売掛金・スカウトバックに対する規制強化へ~風営法改正案の検討開始

はじめに
近年、ホストクラブを利用する女性客に対して、悪質なホストクラブでは、売掛金(ツケ払い)や立替金、前払い金制度を利用させて、女性客が多額の売掛金を支払うための費用を稼ぐために、風俗や売春を行うことが社会問題化しています。
こうした問題を受けて、令和5年12月5日は、新宿区と主要ホストクラブオーナーが話し合いを行い、現段階では業界内の自主的ルールとして、売掛金制度を廃止するとともに、こうした慣習をなくすことなどが話し合われました(その後も新宿区では売掛金禁止条例制定に向けて区議会に申し入れたそうですが、憲法上の職業の自由などの観点から制定は難しい面があり、現在まで制定には至っていません。)。
しかし、あくまで自主的ルールであるため、ホストクラブの中には、いまだ売掛金制度を採用しているところもあると聞きます。
またこうした売掛金の支払いに追われた女性客を、ホストが風俗店などに紹介し(あるいはスカウトへの紹介を通じて風俗店へ斡旋し)スカウト料として手数料(スカウトバック)を受け取るケースも多発しています。
もちろん、こうした紹介(あっせん)行為は職業安定法上の有害業務目的紹介行為として、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処せられます(職業安定法63条2号)。
しかし、この罰則はあくまで紹介行為自体に関する規制であって、スカウトバックを受け取ること、あるいは支払うことに対する規制は現行法上ありません。
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風営法改正に向けた動き
こうした売掛金問題又はスカウトバック問題に対して、警察庁は、風営法改正に向け、改正案の検討を開始しました。
令和6年10月2日に行われた有識者検討会では、改正案の内容として、主に、女性客の紹介を受けた風俗店側によるスカウトバックの支払いの禁止(これに違反した場合の営業停止処分なども含む)、風俗店などで勤務するよう強要することの禁止、虚偽の説明で高額な飲食代金を請求することの禁止などを盛り込むことを検討しているそうです。
近々風営法が改正されるかも
現時点では、あくまで改正案の検討であるため、改正法案が国会で成立するのか、いつ頃になるのか、といった具体的な目処はありません。
しかし、あおり運転を例にすると、2017年頃からあおり運転による死亡事故が相次ぎ、あおり運転が社会問題化したことで、2020年には道路交通法が改正され、あおり運転を含む危険な運転行為は妨害行為とされ、罰則も強化されました。
そのため、今回の社会問題化している悪質ホストクラブによる売掛金問題、及び悪質なホスト又はホストクラブによるスカウトバック問題に関しても、そう遠くない時期に、罰則が設けられるか、厳格化された風営法が改正・成立するかもしれません。