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刑事告訴と刑事告発の違い・親告罪について解説

最近のニュースでは、不同意性交に関する刑事告訴あるいは虚偽告訴、誹謗中傷に対する刑事告訴、第三者による刑事告発などなど、刑事告訴又は刑事告発に関する話題が多いように感じます。

当事務所でも、性犯罪、詐欺罪、名誉毀損罪、業務妨害罪といった様々な罪に関する刑事告訴のご相談又はご依頼を受けてきました。

しかし、似て非なる刑事告訴刑事告発の違いについてイマイチわからない方もいらっしゃると思いますので、今回は両者の違いから、違いの一つである親告罪についてもご紹介したいと思います。

 

刑事告訴と刑事告発

告訴とは、法律で規定された告訴できる人が、警察や検察といった捜査機関に対し、犯罪被害に遭った事実を申告し、犯人に対して処罰を求める意思表示をすることをいいます。

刑事訴訟法では、「犯罪により害を被った者は、告訴をすることができる。」としています(刑事訴訟法230条)。

 

一方で、告発とは、法律で規定された告訴できる人以外の人が、捜査機関に対し、犯罪被害に遭った事実を申告し、犯人に対して処罰を求める意思表示をすることをいいます。

刑事訴訟法では、「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」としています(刑事訴訟法239条1項)。

 

誰ができるか

両者の定義と法律上の根拠規定をご紹介しましたが、ここでの両者の違いは、告訴又は告発できる人が誰なのかということです。

つまり、法律上、告訴は、「犯罪により害を被った者」、要するに被害者がすることができるのに対して、告発は誰でもすることができます。

 

告訴でしか犯人の処罰を求めることができない罪がある

告訴と告発は、誰ができるかという違いはありますが、犯罪被害に遭った事実を捜査機関に申告し、犯人の処罰を求める点は共通しています。

しかし、告訴と告発の違いは、誰ができるかという点だけではありません。

告訴がなければ刑事裁判の開始による犯人の処罰をすることができない罪があります。それが親告罪です。

 

親告罪とは

親告罪とは、告訴がなければ公訴提起(検察官が犯人を起訴すること)できない犯罪をいいます。詐欺罪や名誉毀損罪といった法定刑があるものではなく、罪の分類上の呼び名という認識で問題ありません。

 

親告罪とされている罪

 

このように現行法(執筆時点)における親告罪とされている罪は、主に被害者の名誉に関する罪事件が軽微な罪家族に関する罪著作権など公益より私益的要素が強い罪などがあります。

何故これら罪が親告罪とされ、犯人の処罰を求めるためには告訴が必要なのかと言いますと、名誉毀損罪など名誉に関する罪は最終的に犯人が起訴されれば刑事裁判で被害者のプライバシーに関しても公になるおそれがあり、それは被害者からすれば望まないことかもしれません。こうした反面があることも踏まえて、親告罪とし、被害者が望む場合に限って検察官が起訴しうることになっています。

また、事件自体が軽微なものに関しては、捜査機関に人員的な限界があることもそうですが、事件化する前に被害者と加害者が示談を成立させて事件が終了するケースもあれば、そもそも被害者が大事に(刑事事件化)するのを望まないケースも実際上多くあります。仮に告訴した場合には、告訴をした被害者自身が捜査機関の事情聴取等の協力(被害者調書の作成等)を必ず受けなければならないこともあり、被害者にとっても負担が生じるため、被害者が望む場合に限って捜査機関が刑事処分することになっています。

さらに、親族間の罪に関しては、本来的に「法は家庭に入らず」との考え方の下で民事不介入の立場から家族間で解決することが望ましいという考えがあります。そのため、捜査機関が積極的に介入せずに、告訴を待って、捜査ないし処分をしようということになったのです。

 

親告罪の告訴には期間制限がある

親告罪に関しては、告訴がなければ公訴提起することができませんが、告訴期間というものがあります。

つまり、親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月を経過したときは、することができません(刑事訴訟法235条本文)。「犯人を知った」について程度が難しいかもしれませんが、一般的に、犯人の氏名や住所まで特定する必要はありません。ただし、犯人と犯人以外の人を捜査機関が区別できる程度は必要です。

もっとも、告訴期間の制限は親告罪のみの話なので、親告罪以外の罪で告訴しようとするときは期間制限はありません(検察官が起訴できる公訴期間の制限はあります。)。

 

 

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刑事告訴は弁護士にご相談を

ひとえに刑事告訴するにしても、どのような罪で刑事告訴するのか、それが親告罪であれば期間を徒過していないか、証拠はどの程度あるのか、警察に受理してもらうためにはどのような内容が記載された告訴状又は告発状を用意すればよいのか、などなどいろいろなことを検討しなければなりません。

さらに、刑事告訴に関しては、捜査機関が受理すれば捜査開始が捜査機関に義務付けられますので、受理に至るまでのハードルは被害届よりも高いと言われています。

こうした実情の下、告訴するべきなのか、警察に受理されるのか、迷われたときは弁護士に相談しましょう。

当事務所では、被害内容を聴取し、証拠の有無と程度を聴取した上で、刑事告訴に関する疑問点についてアドバイス致します。ご依頼いただいた刑事告訴は全件受理に至っていますので、刑事告訴でお悩みの方はお気軽に当事務所までご相談下さい。

 

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