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サイバー犯罪の主な種類と適用される法律を解説

インターネットが普及している現代では、インターネットを利用した犯罪が多発しています。サイバー犯罪は、インターネットを悪用した犯罪の総称をいいます。

ただ、具体的にどのような行為がサイバー犯罪と言えるのか、行為ごとに適用される法律や罪名について解説します。

 

サイバー犯罪とは

上記の通り、インターネットを悪用した犯罪の総称をサイバー犯罪と言います。

インターネットを悪用するものですので、被害者において誰が自分に被害を負わせたのかはわからないことがほとんどです。加えて、インターネットの仕組み上、詐欺事犯や不正アクセス事犯に多いのですが、いくつかの(海外)サーバーを経由して、被害者または捜査機関側から追跡されないようにしている点もサイバー犯罪の特徴の一つです。

 

サイバー犯罪の犯罪類型

このような特徴を有するサイバー犯罪ですが、サイバー犯罪の具体的行為類型は、主に次の通りです。中には、皆さんにとって聞き覚えがある用語があるかもしれません。

  • 不正アクセス
  • データの改ざん、破壊
  • クレジットカード情報などを騙し取る
  • SNSなどの誹謗中傷
  • 児童ポルノの製造及び提供
  • サイバーテロ
  • マネーロンダリング
  • コンピュータウイルスの作成及び提供

 

 

不正アクセス

SNSアカウントのなりすまし乗っ取り、こうしたアクセス権限のない第三者によって不正アクセス等の被害を受けた場合は、不正アクセス禁止法違反によって、その第三者に刑事責任を問うことができます。

不正アクセス禁止法上、禁止行為とされているのは、不正アクセスのほか、他人のIDやパスワードを不正に取得する行為、フィッシング詐欺のような不正入力要求行為などがあります。それぞれの行為によって定められた法定刑は異なりますが、例えば、不正アクセス行為の場合は3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、となります。

 

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データの改ざん、破壊

例えば、企業のHPを改ざんして虚偽の情報を掲載する行為、オンラインゲーム内のシステムを改ざんして、ゲーム内アイテムを意図的に増やす行為も、サイバー犯罪被害の一つです。

こうした行為に対しては、刑法246条の2が規定する電子計算機使用詐欺罪に問われる可能性があります。その法定刑は、10年以下の拘禁刑です。

オンラインゲーム内のシステムを改ざんして、ゲーム内アイテムを意図的に増やす行為が電子計算機使用詐欺罪にあたる理由として、財産上の不法の利益を得る目的でコンピュータに虚偽の情報を与える行為だからです。

 

クレジットカード情報などを騙し取る

不正アクセスのところでも触れましたが、不正アクセス(不正入力要求)によって他人のクレジットカード情報等を騙し取る行為は、不正アクセスのみならず、刑法上の詐欺罪(246条。)、電子計算機使用詐欺罪(246条の2)が成立することもあります。その他、クレジットカード情報と言った電磁的記録を不正に作成すれば、電磁的記録不正作出罪(161条の2。5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)も成立する可能性があります。

 

SNSなどの誹謗中傷

サイバー犯罪と聞いて馴染みはないかもしれませんが、SNS上の誹謗中傷についても類型としてはサイバー犯罪の一つといえるでしょう。

SNSの誹謗中傷については、これまでのコラムでもお伝えした通り、刑法が規定する名誉毀損罪(230条。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)、侮辱罪(231条。1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又はこの両方)が成立する可能性があります。

 

児童ポルノの製造及び提供

インターネットを悪用する犯罪であるサイバー犯罪の中で、特に多いとされるのが性犯罪に関するものです。特に、児童ポルノの製造及び提供は、SNS上で共有されるなどのニュースもあり、インターネットの普及により、不特定多数への提供が容易になったことで多くなっていると考えられます。

さて、児童ポルノを製造又は提供した場合には、児童ポルノ禁止法によって厳しく罰せられます。つまり、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、輸入し、輸出し、または提供した場合、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金となります(児童ポルノ禁止法7条2項及び3項)。

もっとも、児童ポルノの製造又は提供の過程において、例えば、それが盗撮によって製造した場合には性的姿態撮影等処罰法違反にも当たり得ますし、児童に対して「無理やりわいせつなポーズをさせ、その状況を撮影する」行為は、児童ポルノ禁止法7条(製造罪)に該当するのはもちろんですが、撮影に際して児童に わいせつな行為(性的姿態を強要すること) をしたと評価される場合は刑法上の不同意わいせつ罪(176条。6月以上10年以下の拘禁刑)が、更に、さらに、撮影の過程で性交や類似行為を強制した場合は不同意性交等罪(177条。5年以上の有期拘禁刑)といったより重い罪が成立する可能性もあります。

また、児童ポルノに限った話ではありませんが、こうしたわいせつ物をインターネット上に頒布した者も、2年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金若しくは科料、又は拘禁刑及び罰金の両方が科せられることもあります(刑法175条)。

 

サイバーテロ/コンピュータウイルスの作成及び提供

個人が直接被害を実感することは少ないかもしれませんが、電力や交通など社会インフラに深刻な影響を及ぼすサイバーテロという犯罪があります。

かなり専門的な行為であって罪ではありますが、これについても、インフラシステムデータの改ざん、破壊に当たり得ますので、電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)や威力業務妨害行為(刑法234条)とみなされるでしょう。

 

 

マネーロンダリング

詐欺事犯では、詐欺師に指定された口座に振り込んだお金は、資金洗浄(マネーロンダリング)されることがあります。詐欺師による欺罔行為自体は詐欺罪が成立し得るところではありますが、マネーロンダリング行為自体も罪が成立する可能性があります。

マネーロンダリングとは、詐欺などの犯罪によって得たお金を、その出所がわからないように、あたかも正当な手段で得たお金であるかのように見せかける行為です。そして、マネーロンダリングは、組織的犯罪処罰法によって厳しく罰せられることがあります。

例えば、詐欺行為によって得たお金は組織的犯罪処罰法上、「犯罪収益」とされますが、犯罪収益に関して、その事実を仮装し、又は隠匿した場合は、10年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこの両方となる可能性があります(組織的犯罪処罰法10条1項)。

また、事情を知りながら、犯罪収益を収受した場合も、7年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこの両方となります(組織的犯罪処罰法11条)。これらの規定は、マネーロンダリングの中核となる罪です。

 

サイバー犯罪は複合的になることも

以上、主なサイバー犯罪の行為類型について解説してきましたが、サイバー犯罪はその行為単体で犯罪が成立することもありますが、その多くは複合的に罪が成立する要素を持っています。

例えば、児童ポルノの製造及び提供では、児童ポルノ禁止法違反のみならず、性的姿態撮影等処罰法違反、あるいは不同意わいせつ罪等も成立する可能性が十分にあります。クレジットカード情報であれば、不正アクセス禁止法上の不正入力要求行為のみならず、電子計算機使用詐欺罪の成立する可能性があるでしょう。

 

サイバー犯罪被害に関しては、警察に!

インターネットの普及とともに、私たちの生活は格段に便利になりました。しかしその一方で、その便利を逆手にとるサイバー犯罪も増え、その手口は巧妙化しているのも事実です。

サイバー犯罪の被害に遭った際には、まずは警察に相談してください。警察の中でも、サイバー事案に特化した相談窓口が設けられていますので、まずはそちらに相談することをお勧めします。

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