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国際ロマンス詐欺の被害金の回収可能性

被害金の回復は現実的には難しく、弁護士に依頼しても多くの場合ほとんど回収できていない

最近、各弁護士会から国際ロマンス詐欺案件に関して、注意が出ました。

https://www.toben.or.jp/know/iinkai/hibenteikei/news/post_7.html

上記は東京弁護士会のホームページですが、弁護士会の調査によると、「多くの場合、被害を全く回収できないか、ごく少額の回収にとどまることが多い」とのことです。

実際、当事務所でも国際ロマンス詐欺案件のご相談はお断りしておりますが、それは、国際ロマンス詐欺の以下の特殊性にあります。

①国際ロマンス詐欺では言葉巧みに預金をビットコイン等の暗号通貨(仮想通貨)に変えるよう指示され、それを送金してしまっていることが多いが、暗号通貨の場合には犯人が特定することが非常に困難であること。

②現金を日本の口座間で振込送金しているケースもあるが、そのような場合、受け手の口座は第三者から購入した口座を用いていることがほとんどであり、調査を進めてみても当該第三者が出てこない(そもそも、預金開設段階で用いられた身分証明書が偽造されたものであり、住所地もまったくのデタラメであることも多い。)。

また、口座名義人が実在する人物であることが確認できた場合でも、当該第三者は闇金からの借り入れを清算するために口座を作らされていただだけであったり、ネットで数万円で口座を売却する闇バイトによって売却しただけの無資力者であることも多く、その場合、その者から回収することは事実上不可能であること。

などの理由から、依頼人の方から費用をいただいても、実際に回収することができず、更に弁護士費用が無駄になってしまうということになる可能性が高いため、当事務所では、一部回収が現実的に見込める事案(過去に当事務所でも成功例のある、後述する特定の要素を含む事案)を除き、国際ロマンス詐欺案件のほとんどすべての受任自体をお断りしております。

ではどうしたら良いのか?泣き寝入りしかないのか?

まずは、弁護士ではなくすぐにお近くの警察署へ相談に行き、告訴を行いましょう。捜査能力については弁護士よりも圧倒的に警察の方が優れており、逮捕など強制力も有しておりますので、警察が動いてくれ、犯人の身元が特定、逮捕されれば返金してくれる可能性も飛躍的に高まるためです。

同種の事件での被害者が多数近接したタイミングで被害届を提出していたり、犯人に紐づく堅い証拠があるような場合には警察が動いてくれることもあります。

しかし、多くの場合、警察にわざわざ赴いてLINEのやり取り履歴や振込履歴などを見せても、「民事不介入だから警察では取り扱えない。弁護士に相談してみてくれ。」、「証拠が足りないからこれじゃ警察としては動けない。」等(←※これらの警察の説明はすべて嘘です。)ともっともらしい説明をされ、軽く話だけ聞いてもらって追い返されてしまうと思います。

(※犯人と未だに連絡が取れていても、金銭を詐取するつもりで欺罔行為を行い、それを被害者の方が信じて金銭を交付した時点で詐欺罪は既遂となります。「証拠が足りない」との警察の主張については呆れるしかありませんが、証拠を集めるのが警察の仕事です。)

ロマンス詐欺やFX詐欺、仮想通貨詐欺などでは被害者一人あたりの被害金額が数百万円~数千万円という事案が非常に多く、自らが詐欺に遭っているのかどうなのかも判断できずに弁護士に連絡してくる方も結構いらっしゃいますが、そのようなお電話の事案を聞くと、当職の判断ではまず間違いなく詐欺であろうという事案がほとんど100%です。

そして、このような多額の被害金額で、ほとんどの方にとっては人生が変わってしまうほどの絶望感を覚える金額にもかかわらず、それでも、警察は多くの場合動いてくれないのです。その理由は、昨今の大規模詐欺では海外組織や海外法人が噛んでいることが多く、捜査を尽くしても結局犯人が見つからなかったり、犯人を見つけられたとしてもその前提となる捜査として多大なる警察の捜査業務が必要であることから、「事件として受けたくない。」というのが本音だと考えられます。

警察の被害者に対する対応にはあまりに酷いものがありますので、どうしても犯人を許せずせめて警察にきちんと捜査をしてもらいたいという方は、刑事告訴を行うのがよろしいと思われます。

刑事告訴については別の記事で執筆しておりますので、目を通してみてください。

 

 

回収可能性が低いのに、高額の着手金を取る事務所には要注意

前述のように、実際問題、国際ロマンス詐欺では被害金額を回収できる可能性は非常に低いです。それにも関わらず、「必ず回収できる。」「●●%もの高い回収率を誇ります!」等と謳って広告を出している法律事務所および弁護士には特に気をつけてください(そもそも、成果を保証すること自体が、弁護士職務基本規程第29条2項に違反する広告です。)。

※弁護士職務基本規程第29条2項「弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け負い、又は保証してはならない。」と規定されている。

国際ロマンス詐欺で被害金を回収できる可能性がある場合

実例として、国際ロマンス詐欺で1000万円近くの被害金額を回収できたケースとして、犯人に指示された振込先口座が法人名義での預金口座を指定された場合があります。

法人名義の預金口座が詐取した金員の受け口として利用されている場合、個人の場合と違って法人は登記が必要なので、法人自体存在しないというケースはほとんど考えられません。

そして、当該法人には当然、被害金を受領する法律上の原因がありませんから、民法703条に基づき、犯人ではなく法人を被告として、不当利得返還請求を行うことで、実際に被害金を回収出来た事例はあります。

ただし、これはあくまで全体から見れば運良く回収出来た一例であり、国際ロマンス詐欺においては回収は非常に困難であることは弁護士会の調査でも明らかになっていますから、二次被害(最後の頼みの綱とした弁護士に払った着手金も結局無駄になってしまい、1円も回収できずに終わってしまう可能性が非常に高い)に遭わぬためにも、弁護士への依頼を本当にすべきか否かは慎重に検討すべきです。

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