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【AV新法施行から3年】AV出演に誘う新たな手口に注意を!

AV新法(正式名称は性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律)が令和4年6月に施行されて、早くも3年が経過しました。

施行後、制作側には、「1-4か月ルール」(契約から1ヶ月後の撮影撮影終了後から4か月後の公表)以外にも、出演者との間で締結する契約書に記載すべき事項などについて遵守が義務付けられました。

他方、出演者側には、出演を後悔するなどの理由や公表された場合でも公表後1年間は、契約を無条件に解除することができる(報酬を得ていた場合は返還義務があります。)ほか、公表を差し止めることができます

施行から3年がたった今、AVに出演させるために業者がとる新たな手口、について本記事で解説します。

 

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相談件数は増加

AV新法が施行され、出演者が無条件に契約を解除することや出演動画の公表を差し止めることができるようになったため、相談件数が増加しています。

AV出演被害に関して、内閣府によりますと、全国にあるワンストップ支援センターに寄せられた相談件数は、令和4年度は164件であるのに対し、令和5年度は216件でした。また相談者多くは20代の女性で、その他の年代の方からも相談が寄せられており、AV出演に係る被害がさまざまな年代にも及んでいることが窺い知れます。

当事務所でも、AV出演被害に関する多く、例えば、次のようなご相談・ご依頼の実績がございます(プライバシーのため、内容の一部を加工しています。)。

  • お金欲しさに、ネット上の募集に応募したが、将来のことを考えたら後悔しているので、契約解除と公表を差し止めたい。
  • AV撮影を生業とする個人事業者と契約したが、契約書を書いたその日に撮影をした。後になって、AV新法でそれがダメだと分かり、契約を解除した上で、撮影データを消してほしい。
  • 恋人に黙ってAVに出演したが、その後結婚することになり、公表される前に販売されるのを防ぎたい。
  • AV出演契約締結後、自分で解除を申し出たところ、制作側から違約金を請求されている。
  • 契約書を確認したら、契約日と撮影日が同日という扱いになっていたが、これはAV新法に違反しているのではないか。
  • 契約書にサインはしたが、契約書は交付されていないし、その他の説明(説明書の交付)を受けていない。
  • そもそも契約書も書いていないし、勝手に公表されてしまった

 

 

撮影するための新たな手口

このように、AV新法が施行されて以降、出演者には契約解除権や公表差止権などによって守られることになった一方、「1-4か月ルール」が面倒だと感じるのか、違法に撮影・公表しようとしてくる業者がいることも実際あります。

そんな中、AVに出演させようとする新たな手口があります。

  • モデルやアイドルの勧誘と称して声を掛ける、またはこれらの募集と称して、実際に応募してきた女性に性行為等の撮影を強要する(本当の目的を最初は隠すケース)
  • 経済的に困窮する女性をターゲットにする
  • 個人的に楽しむだけといって本人の同意無くFC2コンテンツマーケットなど、個人でAVを販売できるサイトで公表してしまうケースetc.

 

モデルやアイドルの勧誘と称して声を掛ける、またはこれらの募集と称して、実際に応募してきた女性に性行為等の撮影を強要する

モデルやアイドルを目指す人にとって、願ってもない話かもしれません。しかし、それに漬け込んで、「皆やっていることだから。」などと言い、AV出演を迫られることがあります。

その他にも、「モザイクあり」、「顔出しなし」など出演のハードルを下げさせる広告をしているにもかかわらず、実際はモザイクがかかっていなかったり、顔を出しての撮影が行われることがあります。

 

経済的に困窮する女性をターゲットにする

ここ数年、ホストクラブの売掛金問題が社会的な注目を浴びていますが、ホストクラブに対し売掛金(ツケ)がある女性客は、経済的に困窮し、売掛金が支払えずにホスト又はホストクラブとトラブルになることも少なくありません。

こうしたトラブルでは、よくホストから、風俗で働くよう言われたり、風俗店を紹介されますが、AVに出演し、そこで得た報酬を自分に渡すよう言われることもあります(その後、風営法が改正され禁止されています。)。

ホストと女性客との間であれば、風営法が適用され得ますが、女性客が経済的に困窮している情報を嗅ぎつけたAV制作業者が、当該女性に接触し、経済的困窮を解消するための選択肢としてAV出演の話を持ち掛けるケースも発生しています。

こうしたケースの場合、女性はホストに夢中になっていることが多いため、AVに出演することがどのようなリスクを負うことになるのか判断できずに、ただ、そのホストのためにお金を使いたい、だからお金が欲しい、という思考回路になりやすいので注意が必要です。

余談

AV出演に関しては当事務所にも日々様々な相談が寄せられており、そもそも契約書すら巻いていないケース、契約書を巻いたものの日付をバックデート(過去に遡らせて期間制限を免れる)するケース、契約書を巻いたがすぐに勝手に公表されてしまったケース、モザイクをかけると約束したのに顔出しで公表されてしまったケースなど、悪質な業者(および個人撮影者)の相談を多数受けております。

女性だけでなく男性が同性愛AVに出演してしまうケースも多く、男性故に逆に他者に相談しにくいことを利用して安く買い叩くような撮影者も増えてきている印象です。

ただし、この手の犯罪は警察の取締意識が強く、警察が動いてくれるケースも多いですし、場合によっては逮捕となることもありますから、恥ずかしがらずに警察や弁護士にぜひご相談しましょう。

20年以上前に出演したAV作品を削除したいと時が経って悩まれている方からの相談もありますし、自分が真に納得して出演したならまだしも、後から後悔した場合には公表されずに間に合う場合もあります。

AV新法に関するトラブルは当事務所まで

AV出演に関する新たな手口として、経済的困窮にある女性をターゲットにすることについて解説してきました。

AVに出演するリスクを考え、拒否する意思を示せれば大丈夫ですが、万が一、AV新法に関するトラブルに巻き込まれた際には、公的機関の専用相談窓口、警察、または弁護士にご相談ください。

当事務所では、これまで数多くのAV新法に関するトラブルについてご相談・ご依頼を受けてきました。お困りの方はお早めにご相談ください。

 

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