【詐欺罪で刑事告訴】被害者が押さえるべき「欺罔行為」の立証ポイント

はじめに
インターネットが普及したこともあり、詐欺の手口は巧妙化しており、今では誰もが詐欺被害に遭う可能性があります。
被害者が詐欺被害に遭ったと感じた後、警察に被害届または刑事告訴をしても、警察がすぐに動いてくれなかったり、受理しようとしないということはかなり多くあります。
詐欺は、インターネットで行われる場合、詐欺師は匿名や偽名で被害者に接触を図ることができます。そのため、被害者はもちろん、捜査機関も、被害の相談を受けた段階ではどこの誰が詐欺行為をしたのか、まではわからないことが多く、警察が捜査に着手するためのハードルは高いと感じてしまうのです。
ただ、捜査に着手するためのハードルが高いというのはあくまで警察の都合でして、被害者においては、一刻も早く捜査を開始して欲しいと思うはずです。
そこで、本記事では、詐欺罪で刑事告訴をする際、警察に告訴を受理してもらうための「欺罔行為」の重要性について解説します。
なお、刑事告訴については、警察において、犯罪捜査規範による受理義務があることは、これまでのコラムでもお伝えした通りです。
詐欺罪の構成要件
人を欺いて財物を交付させた場合、詐欺罪が成立します(刑法246条1項)。
つまり、詐欺罪が成立するためには、欺罔行為、被害者の錯誤、被害者による財産交付行為、一連の因果関係、が必要となります。
各構成要件の詳細な解説は、以下のコラムをご参考下さい。
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詐欺事犯においては、「欺罔行為」が最も重要
詐欺罪の構成要件のうち、刑事告訴をするにあたっては、「欺罔行為」が最も重要なポイントとなります。ただ、欺罔行為といえども、全ての欺罔行為が詐欺罪の構成要件になるわけではありません。結局のところ、次の3点がポイントとなります。
- 財物または財産上の利益の財産交付行為を行わせるような行為
- 相手の財産交付行為の判断の基礎となる重要な事項を偽る行為
- 欺罔行為時、既に詐欺師において相手を騙す意図
財物または財産上の利益の交付を行わせるような行為
一般人であれば、財産交付行為をしてしまう危険性を有する行為が詐欺罪における欺罔行為となります。
ただし、欺罔行為があったかどうかは、財産交付行為の可能性を一般的かつ客観的に判断します。つまり、詐欺罪は、その未遂も処罰されますが(刑法250条)、欺罔行為が認められれば、直ちに詐欺未遂罪が成立するわけではなく、財産交付行為という具体的危険性が発生していてはじめて、詐欺未遂罪が成立することになります。
分かりやすい例で言いますと、オレオレ詐欺の犯人が、息子などを装って「お金が必要なんだ」と被害者に電話で嘘を言った時点で、被害者が財産を交付する具体的な危険が発生していますので、被害者がそれを信じたかどうかにかかわらず、詐欺未遂罪(刑法250条)が成立します。
その後、被害者が嘘を信じ込み(錯誤に陥り)、銀行で振込手続きを完了し犯人側の口座に着金した時点で、財産が犯人に交付されたことになり、詐欺既遂罪(刑法246条)が成立するのです。
相手の財産交付行為の判断の基礎となる重要な事項を偽る行為
簡単に言いますと、相手(被害者)を騙すことをいいます。欺罔行為の中核ともいえるところです。ただ、被害者に向けた行為が、「判断の基礎となる重要な事項」であるかどうかは、ケースバイケースで判断されることになります。
欺罔行為時、既に詐欺師において相手を騙す意図
詐欺罪の立証が難しいと言われる点です。つまり、欺罔行為当時、詐欺師が被害者を騙す意図があったという詐欺師の内心についてです。
内心については、被害者において知る由もないので、客観的資料(証拠)から可能な限り立証していくほかありません。詳しい内容は、以下をご参考下さい。
ケース別欺罔行為の立証ポイント
ここからは、詐欺類型の中でも特に多い、投資詐欺と結婚詐欺を中心に、これら詐欺の欺罔行為における立証ポイントについて解説します。
投資詐欺
投資詐欺における典型的な欺罔行為は、「確実に儲かる」、「元本保証」、「利益確定」などのうたい文句で、これらは被害者において財産を交付するかどうかの判断の基礎となる重要な事項に当たり得ます。
この場合における立証のポイントは、嘘であることを裏付けるものです。例えば、実態のない投資案件であることがわかるもの、投資用として預け入れていたお金を遊興費に使われていたことがわかるもののほか、上記うたい文句があるようなSNS上のやり取りも嘘を裏付ける資料となり得ます。ただし、冒頭でもお伝えした通り、詐欺の手口は巧妙化していますので、明確な裏付け資料(証拠)はなかなかないのが実務です。
結婚詐欺
結婚詐欺における典型的な欺罔行為は、「結婚しよう」、「うちは家柄が厳しいので、婚約するためにはすぐに結納金が必要」など、要するに、結婚又は婚約のためにはすぐにお金が必要であることを匂わせてくることです。もちろん、結婚を前提に交際をしていてその人と結婚したいと思うのであれば、こうした匂わせは重要な事項といえるでしょう。
この場合における立証のポイントは、投資詐欺と同様、嘘であることを裏付けるものです。例えば、結婚指輪を購入した時の領収証や結婚式場の予約票、両親に挨拶に行ったのであればそれがわかる具体的資料(やり取りなど)、その他にも既婚者であったとかも嘘を裏付ける資料となります。
告訴状に記載すべき具体的欺罔行為
告訴状には、被害事実を、時系列に記載することが求められますが、どのように欺罔行為を告訴状で説明するか難しいと思われるかもしれません。
具体的欺罔行為を記載する際は、いつ、どこで、誰が、誰に、どのような欺罔行為を受けたか、を時系列に記載して説明しましょう。
これら具体的欺罔行為をする説明するためには、事前準備として、可能な限り多くの証拠を揃えること、また、後で弁護士に相談・依頼することも考慮して、時系列でまとめておくと何かと役立つでしょう。
最後に
詐欺罪の刑事告訴は、一連の経緯の中から、被告訴人がどの言動が欺罔行為に当たるのかをよく見当しなければなりません。加えて、立証面でも難しいのが詐欺罪です。
刑事告訴は被害者自身でも行えることができる手続ですが、記載内容などで非常に専門性のある手続でもあります。告訴状の記載や受理までの警察への働き掛けをご自身で行うことが難しいと感じられたら、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
弁護士のサポートを受けることで、告訴受理までの手続きを確実に進めることができます。
ただし、告訴したからといって詐欺被害金が回収できるわけではないことはお伝えしておきます。