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遺言の概要と、公正証書遺言があってもトラブルになるケース~内容に納得がいかない時の対処法も

遺言の方式は3種類

遺言の方式については、3種類あります。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つです(民法967条)。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が、紙に、自ら遺言の内容全文を手書きし、日付と名前を書いて、署名押印する方法により作成します(民法968条)。

なお、平成31年1月以降、改正民法により、遺言書にパソコンで作成した財産目録や、預貯金通帳の写し、不動産登記簿事項証明書を添付することが認められています(民法968条2項)。

ただし、財産目録以外の遺言書の内容については、従前どおり遺言者が全文を手書きをしなければいけません。

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が公証人1名と証人2名以上の面前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が遺言者の真意であることを確認したうえで、内容をまとめ、遺言者と証人2名に読み聞かせ、または閲覧させ、内容に間違いがないことを確認して作成します(民法969条)。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印し、これを封筒に入れ、遺言書に押印した印と同じ印で封印し、公証人と証人の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨とその筆者の氏名住所を申述し、公証人がその封紙に日付と遺言者の申述を記載した後、遺言者と証人とともに、その封紙に署名押印することで作成します(民法970条)。

秘密証書遺言はこれら方式が欠けたとしても、自筆証書遺言の方式を満たしている場合には、自筆証書遺言として効力を有します(民法971条)。

 

公正証書遺言作成のメリット

確実な遺言方法

公証人は、法曹資格者など正確な法律知識と経験を有しています。複雑な内容であっても、整理された遺言の内容となり、方式の不備なく作成することができます。

 

公証役場での原本保管

公正証書遺言は作成されると、原本を必ず公証役場で保管することになりますので、紛失の心配はありません。

→遺言者の死亡後は、お近くの公証役場で無料で遺言検索ができますので(ただし、秘密保持の観点から遺言検索できるのは相続人等の利害関係人に限られます。)、日本全国どこの公証役場で作成したとしても、遺言者の死後に公正証書遺言の存否を確認することが出来るようになっています。

 

裁判所の検認手続が不要

自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続が必要ですが、公正証書遺言の場合は検認手続を要せず、速やかに遺言内容の実現を図ることができます(民法1004条1項2項)

その他、自書(自ら書くこと)が不要であったり、公証人による出張も可能なので、公正証書遺言を作成するメリットは大きいといえます。

 

遺言で定められる事項

遺言書を作成するにあたっては、法律で認められた事項に関する記載だけが法律上の効果を持ちます。なので、例えば、「兄弟姉妹で仲良くするように」というような文言は、記載してもちろん問題ありませんし、記載したからといって無効になるわけでもありませんが、「兄弟仲良く」の部分には法律上の拘束力はありませんので、ご注意ください。

1 相続に関する事項

「妻に遺産の全てを相続させる」というように、法定相続分とは違う割合で相続させる内容や、「●の不動産は長男に、●銀行●支店の貯金は長女に相続させる」という遺産分割の方法などについても定めることができます。

なお、遺留分のコラム(遺言などで遺留分を侵害された相続人がとるべき対応)で触れました持戻し免除の意思表示もこれにあてはまります。

 

2 相続以外の財産処分

「●●団体に遺贈する」という遺贈に関することについて定めることができます。

 

3 身分関係に関する事項

認知(民法781条2項)の他、未成年後見人の指定(民法839条本文)などを定めることができます。

 

4 遺言の執行に関する事項

遺言執行者の指定(民法1006条1項)をすることができます。

 

有効な公正証書遺言とは

遺言能力があること

15歳に達した者は、遺言をすることができます(民法961条)

 

公正証書遺言の方式に従ったものでなければならない

具体的には、証人2名以上の立ち会い、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること、公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること、遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと、公証人がその証書はこれらに従って作成したものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと、になります(民法969条)

 

公序良俗に反する内容でないこと

 

後見人等の利益になるような内容でないこと(民法966条)

被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人やその配偶者、直系卑属の利益となる遺言をしたときは、遺言は無効となります。

 

公正証書遺言でトラブルになる典型的なケース

以上の方式を満たせば、公正証書遺言は有効ですが、中には相続人間でトラブルになることも多くあります。以下は、典型的なトラブルについてまとめたもので、これらに該当するような場合は、公正証書遺言が無効となる可能性があります

 

遺言者本人に認知症がある、又はその疑いがある場合

遺言者に認知症があったような場合は、遺言能力がないとして、公正証書遺言であっても、無効となる可能性があります。

 

証人が不適格者であった場合

証人となるのに、資格は必要はありませんが、証人の欠格事由として、①未成年者、②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人が明文上挙げられております(民法974条)。

したがって、上記の者が承認として立ち会っていた場合には、その遺言自体が無効となります。

 

重大な錯誤があった場合

遺言者の真意と遺言の内容に錯誤があった場合は、その事実が認められると、取り消すことができます。

 

公序良俗に反する遺言の内容である場合

裁判例として公序良俗違反が認められた例として、法律上の妻がいるにもかかわらず、不倫関係にある者との関係継続のために「不倫相手に全財産を譲る」とした内容の遺言書について、「生活の基盤をも脅かすもので」あるとして、公序良俗に反し無効と判断されています(東地判昭和58年7月20日)。

 

遺留分を侵害する内容である場合

公正証書遺言の方式や内容が適法であっても、相続人の遺留分を侵害するようなものであれば、相続人の遺留分を考慮しなければならず、相続人間で揉めることもあります。

法定相続分と異なる割合で遺言をする場合は、遺留分にも配慮した内容にすることで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

なお、遺留分の概要や遺留分を侵害された時の対応方法については、こちら(遺言などで遺留分を侵害された相続人がとるべき対応)をご覧ください。

 

公正証書遺言の撤回方法

一度公正証書遺言を作成すると撤回することはできないのでしょうか。

そんなことはありません。遺言自由の原則遺言撤回の権利は放棄することができない(民法1026条)ことから、すべての種類で遺言を撤回することができます。

公正証書遺言を撤回する場合は、以下の3つの方法が考えられます。

1 公証役場で撤回する

公証役場で作成し、原本は公証役場で保管されますので、原則として遺言の撤回も公証役場で行うことができます。

 

2 遺言の新規作成

遺言書を新たに作成することで遺言を撤回することもできます。方式は問いませんので、自筆証書遺言や秘密証書遺言で公正証書遺言を撤回することも可能です。その際は、「前の●年●月●日作成の遺言書を撤回する。」と入れると良いでしょう。

 

3 抵触行為

抵触行為とは、遺言の内容とは違った行為をすることです。例えば、不動産を長男に相続させるという遺言をしたのに、相続発生前に不動産を売却してしまったというような場合です。

このような抵触行為は、遺言の撤回とみなされます(民法1024条)

 

遺言の内容に納得がいかない時

遺言の内容に納得できない場合は、以下の方法が考えられます。

1 相続人と、遺言の内容と違う内容で遺産分割協議を行う。

2 遺言無効確認の訴えを提起する。

遺言の方式に疑わしい場合がある時は、客観的資料とともに、遺言無効確認の訴えを提起します。

3 遺留分侵害額請求権を行使する。

たとえ、遺言の内容が「●に遺産のすべてを相続させる」というものであっても、●以外の相続人は遺留分侵害請求を行うことを検討するのも良いでしょう。

ただし、遺留分侵害額請求権の消滅時効は、①相続が開始したこと、②遺留分が侵害されていること、の両方を知った時からわずか1年間ですので、遺留分が侵害されていることを知ったらすぐに弁護士にご相談ください。

 

最後に

遺言の作成にあたって、文言や内容について不安やお悩みの方も多くいると思います。その他相続が開始し、自分の遺留分が侵害されているという方もいらっしゃると思います。そのような場合は、当事務所までご相談ください。

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