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陳述拒絶等の罪と刑事告発

はじめに

刑事告訴と言うと、名誉毀損罪とか、詐欺罪とか、刑法に規定されている犯罪について警察などの捜査機関に、刑事告訴する(被害事実を申告するとともに、犯人に対する処罰の意思表示をする)ことが思い浮かぶかもしれませんが、刑事告訴(告発)できる犯罪は刑法に規定されているものだけではありません。

今回はその中の一つである民事執行法が規定する財産開示手続における陳述等拒絶の罪と刑事告発についてご紹介したいと思います。

 

財産開示手続とは

相手の財産を把握するための手続の一つとして、民事執行法に定められています(民事執行法196条以下)。

債権者の権利実現の観点から、債務者の財産に関する情報を取得するための手続であり、裁判所に申し立てて、裁判所による実施決定がなされた後、申立人と開示義務者を裁判所に呼び出して、開示義務者から財産目録の提出を求めることになります。

 

陳述等拒絶の罪とは

財産開示手続は、債権者からすれば債務者の財産情報を把握するための貴重な手続といえます。そのため、開示義務者(債務者)は自身の財産を開示しなければなりませんが、中には呼び出しに応じず、裁判期日に出頭しなかったり、財産目録を作成・提出したものの、全くの虚偽の内容であったということがあります。ちなみに、開示義務者が財産開示期日に出頭しなかった場合は、手続は終了します。

こうした場合に備えて、民事執行法は、刑事罰を規定しています。

つまり、開示義務者が正当な理由なく、財産開示期日に出頭しなかったり、自身の財産を陳述しなかったり、裁判所又は申立人からの質問に対し、陳述しない又は虚偽の陳述をした場合は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(民事執行法213条1項6号)。

 

陳述等拒絶の罪で刑事告発するとなったら

さて、陳述等拒絶の罪で開示義務者を刑事告発するとなったら、誰が告発人になるのでしょうか。

刑事告訴と刑事告発の違いにも関連するところですが、告発人、つまり告発権者は、「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」ので(刑事訴訟法239条)、誰でも陳述等拒絶の罪で告発することができます。一方で、刑事告訴は、基本的に「犯罪により害を被った者」が刑事告訴することができます(刑事訴訟法230条)。

つまり、刑事告訴と刑事告発の大きな違いは、誰ができるかという点です。

ただ、実際に告発するとなったら、債権者(財産開示手続の申立人)になるでしょう。裁判所も告発の主体となり得ますが、期待しないというより、裁判所は告発しないだろうと思っていた方が賢明です。

 

刑事告発・財産開示手続は弁護士にご相談を

刑事告発は、誰でも行える手続ではありますが、告発状の記載にあたっては専門的な知識が必要となります。また証拠も添えて提出するのが実務の運用ですので、どういった証拠が必要なのか(陳述等拒絶の罪の場合で言えば、裁判所作成の期日調書など)をよく検討しなければなりません。

また告訴もそうですが、告発であっても、警察が消極的で告発が受理されなかったというケースはよくあります。もちろん警察には告訴・告発の受理義務があるので、粘り強く交渉していけばいつかは受理されるでしょう。

ただ、後に虚偽であることが判明した場合でも開示義務者が財産目録を提出したのであれば財産開示手続は終了しますし、開示義務者が期日に出頭しなかった場合でも財産開示手続は終了します。

当たり前ですが、刑事告発はこのような事態が発生したときに検討するものです。

財産開示手続を行った当初の目的は開示義務者(債務者)の財産を把握することです。刑事告発をしたからと言って、財産が開示されるものでもありません

財産開示手続と刑事告発手続は、全く別の手続になりますので、弁護士や法律事務所によって異なりますが、財産開示手続をして、後に刑事告発も依頼するということになれば、弁護士費用がさらに増えることになります。

費用倒れになる可能性があることも考慮した上で、財産開示手続や刑事告発手続について弁護士に相談されることをお勧めします。

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