性犯罪被害者が告訴を検討する前に知っておくべきこと
性犯罪被害に遭った場合、その後の対応をどうするかは非常に重要な決断です。告訴を考えるにあたり、被害者は多くの不安や悩みを抱えることが多いです。
今回は、性犯罪被害者が告訴を検討する際に留意すべき点とについてご紹介します。
告訴の際の留意点
告訴は法的手続ですが、被害者自身の心情や体調に配慮した上で告訴をするか決めることが重要です。告訴を考える際には、まず以下の点から考えてみましょう。
証拠の収集
性犯罪は犯人と一対一の密室において行われることが多く、目撃証言や録音録画がない場合が多い犯罪です。
それ故に、必ずしも証拠がない場合もありますが、以下ではこういった証拠があれば被害者側に有利に働くというものを挙げます(必ずしもこれらが絶対に必要なわけではありません。)
告訴をする際には、証拠は非常に重要です。特に、密室で行われた性犯罪の場合には、客観的な証拠が決め手となることも多々あります。
したがって、適切な証拠を収集し、被害後できるだけ早く警察に届け出ることで、後の法的手続がスムーズに運ぶことが多いです。
逆に、被害時から長期間が経過していて物証が何もないと、警察に行っても無下な対応をされることも多いです。
具体的な証拠としては、以下のようなものがあります。
・まず何よりも被害後すぐに警察に行くこと
これが最も大切です。被害者自身の供述や被害後の行動も証拠になり得ます。
被害者が性犯罪に遭い、その後にどのような行動(被害者としての合理的な行動)を採ったかという証跡は被害者の供述の信用性を裏付ける大変重要な証拠となります。
被害者からすれば、被害に遭った場合、一刻も早く犯人といっしょにいる状況から離れ、安全な場所に逃げ出したいと考えるのが合理的です。
したがって、被害者が被害に遭った時刻の直前や被害に遭ったあと、直ちにLINEで友人や家族に助けを求めた履歴があればそれは被害者の供述を裏付ける重要な証拠になりますし、
逆に被害者が被害後にも犯人と行動を共にし、一緒に食事をしたり宿泊をしたりしていれば、それは被害者としては合理的な行動ではないため、何故そのような行動をとった(そのような行動を採らざるを得なかった)合理的理由や説明が必要になります。
・物理的証拠
性犯罪被害の場合であれば、衣服に残った痕跡や傷、体内の精液などは、医療機関での検査を通じて確認することができます。唾液や爪に残った皮膚片などからでもDNAは採取可能です。
こうした物理的証拠は早期の身体検査によって証拠を保存することができますので、できるだけ早期に専門医を受診することが大切です。
特に事件当時の衣類は絶対に洗濯しないようにし、出来れば被害に遭ってすぐに警察に行くようにしましょう。
・デジタル証拠
犯人と事前・事後に連絡を取り合っていたような場合には、LINEやマッチングアプリ上のSNSのやり取りなどデジタルデータも証拠として重要です。速やかにスクリーンショットを撮影するなどして証拠保全を優先し、そのデータを保存することが重要です。
・目撃証言
目撃証言は証拠にもなり得ます。周囲の人などの目撃者からの証言は強力な証拠となります。もし近くに目撃者がいた場合は、協力を仰ぐことで、その証言が告訴後の手続において非常に役立つことがあります。
目撃者がいる場合には必ず目撃者の氏名や連絡先を尋ねて確保しておいてください。
時効の確認
性犯罪は、一般的に、犯罪の性質上、被害の申告がされにくいという面があり、被害が潜在化しやすいとも言われてきました。そこで、令和5年7月13日に施行された改正刑法では、性犯罪の公訴時効期間が延長されることになりました。
具体的には、時効期間は、被害に遭った時(18歳未満の場合は18歳になった時)から、①不同意性交等致傷罪は20年、②不同意性交等罪は15年、③不同意わいせつ罪は12年になりました。
精神的・身体的な負担
告訴の決断は非常に重く、被害者にとって精神的及び身体的負担が大きいことがしばしばあります。後ほどご紹介しますが、告訴が一発で受理されることは多くはありません。
場合によっては何度も警察署に足を運ばなければいけなかったり、新たな証拠の提出を求められることもあります。さらに、時効期間内であっても、犯行から相当期間経過しているようなケースでは、警察から「時間が経ちすぎている。」などと受理されないこともあります。
もちろん性犯罪の被害を受けた後は深刻な精神的ショックを受けることがありますので、カウンセリングや心理的ケアを受けながら告訴の手続を進めていく必要があるでしょう。
また被害を受け、身体的な傷を受けた場合は、必ず医療機関を受診し、医師に被害状況等をなるべく克明に伝えた上で、必要な治療を受けるとともに、診断書を作成してもらうことが大切です(診断書も証拠になり得ます。)。
弁護士によるサポートが必要不可欠
被害者が告訴をすることを決めた場合、もちろん一人ですることもできます。
しかし、被害届に比べて、捜査機関が告訴を受理すれば捜査を開始しなければならない義務が生じるため、受理されるまでのハードルは高いです。
また告訴状に記載する内容や必要かつ適切な証拠はどういうものかといったことは専門性がありますので、よりスムーズに告訴が受理されるためには弁護士のサポートが必要不可欠となるケースもあるでしょう。弁護士に依頼すれば窓口を任せられるので、精神的な負担は軽減できるでしょう。
性犯罪の被害者が刑事告訴を決断する前に、これらの点を深く理解し、慎重かつ迅速に準備することで、告訴をスムーズに進めることができます。また弁護士に相談・依頼すればこうした煩わしい手続を任せることができます。性犯罪の被害に遭い、刑事告訴をするかお悩みの方はお気軽に当事務所までご相談ください。
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