債権回収実現のための6つの手続
ひとえに債権回収といえども、実現のためには、いくつかの方法があります。
最終的にどの手続を採るのかは、ケースバイケースになりますが、今回は債権回収実現のために行うことができる一般的な方法についてご紹介したいと思います。
1 直接交渉による請求
最も迅速に債権回収を行えるのが当事者同士での円満な話し合いによるものです。相手が誠実に話を聞いてくれて、且つ支払いにも応じる意思があるようなら債権回収を実現することができるでしょう。
しかし、実務上は、なかなか任意に支払ってもえるケースはほとんどないと言えます(任意に支払ってくれないからこそ、弁護士にご依頼せざるを得ないケースがほとんどです。)。
もし相手に支払う意思があるようであれば、後々支払いが遅れたり、支払いがされなくなった時に備えて、強制執行の手続にすぐに移行できるよう準備しておくためにも、公正証書などの書面に残しておく方が賢明です。
基本的には当事者同士での解決ができますが、話し合いをすると感情的になって大事な話ができないような事情がある場合は、弁護士に交渉を依頼して、債権回収の実現を図りましょう。
2 内容証明郵便で請求する
直接話し合いが難しいようであれば、ご自身が請求した記録を残すためにも内容証明郵便で支払いの催告や督促をすると良いでしょう。
内容証明郵便の費用は直接交渉よりもかかりますが、金額は弁護士費用よりも安く済みます。
ただ、当事者の名前で送るよりも、弁護士の名で送った方が、相手からすれば、「これに応じなければ裁判になるのではないか」と心理的プレッシャーを与えられることができますので、効果がある場合も多いです。
実際に、当事務所では、当事者間で直接交渉をしたものの、相手から何も応答がなかったり、のらりくらりと言い訳を繰り返すのみで誠意のない相手方に対して、弁護士に依頼し、弁護士の名で内容証明郵便を送付したところ、返答があり、素直に支払いに応じてくれたケースは多数あります。
ここまでが、当事者だけでも債権回収の実現が見込める手続になります。
これからご紹介する手続は、弁護士でないと手続が難しいところがありますので、ご相談ください。
3 支払督促
支払督促は、書類審査のみで行う比較的迅速な手続といえ、自分が有する債権について、簡易裁判所書記官に支払督促を発令してもらう制度をいいます。発令されたら、仮執行宣言の申立てをして、強制執行の手続に移行することになります。
もっとも、支払督促の発令後、2週間以内に相手(債務者)から異議申し立てがあれば、訴訟に移行することになり、強制執行の手続を行うことはできません。
⇒支払督促だと、基本的には異議申し立てされるケースが多いです(裁判所は、支払督促を送付する際に、ご丁寧に異議の出し方や書式などを説明する文書を同封するため)。そのため、実務上は支払督促の効果は弱く、あまり利用するケースはありません。
4 民事調停
民事調停とは、裁判所の調停委員会のあっせんにより、話し合いで円満な解決を図る手続です。
調停で合意された内容は、後に調停調書として、訴訟での勝訴判決と同様の効果を生じ、強制執行の手続を行うことができます。
5 訴訟(通常訴訟と少額訴訟)
(1)通常訴訟
皆さんの中で、民事訴訟と聞いて一番イメージが湧くのがこの手続かもしれません。
通常訴訟は、少額訴訟と違って、裁判官が当事者双方の言い分を聞き、証拠を調べたりして、最終的に判決で紛争の解決を図ります。
よくニュースなどで、「東京地裁は今日〇〇に対し〇〇円の損害賠償を命じました。」と流れると、ほとんどが通常訴訟での判決を言います。そのまま控訴されずに判決が確定すれば、強制執行の手続に移行するかどうかを検討することになります。
勝訴の判決が出たとしても、相手が任意の支払いに応じてくれないときは、債権回収の実現を図ることができませんので、ご注意ください。
(2)少額訴訟
60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる制度です。原則1回の審理で判決が言い渡され、勝訴判決であれば、これをもとに強制執行の手続を行うことができます。
6 強制執行
判決等で相手の支払義務が認められたのに、それでも相手が支払いに応じないときは、執行力ある債務名義の正本その他強制執行に必要な書類がそろったら、いよいよ強制執行手続を行い、債権回収の実現を図ることになります。
相手の財産が分からない場合でも、諦めることはありません。法によって財産開示手続(財産開示手続の概要と一般的な流れ)や第三者からの情報取得制度(裁判で勝訴したが、お金を支払ってもらえないとき~第三者からの情報取得手続~)が認められています。
当事務所でもこれまで金融機関からの情報取得手続から、相手の預貯金情報を明らかにして、差押手続を行うなど迅速な債権回収を行った実績があります。
まとめ
以上、債権回収実現のための諸手続を紹介しましたが、冒頭でもお伝えしたとおり、どの手続を採るかはケースバイケースですので、お悩みの方は当事務所までご相談ください。
当事務所では、ご自身や相手の状況などを踏まえて、債権回収に向けた最適なアドバイスをし、実現に向けて最大限サポートします。