となってしまった場合でも、罰金のみ、又は執行猶予付き判決であれば、判決言渡し後直ちに釈放されます。

 

保釈の流れ

さて、釈放のタイミングでも見ましたように、保釈は逮捕・勾留されている事件(身柄事件)で起訴された後に請求することになります。

では、保釈手続の流れをみていきましょう。

まずは資料を添付した上で(必要な資料などは後述します。)、保釈請求書を裁判所に提出します。

受付された曜日や時間によって多少の変動はありますが、概ね翌日か遅くとも2,3日後には保釈請求に対する回答が裁判官からされます。その間、裁判官は保釈を認めるか判断・検討するために、担当検察官に意見を求め、事案によっては弁護人とも面談します。

裁判官から保釈相当の連絡があった場合、保釈保証金の金額が決定され、納付します。

保釈保証金を納付した後は、裁判所と検察庁での諸手続を経て、検察官の釈放指揮書が留置場に届いた段階で釈放されます。

 

 

保釈保証金はいくらくらい?

そもそも保釈保証金は、保釈を許す場合には金額を定めなければならないとされてます(刑事訴訟法93条1項)。また保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮することになっています(同条2項)。

気になる保釈保証金の金額ですが、一般的には、150万円から300万円程度の範囲に収まることが一番多いといわれています。

ただし、条文の規定にもある通り、犯行の悪質性や被告人本人の収入などにより、保釈金は大きく変動する場合があります。

この保釈保証金は、無事に裁判が終われば判決が言い渡されて、数日から数週間で全額返ってくるのが基本です。ただし、保釈中に守らなければいけないこと(保釈決定許可書に記載されている「指定事項」)を破ったりすれば、検察官の請求又は裁判所の職権で保釈が取り消され、保釈保証金も全部又は一部没取されます

事件終了後に返金されるとしても、保釈金は数百万円に及ぶことから、すぐに支払える金額ではない金額であることもあります。保釈保証金は分割払いはできず、支払えなければ保釈手続はストップするか、最終的に保釈が認められないこともあります。

保釈保証金が用意できないときは、親戚等から借りられれば問題ありませんが、それも難しい場合は日本保釈協会の立替制度を利用することができます。詳しい手続は、協会に直接問い合わせてください。

 

保釈が認められるための法律上の条件

権利保釈

保釈は、勾留されている被告人に認められた法律上の権利です。

そして、裁判所は、保釈請求があったときは、一定の事由に該当しない限り、請求を認め必ず釈放しなければなりません。これを権利保釈といいます(刑事訴訟法89条)。

一定の事由、つまり権利保釈が認められない事由としては次の6つがあります。

 

①②が掲げる罪について補足すると、例えば、殺人罪(刑法199条。死刑又は無期若しくは5年以上の懲役)、傷害罪(刑法204条。15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、傷害致死罪(刑法205条。3年以上の有期懲役)、強盗罪(刑法236条。5年以上の有期懲役)、不同意性交等罪(刑法177条。5年以上の有期拘禁刑)、覚せい剤の所持・譲渡・譲受(非営利目的であれば、覚せい剤取締法41条の2第1項。10年以下の懲役)、危険運転致死傷(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条。致傷は15年以下の懲役、致死は1年以上の有期懲役)などがあります。

 

裁量保釈

 

権利保釈が認められなくても、裁判官の裁量により保釈されることもあります。これを裁量保釈といいます。

具体的には、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができます(刑事訴訟法90条)。

 

権利保釈と裁量保釈の関係

保釈するにあたっては、まずは権利保釈が認められない事由があるかを検討し、6つの事由のうちいずれかでもあてはまるものがあれば、裁量保釈による保釈請求をすることになると思います。

 

義務的保釈

法律上、保釈には、権利保釈や裁量保釈の他に、義務的保釈があります。

義務的保釈とは、勾留が不当に長くなってしまった場合に限り、裁判所の職権で保釈が認められます。ただ、義務的保釈が認められたケースは実務上ほとんどありません。

 

 

その他の条件(添付資料)

以下は、法律上の保釈の要件として挙げられているものではありませんが、権利保釈又は裁量保釈が認められるために、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことと密接に関連するものです。

 

身元引受人

身元引受人は被告人を指導監督する立場にあり、被告人が検察からの呼び出しに応じさせなければなりません。そのため、身元引受人になるのは、現実的に被告人の監視監督を出来る者、すなわち同居の親族がなることが多いです。被告人が一人暮らしで、普段は同居しない親族が身元引受人になってくれる場合は、被告人が保釈後その親族の下で生活することを主張する場合もあります。

 

被害者との示談成立

起訴されても、被害者との間で示談が成立すれば被害は回復されたという客観的な証拠になりますので、保釈請求が通る可能性は高まります。

起訴前の示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありませんが、仮に刑事裁判になったとしても、示談成立の事実が考慮された結果、本来実刑判決相当であるものが執行猶予付判決となる可能性も高まります。

 

本人の反省

保釈許可を得やすくするためには、本人の反省文誓約書も保釈請求書の添付資料として提出することがあります。

 

保釈が通る確率は?

実際のところ、保釈請求に対して保釈許可された割合はどの程度なのでしょうか。

令和5年版の犯罪白書によれば、令和4年の保釈率は32.2%でした。低いように感じるかもしれませんが、この割合は平成15年(12%~13%程度)以降上昇傾向にあり、保釈請求が全く通らないというわけでもなさそうです。

もっとも令和4年の32.2%は犯罪の種類関係なく、一律での割合であり、実際の保釈手続は犯罪の種類や前科の有無、犯行の悪質性などから判断されますので、確率は参考程度にとどめておくべきでしょう。

 

保釈中に守らなければならないこと

保釈は、あくまで一時的に身柄を解放する制度です。

そのため、保釈決定がされる際には、条件(指定条件といいます。)が付されることがあります。

一般的に、保釈許可決定書には、主文で、「被告人の保釈を許可する。保証金額は●円とする。釈放後は、下記の指定条件を誠実に守らなければならない。これに違反したときは、保釈を取消され、保証金も没取されることがある。」等と記載されます。

もちろんその条件だけを守っておけばいいということでもありません。保釈中に共通して守らなければいけないことは、まず裁判所や検察からの呼び出しには必ず応じなければなりません。保釈は逃亡のおそれがない、裏を返せば刑事裁判等への出頭が必ずできることを意味していますので、出頭に応じなければ再度身体拘束をされますし、保釈許可も取り消され、保釈保証金も没取される可能性が高いです(また、身元引受人に対しても、身元引受人は呼び出し応じさせる立場でもありますので、顔に泥を塗る結果となります。)。

次に、被害者や事件関係者と接触しないことです。直接被害者に謝罪したい気持ちがあってもダメです。その場合は弁護士を通して謝罪文を差し入れる方法をとりましょう。

最後に、無断で引っ越しをしないことです。保釈請求書には、被告人が保釈後どこで生活していくのかを記載することがほとんどです。それを見て裁判官は保釈許可をします。そのため、裁判所はもとより、弁護人にまで黙って引っ越しをした場合は保釈が取り消されることになります。もちろん事後報告もダメです。引っ越し、長期の出張や海外旅行の際には、裁判所へ届け出て許可を得なければなりません。

 

 

保釈による釈放を求めるなら弁護士に相談を

保釈による釈放は、あくまで身柄拘束から一時的に解放されるものにすぎません。しかし、保釈が認められれば、ある程度の制約を受けるものの、日常生活を過ごすことができます。

そして、保釈手続を行うには弁護士にやってもらうことが事実上必要不可欠になるでしょう。裁判官に保釈を認めてもらうには、単に逃亡のおそれはないからというだけでは到底認められません。保釈請求書には中身のある、保釈が認められるべき説得力のある内容にしていかなければなりません。

保釈によって釈放される可能性をより高めるためにも、弁護士に相談することをお勧め致します。

当事務所では、これまで保釈を始め準抗告など早期の身柄釈放に向けた手続を行い、多くのケースで認められた実績があります。またこれ以外にも示談を締結し、最終的に不起訴処分を得たケースもあります。

刑事事件全般について、お悩み、お困りの方は早めにご相談ください。

 

 【関連記事】 👇こちらもあわせて読みたい
♦ 準抗告による身柄解放並びに示談成立により不起訴処分を得た事例

♦ 麻薬及び向精神薬取締法違反で勾留中の被告人について、1回目の保釈申請で保釈が認められた事例

 

コラム一覧