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強制執行による債権回収率

令和5年中の強制執行の取下げは全体の約8割

令和5年の司法統計によると、第101表民事執行既済事件数-事件の種類及び終局区分別-全地方裁判所は、不動産や債権その他財産権に対する強制執行の総数は14万8833でした。

このうち、取下げによって既済となった事件数は12万5718でした。

すなわち、不動産にしろ、債権にしろ、何かしらに対して強制執行を申立て、何らかの理由により取り下げたのがおよそ全体の84%にも及びます。

 

取下げをする(取下げをせざるを得なかった)理由

では、強制執行を取り下げる理由にはどのような事情があるのでしょうか。

債権に対する強制執行と不動産に対する強制執行では、事情が異なるようですので見ていきましょう。

 

債権その他財産権に対する強制執行

債権に対する強制執行の場合、判決文や公正証書などの債務名義に基づいて、例えば債務者の預金口座を差し押さえるとします。

強制執行を申し立てた後、裁判所から差押命令が発令され、銀行などの第三債務者から取り立てることができます。

 

令和5年の司法統計によると、債権等に対する強制執行の事件数は14万3400で、そのうち取下げによって終局となった事件数は12万2649です。全体のおよそ85%です。

つまり、令和5年中に終了した債権等強制執行手続のうち、約8割は取下げによって終了しているのです。

ではなぜ、8割もの事件が取下げになっているのかは、もちろん一部は差押えを食らった債務者が任意で全額支払ったからという事情やその他事情もあるでしょうが、

多くは空振り(銀行の口座に預金が全然入っていなかった等)か取立てが困難又は見込みがないから、と思われます。

債権者において、差押対象の預金口座残高が現在いくらあるのかなんて知らないケースがほとんどですし、知っていたケースでも債務者が事前に引き出してしまったというケースもあります。

また給料債権を差し押さえるにしても、債務者の勤務先情報を知っているケースもまた多くありません。

 

 

不動産等に対する強制執行

不動産に対する強制執行の場合、主な流れは、申立てをして、裁判所からその不動産に対して執行をする旨及び差し押さえる旨を宣言する開始決定が出され、法務局はその不動産の登記簿に差押の登記をします。

その後、売却の準備と実施、入札、開札を経て、最終的に買い手に所有権が移転します。そして、売却代金を申し立てた債権者などに配当します。

 

さて、令和5年の司法統計では、不動産に対する強制執行の事件数は5433で、そのうち取下げによって事件が終局したのが3069です。全体の56%です。

これを高い割合と捉えるかは人それぞれですが、ただ、実務上、債権等に対する強制執行に比べて、不動産に対する強制執行が取り下げられる主な理由は任意売却によって売却できたケースがほとんどです。

すなわち、債権者からすれば、強制執行をした最大の目的は金銭の回収ですから、競売により強制的に売却して得た代金で回収するか(相場よりも低額になることが多いです。)、任意売却により相場相当の価格で売却して得た代金で回収するか、

いずれにせよ全くお金を回収できなかったという事例は少なく、多くの場合で一定の回収は出来ていると思われます。

 

最後に

債権回収では、絶対に全額回収するという気持ちを持つより、全額にこだわりすぎず、取れる分だけきちんと回収するというスタンスでいた方がよいこともあります。

また財産開示や第三者からの情報取得を含め債権回収手続は、専門的な知識が必要となり、弁護士のサポートなくしては迅速かつ円滑な回収は図れません。

そうすると、弁護士費用も発生し、結果的に見れば赤字になるリスクは債権額が少額である場合には起こり得ます。

さらに、債務者が債務整理をすると、ますます全額回収の目処は立たなくなります。

債権の全額回収は基本的にそう簡単なことではないことを念頭に対応を検討する必要があります。場合によっては判決に至らずとも裁判上の和解や強制執行しなくても交渉で解決した方が満足的な回収を図れることもありますので、可能な限り早く弁護士に相談することをお勧めします。

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