債権差押命令書が届いた場合に会社がするべきこと

債権差押命令の発令
債権差押命令が発令されると、命令書が債権者と第三債務者に送付され、第三債務者がこれを受け取った後に、債務者(従業員)に送付されます。概ね債権差押命令書が債務者に送達されるまでは、2週間とされています。そして、債務者への送達日から1週間(給与債権の場合で、養育費等の請求を含まない場合は4週間)が経過すると、債権者は第三債務者から差押債権額の範囲内で取り立てることができますので、一般的には、債権者から取り立てに関する連絡をします。
差押命令を受けた会社の対応方法
裁判所から従業員に毎月支払っている給与を差し押さえる旨の命令書を受け取った場合、会社としての対応は次の4つです。
- 従業員に全額の給与を支払ってはいけない
- 金額の計算
- 債権者に陳述書を提出する
- 債権者に直接支払うか、法務局で供託する
全額の給与支払い禁止
債権差押命令を受け取った会社(命令書上の記載は第三債務者)は、まず対象となる従業員に対して給与を全額支払ってはいけません。これは裁判所によって、従業員(債務者)への弁済が禁止されるためです(民事執行法145条1項)。これに反して、従業員に全額支払ってしまった場合でも、債権者に対して「債務者に全額支払ったから後は直接取り立ててくれ。」と言うことはできません。また債務者から「直接話をしてくるから全額支払ってほしい。」と懇願されても応じてはなりません。どちらにしろ、債権者に直接支払うか、供託しない限りは、債権者から請求があれば二重に支払うことになります。
金額の計算
全額の給与を支払ってはいけないことがお分かりいただけたことを踏まえて、次に会社がやることは債権差押命令の対象となる金額を計算し、債権者に支払うべき金額と従業員に支払う金額をそれぞれ算出することです。
これは、債権差押命令書に添付されている差押債権目録の記載によって異なりますが、例えば、貸付金など一般債権であれば、給与(通勤手当を除く)から所得税、住民税、社会保険料を控除した残額の4分の1の金額(残額が月44万円を超えるときは、その残額から33万円を控除した金額)になります。
一方で、扶養義務等による債権であれば、給与(通勤手当を除く)から所得税、住民税、社会保険料を控除した残額の2分の1の金額(残額が66万円を超えるときは、その残額から33万円を控除した金額)になります。
これによって算出された金額が、差押え可能金額となります。
次に、差押債権目録に記載されている金額と比較します。
算出した金額が目録に記載されている金額よりも少ない場合(例えば、算出金額が20万円で、目録記載が30万円であった場合)、算出した金額(20万円)を従業員には支払わずに、債権者に支払うか、供託するかのどちらかになります。翌月以降も目録記載の金額に達するまでは同じ対応をします。
つまり、目録記載の金額に達するまでは、毎月の給与等の一部を債権者に支払わなければなりません。
陳述書を提出する
差押債権者が申立時に第三債務者への陳述催告を申し立てていた場合、債権差押命令書と一緒に陳述書が同封されていると思います。この場合は、陳述書の所要事項を記入して裁判所と債権者に送付します。所定の期間は2週間以内ですので、期限は守るべきでしょう。
債権者に直接支払うか、法務局で供託する
さて、会社が債権者に対する支払義務から免れるためには、債権者に直接支払うか、法務局で供託するかのどちらかしかありません。
陳述書に弁済する意思ありと記載して送付した場合は、それを受け取った債権者から取立ての連絡がくると思います。取立てと言っても反社的な取立てがされるわけではありませんので、ご安心ください。単に振込先口座などについて話をするのが一般的です。もっとも、債権者から会社(第三債務者)に直接連絡がくるのは、債権差押命令が債務者に到達してから4週間経過してからになります。後は然るべく振り込めば済みます。
また債権者に直接支払わずとも、法務局で供託することでも支払義務から免れることができます(民事執行法156条1項)。具体的な供託手続は法務局に問い合わせてください。
供託した後は、供託書正本を裁判所に送付します。
最後に
ここまでが債権差押命令書を受け取った会社の対応になりますが、先ほどもお伝えした通り、差押は差押債権目録記載の金額に達するか、債権者によって取り下げられるまで続きます。
会社の対応としては弁護士に相談する必要性はそこまでありませんが、対象となった労働者に対しては会社として事情の把握や然るべき対応をすることも可能性としてはあるでしょう。