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警察庁通達によるホストクラブ等接待飲食営業の広告及び宣伝の規制について

はじめに

売掛金問題、女性客を風俗店などに紹介し、そのスカウト料を受け取るスカウトバック問題などが社会問題化になり、これを受けて恋愛感情につけこんだ高額な料金の請求、色恋営業などを禁止行為として規制するなどした改正風営法が令和7年6月28日に施行されます。

今回の改正には、こうした売掛金問題や色恋営業に目が行きがちですが、改正風営法に関連して、ホストクラブの広告や宣伝についても、先日、警察庁からの通達が公表されました。

 

 

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風営法における広告及び宣伝の規制条文

改正前から、風俗営業者に対する広告及び規制に関する規定はあり、改正風営法でも維持されています(風営法16条)。なお、ソープランドやラブホテル、アダルトショップなどの店舗型性風俗特殊営業、デリヘルなどの無店舗型性風俗特殊営業、ネットを利用したアダルト画像送信営業などの映像送信型性風俗特殊営業、テレクラなどの店舗型電話異性紹介営業、無店舗型テレクラなどの無店舗型電話異性紹介営業(まとめて、「性風俗関連特殊営業」と言います。)のうち、店舗型性風俗特殊営業と無店舗型性風俗特殊営業は各営業以外の営業を営む目的をもって広告又は宣伝することは禁止されています(風営法27条の2、31条の2の2)。これら以外の性風俗関連特殊営業についても、街頭における広告及び宣伝が規制されています(風営法31条の8など)。

 

 【参照条文】風営法第16条(広告及び宣伝の規制)
風俗営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない。

 

現在の歌舞伎町におけるホストの広告

歌舞伎町に掲示されているホスト看板には、例えば、次のような謳い文句で広告又は宣伝されています。

  • 「〇年連続年間売上〇億円OVER!」
  • 「主任〇(ホスト名)上半期売上No.1」
  • 「〇(ホスト名)に溺れろ」
  • 「〇万円player」

 

警察庁の通達内容

令和7年6月4日に警察庁が発した通達(一部抜粋)によると、接待飲食営業に係る広告物のうち、先ほどの謳い文句での広告又は宣伝は、「著しく客の遊興若しくは飲食をする意欲をそそり、又は接客従業者間に過度な競争意識を生じさせ、営業に関する違法行為を助長するような歓楽的・享楽的雰囲気を過度に醸し出すものについては、料金に関する重大なトラブル等につながる歓楽的・享楽的雰囲気を営業所の外に拡散させるものである。」ということです。

加えて、「接待飲食営業においては、「ランキング制」等と称して接客従業者間で指名数、売上額等の営業成績を競わせ、営業成績上位者に表彰を行ったり、営業所内の役職を与えたりするなどして称揚する実態が見受けられるところである。そして、広告物に接客従業者の容姿と共にその営業成績を直接的に示し、若しくは推認させ、又は接客従業者間の競争を強調する文言を表示することで、客には自身が好意の感情を抱く接客従業者の営業成績を向上させるために高額の遊興又は飲食をする意欲をそそらせるとともに、接客従業者には自身の営業成績を向上させるためには違法行為をもいとわない意識を醸成させるような状態が引き起こされることとなる。」という見解を示しています。

 

つまり、「〇年連続年間売上〇億円OVER!」、「主任〇上半期売上No.1」、「〇に溺れろ」、「〇万円player」といった謳い文句による広告又は宣伝は、客に推しの接客従業者の営業成績を上げるためにより飲食代金を浪費させる意欲を持たせるのみならず、接客従業者に対しても自身の売上を伸ばすためには違法行為もやむを得ないという考えを持たせかねない、ということです。

なお、これは東京都内だけでなく、日本全国の各都道府県本部長宛の通達となっていますので、すべての都道府県内が対象の規制となります。

規制違反に該当する類型

通達では、広告及び宣伝の規制違反に該当する4つの類型と具体例を示しています。

1 接客従業者の営業成績を直接的に示す文言の表示

→具体例:「〇年連続年間売上〇億円OVER!」、「上半期売上No.1」、「〇万円player」など

 

2 営業成績に応じた役職の名称等の営業成績が上位であることを推認させる文言の表示

→具体例:「主任」、「総支配人」、「覇者」、「神」、「レジェンド」、「新人王」など

 

3 1及び2以外の「ランキング制」自体の存在、接客従業者間での優位性を裏付ける事実等の接客従業者間の競争を強調する文言の表示

→具体例:「SNS総フォロワー数〇万人」など

 

4 客に対して自身が好意の感情を抱く接客従業者を応援すること等を過度にあおる文言の表示

→具体例:「〇(ホスト名)に溺れろ」など

 

 

規制に違反した場合は行政処分を受けるおそれもある

風俗営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならないという禁止行為(風営法16条)なので、これに違反すれば行政処分を受ける可能性もあります。

具体的には、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害すると認めるときは、これらを防止するよう必要な指示を受け(風営法25条)、又は違反行為が著しい場合には、公安委員会から、営業許可の取消し、又は6月を超えない範囲内で全部又は一部の営業停止を命じられる可能性もあります(風営法26条)。

さらには、公安委員会からの行政処分にも応じない場合は、5年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又はこの両方が科されます(風営法49条4号)。

また、通達内では行政指導のほか、営業所(店舗)の構造及び設備の維持義務違反による指示処分等を検討する旨の内容が含まれておりますので、店舗内の調査も同時に行われる可能性もあります。

 

最後に

令和7年6月28日に改正風営法が施行され、主にホストクラブに対する規制はかなり強化されました。新たに追加された禁止行為として色恋営業やスカウトバックに目が行きがちですが、広告及び規制に関しても今回の改正を受けての警察庁からの通達はホストクラブからすれば無視できない内容でしょう。行政処分を受けずに、健全な営業をするためにも、ここで見直す良い機会かもしれません。

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