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刑事告訴の流れ~告訴すれば必ず犯人が逮捕されるわけではない

捜査の端緒となるものには、刑事訴訟法上、現行犯、被害届、刑事告訴(告発)、変死体の検視(刑事訴訟法229条1項)等があります。

中でも刑事告訴は、被害届とは違い、捜査機関に捜査が義務付けられることから、強制力がある一方で、捜査機関が受理に消極的であって一般的に難しいと言われています。

とはいえ、受理された後の手続について、告訴人が関与することはあるのか、また最終的に犯人が起訴されたか不起訴されたか知る術はあるのか、刑事告訴できる人(告訴権者)が刑事告訴をし、捜査機関において受理された後の手続についてご紹介したいと思います。

 

刑事告訴の流れ

まずは刑事告訴に端を発した刑事事件の大まかな流れをご紹介します。

 

このように、刑事告訴に端を発した刑事事件は、警察による捜査、必要に応じて逮捕、検察による取調べ、検察官による起訴又は不起訴の処分決定という大きなポイントを踏むことになります。

 

告訴状の作成と提出

告訴権者

刑事告訴することができる人、つまり告訴権者は犯罪により被害を受けた者に認められます(刑事訴訟法230条)。犯罪被害者が未成年者であった場合には、法定代理人にも認められます(刑事訴訟法231条1項)。

仮に、被害者が死亡してしまった場合には、被害者の配偶者、直系親族、又は兄弟姉妹にも認められます(刑事訴訟法231条2項)。

 

告訴状と証拠の作成

告訴状の作成にあたっては、その犯罪が成立するための構成要件に沿って記載しなければなりません。例えば、名誉毀損であれば、構成要件は公然、事実の摘示、社会的評価を低下させることですが、被害事実が当該構成要件に当たることを法的に主張していかなければなりません。

また証拠も必要となります。法律上、告訴する際に証拠が必要という規定はありませんが、実務上、証拠を添付するのが通常です(警察からも証拠の提出を求められます。)。

 

告訴の受理

刑事告訴をするにあたって、難所といわれるのが捜査機関が受理してくれるかという問題です。

本来であれば、告訴は受理されなければならないのですが、別の記事でもご紹介している通り、警察のマンパワーの限界や不起訴が見込まれる案件などの理由により、受理に消極的なところがあります。

よくある警察側の言い訳としては

・証拠がないから警察としては動けない

・犯人の名前が分からないから告訴状は受理できない

・詐欺かどうか現時点でははっきりと分からず、詐欺とまで断定できないから告訴状は受けられない

・とりあえず告訴状のコピーを取らせてもらい検討しますので、原本はお返ししますね(⇒告訴を受理したことにはなりませんので注意!)

このような言い訳をしてきますが、全部嘘です。決して信じないようにしましょう。

 

 

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警察と検察による捜査

受理された後の具体的捜査内容や方針(逮捕するのか等)については警察に任せるしかありません。

受理された後に、告訴人が手続に関与するのは、警察からの事情聴取(被害者調書の作成)くらいです。

捜査の結果、被告訴人(犯人)が逮捕されるかは、ケースバイケースですし、何より警察の判断によります。

手続上、警察は逮捕してから48時間以内に検察庁に送致することになっています。

送致後は、24時間以内に勾留請求されるか否かが決まります。

 

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検察による起訴又は不起訴処分

ここでも基本的に、告訴人が手続に関与することはあまりありません。ただし、被害者側調書は検察官の面前でも通常作成しますし、その際に検察官に対して被害者としての心情や、厳罰を望む旨の意見を直接検察官に伝えることは出来る場合もあります。

検察でも一通りの捜査を終えると、検察官は起訴するか(刑事裁判にかけるか)、不起訴にするかを決めます。なお、検察官は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができます(刑事訴訟法248条)。

ただし、被告訴人、つまり犯人が最終的に起訴されたか、不起訴にされたか、については速やかに告訴人に通知することになっており、また不起訴処分となった理由についても告訴人から請求があったときは告げられることになっています(刑事訴訟法260条及び261条)。

 

まとめ

ここまで刑事告訴の流れについてみてきました。

告訴人からすれば、受理されるかが大きなポイントとなり、受理された後の手続について関与することはあまりありません。

そのため、捜査機関に受理義務があるとはいえ、スムーズに受理されるためには、充実した内容の告訴状の作成と証拠の添付が重要となりますし、それ以上に、様々な理由をつけてくる警察に対して、理詰めで受理義務があることを受理してくれるまで何回でも説明し、場合によっては上級機関等に当該警察官の受理拒否行為が違法であるとして抗議を入れることも場合によっては重要になります。

受理後は、捜査機関によって手続が進む以上、必ず犯人が逮捕されるわけではありませんが、犯罪の中には、告訴がなければ公訴を提起する(起訴する)ことができないものもあります。

警察によって告訴が断られたなどでお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

当事務所では事務所開設以来、全ての受任事件について告訴を正式受理させることに成功してきています。

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