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これって軽犯罪法違反?

日常生活の中で、「こんなことで警察に捕まるの?」、「これって違法だったの?」と思うことがあると思います。このように思う犯罪の代表例が軽犯罪法違反です。たかが軽犯罪と思っていても、行為内容によってはより重い罪に問われる可能性があります。

今回は、具体的にどのような行為が軽犯罪法違反にあたるのか、簡単に記したいと思います。

 

軽犯罪法とは

軽犯罪法違反とは、刑法で規定されている犯罪と比較して軽微な犯罪が定められている法律のことをいいます。公訴時効は行為時から起算して1年とされています。

軽犯罪法は、刑法や他の特別法の補助的位置づけになります。

 

軽犯罪法で規定されている行為と罰則

軽犯罪法で規定されている以下の各行為に該当した場合は、拘留または科料に処されます。

※「拘留」とは1日以上30日未満の期間、刑事施設において身体拘束を行い、自由を奪う刑罰です。

「科料」とは、1000円以上1万円未満の金銭納付を命じられる刑罰です。⇔「罰金」との違いは、「罰金」は1万円以上(~上限は刑法上は定めなし)の金銭納付を命じられる刑罰です(刑法15条)

 

1 人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者

人が住まず、管理されていない建物や船舶の中に潜む行為です。

 

2 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

例えば、包丁、防犯スプレーなどを隠し持っていた場合です。催眠スプレーを防御用として隠し持っていたことが正当な理由によるものとした最高裁判例(最高裁平成21年3月26日判決)があります。

 

3 正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

合鍵等の他、カッターやドライバーなど邸宅や建物を侵入するために外部から見えないよう隠し持っていた場合です。

 

4 生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの

 

5 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者

例えば、公共の場でお客にからむ行為などです。場合によっては、暴行罪も同時に成立する可能性があります。

 

6 正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し、若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者

例えば、パトカーの赤色灯をいたずら目的で消す場合などです。

 

7 みだりに船又はいかだを水路に放置し、その他水路の交通を妨げるような行為をした者

 

8 風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の発生その他の変事に際し、正当な理由がなく、現場に出入りするについて公務員若しくはこれを援助する者の指示に従うことを拒み、又は公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかった者

例えば、事件・事故の際に、警察官の指示に従わない行為などです。

 

9 相当の注意をしないで、建物、森林その他燃えるような物の附近で火をたき、又はガソリンその他引火し易い物の附近で火気を用いた者

例えば、火災が起こり得る場所で焚火をしたりする行為です。火災が起これば、失火罪(刑法116条)に問われる可能性があります。

 

10 相当の注意をしないで、鉄砲又は火薬類、ボイラーその他の爆発する物を使用し、又はもてあそんだ者

例えば、火薬類を用いて爆発に至るような行為(いたずら目的も含む)をすることです。爆発すれば、激発物破裂罪(刑法117条)に問われる可能性があります。

 

11 相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者

例えば、歩道でキャッチボールをしたりすれば、近隣の建物や通行人に被害が及ぶおそれがあります。

 

12 人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠ってこれを逃がした者

例えば、嚙みつき癖のある犬を飼い主がわざと解放したり、逃がしてしまう行為をいいます。実際にそうした犬が他人に噛みつけば、傷害罪(刑法204条)などの罪に問われる可能性があります。

 

13 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待っている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者

上記5では娯楽場などの公共の場でしたが、本号は娯楽場ではない公共の場所(例えばバスやタクシー)における列の割り込みなどの行為です。

 

14 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者

音量の異常性については、場所や時間などを考慮して決まります。

 

15 官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作った物を用いた者

 

16 虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者

悪質性が高ければ偽計業務妨害罪(刑法233条)に問われる可能性があります。

 

17 質入又は古物の売買若しくは交換に関する帳簿に、法令により記載すべき氏名、住居、職業その他の事項につき虚偽の申立をして不実の記載をさせた者

 

18 自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため援助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかった者

 

19 正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者

 

20 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者

いわゆる露出行為です。露出行為が一般人の羞恥心を害する程度までいくと公然わいせつ罪(刑法174条)に問われる可能性があります。

 

21 削除(動物虐待罪は動物愛護法により処罰されます。)

22 こじきをし、又はこじきをさせた者

 

23 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

いわゆる「のぞき」です。人の家の敷地内で行われた場合は、本罪と住居侵入罪が成立し、牽連犯として、住居侵入罪が適用される可能性があります。のぞきには盗撮も含まれますので、撮影罪(撮影罪(性的姿態等撮影罪)などについて)や迷惑防止条例、児童ポルノ法違反に問われる可能性もあります。

 

24 公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者

 

25 川、みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者

 

26 街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者

 

27 公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者

 

28 他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者

いわゆるつきまとい行為です。つきまとい行為が継続して行われ、恋愛感情や怨恨感情であった場合はストーカー規制法違反となる可能性があります。

 

29 他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者

 

30 人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者

 

31 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者

 

32 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者

 

33 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者

 

34 公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は労務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者

 

 

より重い犯罪へと発展する可能性もある

つきまとい行為(軽犯罪法1条28号)がエスカレートすれば、ストーカー規制法違反となる可能性や、のぞき行為(軽犯罪法1条23号)の前提として住居敷地内に侵入した場合に住居侵入罪や裸を撮影すれば性的姿態等撮影罪、迷惑防止条例などより重い罪に問われる可能性もあります。

 

軽犯罪法違反事件における弁護活動

軽犯罪法違反のみであれば、基本的には在宅事件として進む場合が多いですが、絶対に逮捕されないとは言い切れません。

具体的には、軽犯罪法違反に対する刑罰は上述のとおり「拘留または科料」となり、これは刑事訴訟法上、「軽微事件」(法定刑が30万円以下の罰金・拘留・科料にあたる犯罪)に当たります。

軽微事件においては、現行犯の場合、住居不定、氏名不詳もしくは逃亡のおそれのいずれかがある場合でなければ逮捕できないとされています(刑事訴訟法217条)。

他方、通常逮捕の場合には、軽微事件については、定まった住居を有していないか正当な理由なく出頭に応じない場合でなければ逮捕できないとされています(刑事訴訟法199条1項但書)

しかし、刑罰の中で軽い拘留と科料であっても、起訴され有罪となると、前科がつきます

身体拘束や前科に至らないためにも早めに弁護士に相談することをお勧め致します。

被害者がいる事案であれば、被害者との示談交渉を行うことができますし、被害者がいない事案であれば、事情を伺ったうえで、被疑者側に有利な事情を書面化して警察や検察庁に提出する等の弁護活動を行うことも可能です。

 

弁護士にご相談を

以上のとおり、日常生活を送る中で、ちょっとしたことや、いたずら目的、悪ふざけで行ったことが罪に問われる可能性はゼロではありません。

当事務所では、刑事弁護に注力しています。もしご自身やご家族が軽犯罪法違反で警察から呼び出しなどがあった場合には、事務所にご相談ください。

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