痴漢を疑われたら
在宅勤務やリモートワークの普及・活用が進んでいますが、電車など公共交通機関を利用して通勤している方も多くいらっしゃると思います。
混雑の中、ご自身が痴漢を疑われるという被害に遭う可能性はゼロではありません。
今回は痴漢を疑われたときの対処方法について、簡単にお伝えします。
痴漢をした場合に問われる刑事責任
痴漢をした場合に問われる刑事責任は、各都道府県の迷惑防止条例や刑法の不同意わいせつ罪(刑法176条)に問われます。
実務上は、迷惑防止条例違反となるケースが多いです。下着の中に手指を入れ、直接性器等を触ったと疑われた場合には不同意わいせつ罪に問われる可能性が高いです。
東京都の場合、「何人も、正当な理由なく、人を羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
(1)公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」とされ、違反した場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます(迷惑防止条例5条及び8条)。
不同意わいせつ罪については、性犯罪に関する規定が変わりました。をご覧ください。
痴漢を疑われたら
「自分はやっていない」と主張する
痴漢を疑われたら、まずは自分がやっていないことをはっきりと伝えることが重要です。
このように主張していても、最寄りの駅で降車させられるでしょうが、降車したら駅員室などに移動せず、かつその場から逃げずに、逃亡のおそれがないことを示すために名刺等の自分の住所や氏名を開示した上、自分はやっていないことを主張しましょう。
その場から動かない(逃げない)
現在は電車内にも防犯カメラが設置されるようになり、その場から逃げてしまうと、警察などに悪印象を与えかねません。当該逃走行為自体をもって逃亡の恐れありとの判断に傾きますので、その後の捜査により後日、逮捕となる可能性も高まります。
また線路に逃げたとして、その場合は安全確保のため電車は運転を見合わせます。そうなると、大幅な電車の遅延などの理由により鉄道会社から損害請求を受ける可能性も発生します。
現在、地方ローカル線などは別として、都内の鉄道路線は駅ホームにも車内にも防犯カメラが張り巡らされておりますので、一旦その場で逃走に成功したとしても、顔貌等から後日逮捕となるリスクはかなり残りますので、逃走は悪手と言わざるを得ません。
→その場からの逃走行為は、こうしたマイナスしかありませんので、疑われたとしても逃げることは避けたほうがよいでしょう。もし咄嗟に逃走してしまった場合は、自首しましょう。
弁護士に連絡する
すぐに弁護士を呼んでください。
しかし、多くの方は知り合いに弁護士がいなかったり、伝手がなかったりしますが、事前にいくつかの法律事務所の連絡先をメモしておくことで、慌てずに連絡することができると思います。
ちなみに、当事務所では弁護士直通の連絡先を掲載しています。
家族や職場に連絡する
痴漢が疑われていることはすぐに家族に伝えた方がよいでしょう。弁護士に連絡しようにも、自分でできないような状況であった場合は、家族に代わりに手配してもらうのが適切です。
また勤務先には、有給を使用するなどにより欠勤の連絡をしておいたほうがよいでしょう。
もし痴漢の現行犯で逮捕されると、身柄拘束が続き、その間、勤務先への無断欠勤が続くと懲戒解雇に至る可能性もあります。
痴漢に疑われていることまで言うかはケースバイケースですが、例えば、事前に会社内で痴漢被害に関する弁護士等の連絡先などを教えてもらっていたなどの場合は、痴漢に疑われていることを伝えてもよいかもしれません。
録音し、余計なことは言わない
難易度は高いかもしれませんが、現場での状況などに関する会話は重要な証拠となり得ます。基本的には、被害者から被害の状況を話してもらい、ご自身は冷静な態度でいることを心掛け、余計なことは言わないようにしましょう。もし本当は痴漢詐欺であった場合、ご自身からいろいろと話をしてしまうと、被害者(詐欺師)が話を合わせてしまい、後に高額な示談金を要求してくる痴漢詐欺事件の可能性を排除するためです。
ただし、黙って録音するのではなく、断りを入れてから録音をする方が望ましいでしょう。
警察に個人情報を伝える
おそらく痴漢を疑われてから間もなく、警察が現場に臨場すると思います。そして、警察から、名前・住所・電話番号・勤務先などの個人情報を聞かれるでしょう。
その際に「自分はやっていないのだから、言う必要はない。」として、個人情報を伝えないのは、適切な対応とはいえません。
このような対応をしていると、警察からすれば、解放してしまうとどこの誰かわからなくなってしまい、逃亡のおそれありとして逮捕する可能性があります。逮捕されれば、所持品検査で個人情報を取得することになります。
したがいまして、警察から個人情報の提供を求められた場合は、誠実に個人情報を伝えるのがよいでしょう。
ちなみに、勤務先情報を先に伝えることで、警察から勤務先に連絡がいくことは基本的にありません。ただ、勤務先に知られたくないという心理からか、勤務先の情報を黙秘していると、警察から在籍確認のため勤務先に連絡がいく可能性があります。
供述調書に署名捺印しない
警察で取り調べを受けると、警察は供述調書を作成します。そして、最後に警察が聴取した内容について署名捺印を求められます。
この際に、内容を十分に理解しないまま署名捺印することはやめましょう。一度署名捺印してしまうと、その後の刑事裁判で証拠として採用されますし、後からひっくり返すのは至難の業です。内容をよく読んで、納得できないところがあれば、訂正を求めましょう。
痴漢冤罪で逮捕されたら
もし、現場での逮捕を免れることができたとしても、後日警察が家にきて逮捕される可能性はあります。
いずれにしましても逮捕された場合は、速やかに弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼すると、逮捕直後から被疑者に接見することが可能となります。
その際に、今後の対応の仕方などアドバイスをすることが可能です。
また、逮捕されず在宅捜査として進められる場合にも、被疑者側の立場からの上申書や意見書を提出することで、不起訴処分の獲得を狙うことも事案次第では十分に可能です。
最後に
痴漢冤罪は刑事事件ですので、初動の対応が特に重要です。痴漢を疑われている、痴漢で逮捕された場合のほか、家族が痴漢で逮捕されてしまった場合なども、弁護士直通の連絡先もございますので、すぐに当事務所までご相談ください。