銀行口座が仮差押えされた!解除するための3つの対抗手段と現実的な解決策

はじめに
ある日突然、給与が振り込まれる銀行口座が凍結され、お金が一切引き出せなくなってしまった…それは「仮差押え」という法的手続きが原因かもしれません。
仮差押えは、債権者が将来の強制執行に備えて、あなたの財産を暫定的に確保する手続きです。このままでは生活に大きな支障が出てしまいますが、諦める必要はありません。
本記事では、この仮差押えを解除するために法律で認められた3つの対抗手段と、もう一つの現実的な解決策について、分かりやすく解説します。
仮差押えを解除するための3つの法的手段
裁判所から仮差押え決定書が届いた場合、その決定を争うために、法律は主に3つの方法を用意しています。
手段①:「仮差押えの決定そのものがおかしい」と争う(保全異議)
これは、「そもそも裁判所が下した仮差押えの判断自体が間違っている」と正面から不服を申し立てる手続きです。
- 主張内容の例:「そもそも借金は存在しない」「請求されている金額が違う」「すでに時効が成立している」など
- 手続き:仮差押えを決定した裁判所に対して「保全異議」を申し立てます。裁判所は、債権者と債務者双方の言い分を聞く「審尋」という手続きを開き、改めて仮差押えを維持するか、取り消すかを判断します。
- 注意点:裁判所が一度下した決定を覆すことになるため、債務者側が「決定が間違っている」ことを証明する必要があり、そのハードルは非常に高いのが実情です。
手段②:「状況が変わった」と主張して取り消しを求める(保全取消し)
これは、「仮差押えの決定当時は正しかったかもしれないが、その後の事情の変化により、もはや仮差押えを維持する必要がなくなった」と主張して、取り消しを求める手続きです。
- 主張内容の例:
- 事情変更:仮差押え後に借金の一部を返済したため、差押えが過大になっている。
- 起訴命令の申立て:債権者が仮差押えだけして、本題である訴訟をなかなか起こしてこない場合に、「早く訴訟を起こしてください」と裁判所に命令してもらい、もし債権者が従わなければ、仮差押えを取り消してもらう。
- 注意点:こちらも、仮差押えを維持する必要がなくなったことを明確に証明する必要があり、簡単には認められません。
手段③:お金を預けて口座を解放してもらう(仮差押解放金)
これは、争うのではなく、お金で解決する方法です。仮差押え決定書には、通常「債務者は、金〇円を供託するときは、執行の停止…を求めることができる」と記載されています。
- 仕組み:この「仮差押解放金」として指定された金額を法務局に預ける(供託する)ことで、凍結された銀行口座を解放してもらうことができます。債権者の権利は、あなたの銀行口座ではなく、あなたが預けた解放金によって担保される形に切り替わります。
- メリット:まとまったお金を用意できるのであれば、口座の凍結を最も迅速に解除できる方法です。
忘れてはならない第4の選択肢:債権者との直接交渉
これまで解説した3つの方法は、いずれも裁判所を通じた法的な手続きです。しかし、忘れてはならない、そして実務上、最も現実的な解決策となりうるのが「債権者との直接交渉」です。
仮差押えは、債権者にとっても、その後の本訴訟など時間と費用がかかる手続きの第一歩に過ぎません。そのため、債権者側も早期の解決を望んでいるケースは少なくありません。
弁護士を通じて債権者と連絡を取り、
- 分割払いの和解交渉をする
- 一部を支払う代わりに仮差押えを取り下げてもらう
といった交渉を行うことで、裁判手続きよりも迅速かつ柔軟に問題を解決できる可能性があります。口座が凍結されて生活に困っている場合は、まずこの「交渉」という選択肢を検討すべきでしょう。
最後に
突然の仮差押えに動揺されるのは当然です。しかし、法律上、対抗する手段は用意されています。
ただし、ここまで見てきたように、裁判所の手続きで決定を覆すのは、立証の面で非常に高いハードルがあります。
ご自身で対応するのは極めて困難ですので、仮差押え決定書が届いたら、一人で悩まず、すぐに弁護士に相談し、どの手段を取るのが最善かを検討することをお勧めします。