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債権差押事件における配当手続

Q 他の債権者が自分の債務者に債権差押えをしたようで、自分もその手続に乗っかりたいと思っているのですが、何か方法はないでしょうか。

A 配当要求の手続を行うことになると思います。その場合、配当を受けるべき債権者であるのかいつまでに配当要求をすべきなのか、細かい規定がありますので、注意が必要です。

 

この記事では、第三債務者による供託から配当等手続、配当に関する不服申立てについてご紹介します。

 

 

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第三債務者による供託手続

実務上、債権差押命令が第三債務者に送達された後、第三債務者から陳述催告の申立てに基づき陳述書が届き、その陳述書に債権者に支払う意思がある場合には、取立ての手続に進むのがほとんどです。

そして、取立権が発生すると、債権者と第三債務者が、取立の方法について協議したうえで、振り込みによる方法で債権回収を図ります。

しかし、もともと債権差押事件は、債権者と債務者との間で起きた事件であって、金融機関等の第三債務者は、いわばその事件に巻き込まれた形となります。

第三債務者の中には、債権差押え手続に不慣れなこともあり、よくわからないという場合もあり得ます。

そこで、第三債務者は、自分が支払うべき債務を供託することによって、義務を免れることができます。この供託には、権利供託義務供託があります。

 

権利供託

権利供託とは、第三債務者が債権者に支払うのではなく、差し押さえられた金銭債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することをいいます。

第三債務者としては、差押債権者に振り込みなどによる方法で直接弁済することができますが、一方で、後から債務者から何か言われないだろうかと心配になることもあり、そのような不安に対する手続措置として認められています(民事執行法156条1項)。

 

義務供託

例えば、AがCに対し100万円の債権を有しており、またBもCに対し200万円の債権、さらに、CはDに対し、150万円の債権を有しているとします。債権者であるAとBはそれぞれCのDに対する債権150万円について債権差押命令を申し立てて、債権差押命令正本が第三債務者であるDに送達されました。

この場合、DのCに対する債務は150万円ですので、AとBの合計差押金額300万円を下回っています。Dとしては、AとBそれぞれに全額支払うことができず、差押えの競合が発生しています。そのため、Dは150万円全額を供託しなければなりません。これを義務供託といいます(民事執行法156条2項)。

そして、義務供託をした第三債務者(D)は、供託したことを裁判所に届け出なければなりません(これを事情届といいます。民事執行法156条3項)。

 

配当等手続から債権差押事件の終了まで

配当手続

配当とは、第三債務者によって供託された供託金、売却命令により売却されて得られた代金などをどのように分配するか決める手続です。配当手続は、配当を受けるべき債権者が二人以上いて、各債権者の債権及び執行費用の全部を配当の原資で弁済できないときに行われます。

配当手続は、まず裁判所が配当期日を指定して、配当を受け得る債権者及び債務者に配当期日を通知します。

通知を受けた各債権者は、元本と配当期日までの利息・損害金等を計算した債権計算書を裁判所に提出します。

債権計算書を受けた裁判所は、それに基づいて配当表を作成し、配当期日に配当表に対する異議申立ての機会を各債権者と債務者に与えたうえで、配当を行います。

 

配当を受けるべき債権者は誰か

差押債権者
仮差押債権者
配当要求をした債権者

→具体的には、執行力のある債務名義正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者です(民事執行法154条1項)。

 

債務名義を有する債権者が二重に差押えをしても、他の債権者が先行した差押手続において配当要求をしても変わりはありませんが、もし先行の差押手続が取り下げられたりして事件終了となった場合は、自ら差押えをしていない限り、配当要求はできなくなります。その場合、今度は自ら債権差押命令事件を申し立てる必要があります。

 

いつまでに配当要求をすべきか(民事執行法166条1項)

第三債務者が権利供託又は義務供託をした時まで
取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時まで
売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時まで
動産引渡請求権の場合は、執行官がその動産の引渡しを受けた時まで

 

弁済金交付手続

弁済金交付手続は、配当を受けるべき債権者が一人、又は債権者が二人以上いて、各債権者の債権及び執行費用の全部を配当の原資で弁済できるときに行われる手続です。

この場合の手続は、配当手続と同じです。

 

取下げ、又は取立完了による事件終了

配当等の結果、債権額全額を取り立てた場合、債権額には満たなかったが一部取立てが済んだ場合、または差押債権がなかったなど取立てをせずに申立てを取下げる場合は、裁判所に取立完了届取下書を提出して事件は終了となります。

 

ちなみに、今後債務者の新たな財産が判明次第、再度強制執行することができますので、債務名義正本や送達証明書は還付しておくとよいでしょう。

 

配当に関する不服申立て

配当異議の申出(民事執行法78条4項)

配当期日において、配当を受け得る債権または債務者が、裁判所作成の配当表に関して、内容や誤りについて不服を申し立てる手続です。

申出方法は、配当期日に裁判所に出頭し、口頭で異議を述べます。異議がなされると、申出があった部分については配当が留保されますが、異議がない場合は、裁判所によって配当が実施されます。

 

配当異議の訴え(民事執行法90条1項)

配当期日から1週間以内に、訴えを提起して、かつ訴えを起こしたことの証明所等を裁判所に提出しなければ、配当異議の申出を取り下げたものとみなされ、留保となっていた配当部分も配当表のとおりに実施されます。

 

最後に

債権差押えから配当までは迅速な回収がより重要となりますので、配当要求を行う債権者にとっては、タイミングを見過ごさないように注意をしなければなりません。

債権差押手続は専門的な知識と技術が必要ですので、債権回収の方法についてお困りの方は実績を残す当事務所までお気軽にお問い合わせください。

状況をヒヤリングして、ケースに応じた債権回収の方法について適切なアドバイスを致します。

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